遊び半分で参加した映画撮影で、キスシーンを演じた幼馴染みのマティアスとマキシム。以来、2人のなかには新たな衝動が湧き上がり・・・。
『君の名前で僕を呼んで』にインスパイアされたグザヴィエ・ドラン監督・主演の最新作は、長年の友人である2人が互いへの気持ちに気づき、セクシャリティが揺れる様を瑞々しく描いた作品。
今回、映画ライター渥美志保さんに見どころをたっぷりと語っていただきました!(編集部)
マキシムを翻弄する、こじらせマティアス
グザヴィエ・ドランと言えば、子役として活躍した後に19歳で監督デビュー、その才能と美しさで映画界を席巻、オープンにしているゲイというセクシャリティや、ルイ・ヴィトンのアンバサダーとしても活躍するなど、話題の多いセンセーショナルな存在です。
『マティアス&マキシム』は主演監督を務めるその最新作で、あの『君の名前で僕を呼んで』に触発されて作ったという作品です。
主人公は、お金持ちの息子でエリート、婚約者との結婚も控えた順風満帆のマティアスと、その幼馴染の親友で、2週間後に新天地を求めてオーストラリアに旅立つマキシム。
ある休日、高校時代以来のいつもの仲間が友人の別荘で集まるのですが、その日はたまたま友人の妹が来ていて、彼女が撮っている短編映画に出演するハメに。撮影直前にわかったのは、それがキスシーンだったということ。物語はそこからはじまる2人の混乱を描いてゆきます。
ドランは出てくるともはやゲイにしか見えず、この作品でも明言はされませんが、マキシムは自身がゲイ(もしくはバイセクシャル)であることを認識しているし、「自分はマティアスが好きだったのかも」という事実を自然に受け入れている感じ。
一方、王道の人生を歩んできたマティアスは、自分のことを疑いなく異性愛者だと思っていたわけで、大混乱に陥ります。それまで同じ部屋に宿泊してもなんてことはなかったのに、妙にドキドキムラムラして眠れないとか、似た人を見ただけでマキシムに見えてしまうとか。自分の中に湧き上がる欲望や衝動から懸命に目をそらそうとするのだけど、それができなくてイライラしたり、わざとマキシムを避けたり意地悪したり、そのくせこっそり彼を見つめていたり。その子供っぽさが、なんだか笑っちゃうような、気の毒のような、可愛いような。
オーストラリアに行ったらしばらく会えないマキシムは、その前にきちんと話したいのですが、混乱するマティアスに翻弄されまくり。この2人の関係にあらわれては消える悲しさ、切なさ、喜びの瞬間瞬間が、異性愛同性愛関係ない「恋愛」を浮き彫りにしてゆきます。地獄で天国、って感じでしょうか。
登場する仲間たちは、ドランが若い頃から一緒にいる実際の仲間たちで、そのワチャワチャしたガキっぷり、アホな会話も楽しい。そういう人たちと一緒にいるからか、作品自体もいつものグザヴィエ・ドランよりスカした感じがなく、すごく素直な恋愛モノという感じ。
『キングスマン ザ・ファースト・エージェント』の主演が楽しみなハリス・ディキンソンが、どこか不安定なんだけど妙に色っぽいキャラクターで登場するのも見どころです。
『マキシム&マティアス』
監督・脚本/グザヴィエ・ドラン
出演/ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス、グザヴィエ・ドラン
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※新宿ピカデリーほか全国ロードショー