壇蜜より : 「お疲れ様です」の後ろ側に備えておきたいこと

言葉を大事にする壇蜜さんの新連載スタート。
『今更言葉で、イマをサラッと』というテーマについて、ご本人いわく 「今更考察するのも恥ずかしい…でも、考察の後に見える何かを共有しませんか。あ、あくまで私見です」とのこと。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください! 

その1 『お疲れ様です』

新連載ということで、扱う内容を漫画から変えた。漫画の台詞でも今私たちが交わす会話のなかでも、今となっては見慣れすぎて見過ごしがちだが、よく考えると奥深い言葉が多い。そんな言葉たちを「今更言葉」と名付け、考察していく。辞書どおりにはいかない解釈もあるかもしれないが、生活密着型視点から浮かんできたものとしてご理解いただきたい。

今回は「お疲れ様です」。ご苦労様、と比べたらまだ同僚や目上の者に使用しても違和感が少ないとされてきた言葉だ。「お疲れ様です」「お疲れ様でした」と交わしながら仕事が一段落した喜びや安堵感を労い合う・・・ホッとする言葉・・・だったはずだ。しかし、中には「お疲れ様反対派」もいる。「お疲れ様です」「疲れてないよ」、「お疲れ様でした」「目上の人にはおかしいんじゃない? お疲れ様っていうのはねぇ・・・」と、目下から目上への「お疲れ様です」を拒絶し、それはなっていないともの申す。言われた相手は「お疲れ様です」以外の応用対処法がわからないため、アワワ・・・と焦り、上手い言い訳もできずに礼儀知らずのレッテルを・・・貼られたことがあるのは、他でもない私だ。

人を見て態度を変えるのは良くない。必要以上に目上の者にゴロニャンする必要もない。しかし、人を見て言い回しを状況判断で変更する、というのは大いにアリだと思う。「お疲れ様」「ご苦労様」と言われたら…、教えを受けた場合は「ありがとうございました」「お世話になりました」、帰り際なら「どうかお気をつけて」「ごめんくださいませ」「お気をつけて、また(次会える日がわかるならそれを言う)に・・・」あたりの言葉たちを用意して、磐石な態勢で「お疲れ様反対派」に挑んでみてはいかがだろうか。反対派ではなくても、「どうかお気をつけて」と一礼されて嬉しかったという年長者の報告もある。これでは「お疲れ様疲れ」も生じかねないが、丸腰で無礼者と言われた私のようにはなってほしくない。

ちなみに少し古い言葉だが、「お疲れの出ませんように」「お疲れが出ませんように」という言い方もある。女性が目上の方に使う労いの丁寧形だという。お疲れの・・・の方は仏事で供養をした際にも用いられるという。お疲れが出ませんように、ごめんくださいませ・・・からの一礼。ここまで丁寧でも「へりくだりすぎ、あざとい!!」と言われるだろうか。いや、丸腰よりマシなのだ。

文/壇蜜




壇蜜
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壇蜜
タレント。さまざまな職業経験を経てグラビアデビューし、バラエティやトーク番組、ドラマ、映画でも活躍。独特の感性と表現力にも注目が集まり、執筆活動も多い。初の連作短編小説『はんぶんのユウジと』(文藝春秋)が絶賛発売中。最新刊は『結婚してみることにした。壇蜜ダイアリー2』(文藝春秋)。
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