13歳の時にビデオカメラを手に入れ、幼馴染のエマ、マチアス、アルノーとの日常を撮影し始めたマックス。サッカーW杯優勝パレード、ミレニアム、バルセロナへの貧乏旅行、そして一緒にいるのが当たり前だったエマは、別の男性と結婚してパリを離れ・・・。90年代後半から現在まで「25年回し続けたホームビデオを編集した」という形で、子供~学生時代のバカ騒ぎに笑いながら、その合間合間に見え隠れする恋と青春を捉えたこの作品の見どころを、映画ライター渥美志保さんにたっぷりと語っていただきました!(編集部)
おバカだけど最高に楽しかった学生時代の恋と友情
主人公のマックスは13歳の時に親からビデオカメラを買ってもらい、幼馴染の4人——エマ、マチアス、アルノーと過ごす日常を、遊び半分で撮影し始めます。マチアスとアルノーはほんとに小さいころから一緒、家族同然の男友達で、エマは中学校で一緒になった女の子。当初はエマともうひとり女の子がいたのですが、気づけばグループは男3女1の仲良しグループに。
当時からマックスとエマはお互いを「いいな」と思っていますが、子犬がじゃれ合うみたいに成長してきたグループのなかでなかなか恋愛に発展することができず・・・という彼らが30代になるまでの20年間を、映画は追ってゆきます。
この映画がすごく面白いのは、映像のすべては「マックスが撮影したホームビデオ」で、それを2時間に編集してつないだものであること。ホームビデオってどんな時に回すかな~と考えると、何かしらのイベントのとき、何もなくても「面白いことやろう」「ふざけた映像撮ろうぜ」みたいなとき、そして全く逆に、誰にも知られない一人きりの時間や、密かに誰かを見つめているときだったりしますよね。
指を鳴らすと裸になるとか、寝てる友達の顔に落書きして買い物に行かせるとか、今でいえばTiktokの動画みたいな、「若さ」って「バカさ」だな~って思う動画の合間合間で、映画は4人のキャラクターや関係性を描いてゆきます。そのほのめかし、伏線がすごく上手くできています。
マックスとエマに関して言えば、エマのカメラ目線(つまりマックスを見つめてる)とか、カメラが(つまりマックスが)つい追いかける場面とかがあり、2人が両思いなのは明らかなのに、これがなかなか恋愛に進展できない。若さとか青春の甘酸っぱいじれったさが充満しています。
監督はそれ以外の場面でも「ホームビデオであること」にすごくこだわったようで、物語を説明するには都合がいいけれど「こんな時にホームビデオは回さない」という映像は一切なし。そういうわけで映画は、時代の出来事や、学生時代~20代で誰もが経験したことのある場面が目白押しになっています。
たとえば1998年のサッカーワールド杯でフランスが優勝したときの、大興奮の優勝パレードとか、クラブでどんちゃん騒ぎして過ごしたミレニアムの大晦日とか、4人でいったスペイン貧乏旅行のアホエピソードとか・・・ミレニアムとか日韓ワールドカップのときの東京もこうだったな~と、自分の思い出でもないのに懐かしい気分になることうけあい。
ジャミロクワイとかオアシスとか、時代を代表する懐かしのサウンドも盛りだくさんですが、それにより観客の気持ちが登場人物にすごくシンクロし、自分のアホだったけどめちゃくちゃ楽しかった学生時代がよみがえるんじゃないかと思います。しばらく連絡をとっていない学生時代の友達と、ぜひご一緒にどうぞ。
『PLAY 25年分のラストシーン』
監督/アントニー・マルシアーノ
出演/マックス・ブーブリル、アリス・イザーズ、マリック・ジディほか
http://synca.jp/play/
(c)2018 CHAPTER 2 - MOONSHAKER II - MARS FILMS- FRANCE 2 CINÉMA- CHEZ WAM - LES PRODUCTIONS DU CHAMP POIRIER/ PHOTOS THIBALUT GRABHERR
※新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、kino cinéma、⽴川髙島屋S.C.館ほか全国順次公開中