たくさんの女性が活躍するファッション業界。トップを走る3人は、日本のジェンダー格差の状況をどう捉えている? その一端を知ることができる『Amazon EC サミット2022』の一場面をレポート。
“言いやすい”からこそ先陣を切るべき
「女性が活躍できる業界だからこそ、先陣を切って『こういうことが苦痛だ』ということを言っていけるはず」
そう発言したのは、世界で活躍するスタイリストの仙波レナさん。2022年10月12日に開催されたオンラインイベント『Amazon EC サミット2022』に、ファッションジャーナリストで元VOGUE JAPAN編集長の渡辺三津子さん、モデルの冨永愛さんとともに登壇した。
アマゾンジャパン セラーサービス事業本部 ファッション事業部長の逢坂嘉世さんより、Amazonが大切にしている多様性、公平性、包括性(DEI=Diversity、Equity、Inclusion)について問われた場面。ファッション業界は日本のほかの業界と比べて女性リーダーが多く活躍している点を踏まえ、仙波さんは次のように語った。
「今は子育てしながら働く人も増えて、以前より環境がよくなってはいるけれど、さすがに(ファッション撮影の)現場に子供を連れてくる人はいない。でも、海外の現場では、お迎えに行ってそのまま子供を連れてくる人もいたりして。誰も何も言わないし、むしろ場が和む」
日本はまだまだ、子育てしながら働きやすい状況とは言えない――世界を舞台に仕事をしているからこその実感だろう。そこで仙波さんは冒頭の通り、ファッション業界が先陣を切れるのではないか、と提言したのだ。
女性が活躍しやすいという業界の特性に甘んじることなく、むしろ女性が発言力や影響力を持っていることを生かして、ファッション業界はもっとインクルーシブな働き方を追求していくべき。仙波さんのストイックな発想に、目から鱗が落ちた視聴者も多かったはず。
ファッション業界での経験を、異業種の女性たちと共有したい
ほかにも、渡辺三津子さんは女性リーダーとして重視していることを問われ、「女性の問題はいろいろなレベルであるので、自分の場合だけで語れるものではない」と前置きしたうえで、「ほかのジャンルの女性たちと意識や経験を共有したい」と話した。
「ファッション業界では、ばんばん働いてリーダーシップを発揮している女性がたくさんいます。日本では女性リーダーが少なく、男女の賃金格差も大きいことを考えると、やはり私たちは恵まれた業界で仕事をしていると感じる。だからこそ、リーダーシップを恐れないで、ということを日本の女性たちにもっと伝えていきたいです」
モデルの冨永愛さんは、デビュー25周年。トップを走り続けることの苦労を問われると――
「続けるということは本当に大変ですね。女性にかぎらず、年齢によって体調、体力の変化ももちろんあるなか、どのように健康管理をするか。トレーニング、食事…常に試行錯誤しないといけない。あきらめず、継続してやるというのが一番大事だと思います」
ファッション×ECの業界関係者だけでなく、すべての働く女性にとって学びのあるトークが繰り広げられた『Amazon EC サミット2022』。ファッションが装いから気持ちを高めるだけでなく、もっと現実的な角度からも、女性をエンパワーできる可能性を感じさせてくれた。今後の業界の動きにぜひ注目を。