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TIMELESSPERSON

2026.08.09

求められているのは、何も知らないことを打ち明ける勇気【紺野ぶるま】

本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】

どっちが北かわからないけど、賢いと思われたい女

最近ありがたいことにお昼の情報番組に立て続けに呼んでいただいた。

昔からわたしはお昼のワイドショーや料理番組が好きである。朝ごはんの後、間髪入れず冷蔵庫のものをビュッフェみたいに好き勝手つまみながら延々眺めている時間がたまらない。

しかしながら出演となったら体がこわばる。下ネタしかしてない時間が長すぎる。お昼という時間帯に対応できるだろうか…。というのは表向きで、一番の不安は変なコメントをして頭が良くないことがバレたらどうしよう、である。

絶対にバレたくない、頭がいいと思われたい。世相を斜めから切る一面とかあったんだ〜と是非思われたい。ならば台本を読み込んでコメントを考えればいいのではないかと企んだが、ニュースに合わせて取り上げるものが変わるため、台本が決まるのが本番の直前である。

となればこれはきちんと知識がないと対応できない。さあ、いざ出演までの二週間で勉強だ!と意気込んだ。その時期、最初に出てきたのがホルムズ海峡についてである。

恥ずかしながら私は「ホルムズはもちろん、海峡って何?」であった。

みなさんが思っているより手前にいるのだ。いつもならここで終わりだが、終わりにしているのもそれはそれでストレスである。わかってるふりをするのはもうやめようと立ち上がった。

そこで役立ったのがチャットGPTである。「てかさ、海峡ってなに?」と誰にも知られずに聞くことができる(結果こうして自供してるのだが)。すると「川ではなく海」というところから教えてくれる。じゃあ「ホルムズ海峡ってなに?」と入力すれば「北側にはイランがあって、南側にはオマーンがある」と場所から教えてくれる。そして「北とか南とかってどうやってわかるの? みんな、なにで見分けてるの?」という昔から謎だったけどほったらかしにしていたことをついに明白にして、一晩かけて「排他的経済水域」を説明できるところまで辿り着くのであった。

そして迎えた当日朝である。もちろんホルムズ海峡については台本で触れられているのだが、スタッフさんからの指示はこうであった。「専門家の方もいるのでわからないことがあったらなんでも質問してください」。わたしが「結構これについては喋れますので任せてください」と主張すると、決まって「ああ…」と流される。そしてすれ違う大人に決まって「主婦目線でお願いします」といわれるのだった。
「主婦目線のホルムズ海峡ってなんだ?」と疑問に思いながらも、肩をぶん回しながら本番が始まると、押していたこともあり、この部分についてはコメントをする尺もなく過ぎてしまった。生放送は緊張している間に終わっていく。

そして数回出演したなりに、自分がなぜ呼んでもらえたのか理解できている自負がある。——私に潔く「海峡ってなんですか?」と言ってほしいのだ。それはさすがに手前すぎるだろうが、とにかく「わからない」と言っていいのだ。程度の差があるにせよ、みんなわからないから観てるのだから。「私の生活にはどれほどの影響がありますか」と家で三個パックのヨーグルトを食べながら見てるときのように、主婦の自分として素直に聞けばよかったのだ。

知らない芸人の付け焼き刃の知識をひけらかすところを誰が見たいだろうか、その方がよっぽど頭が悪いと思われそうだ、危なかった。何も知らないことを恥ながらも打ち明ける勇気がありそうで呼ばれたのだろう、そしてそれを司ることが番組が私に求めている賢さなのだろうと思った。今後もし呼んでもらえるようなことがあれば、頭がいいと思われたい気持ちは家に置いておこうと思う。もちろん今のままではひどすぎるので引き続きチャッピーとの勉強会は続けるが、お茶の間にいるときに何を疑問に思ったかを忘れないほうが賢明なのかもしれない。

最後に

「わからない」と言えない人とかけまして

主婦と解きます。

その心は、どちらも

打ち明ける(家〈うち〉空ける)ときもあっていいでしょう。

紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』などがある。
Instagram @buruma_konno
@burumakonno0930

文庫『お腹が減りませんように、満月まで届きますように』(幻冬舎文庫)が好評発売中。

TEXT=紺野ぶるま

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