ずっと憧れてきた写真集というかたちに、自分の感覚と時間を丁寧に閉じ込めた一冊。フォトブックやアートブックへの愛情を起点に、作り込みすぎず、自然体であることを大切にした今回の作品では、私物や自身が撮影した写真も織り交ぜながら、ありのままの空気を記録した。堀夏喜さん(FANTASTICS)の1st写真集『LIVING FOR』についてインタビュー。
憧れを現実にするまでの挑戦

――初の写真集となります。発売を直前に控えた今、どんな思いですか?
写真集はいつか作ってみたい、という憧れがありました。もし作れるなら、という前提で、実はかなり前から具体的なイメージまで含めて妄想していて(笑)。やると決まった瞬間に迷わず動けるように、先に準備しておきたいタイプなんです。今回お話をいただいたときに、迷わず写真集が思い浮かんだのは、もう作りたいものが自分のなかで完成していたからだと思います。
――具体的にはどんなことを考えていましたか?
フォトブックやアートブック、写真家の方が撮るスナップ集のようなものが、もともとすごく好きなんです。実際にそういう本をよく買い集めていて、家で時間があるときにパラパラ眺めるのも、昔から好きな時間でした。
いろんな本を見ていくなかで、アーティストが出す写真集として、そういうテイストのものって、意外と見たことがないなと思ったんです。自分がやるとしたら、そういう方向性で作ってみたいと思いました。
――構想段階から大事にしていたことは?
まず、あまり作り込まれた写真集にはしたくないと思っていました。スタジオ撮影のような完成された感じではなくて、メイクも含めて、できるだけ自然体な空気を残したかったんです。
それから、自分の血がきちんと通っているものにしたかったので、私物を取り入れたりすることにもこだわりました。さらに言うと、自分が撮った写真も入れたいと思っていて、それも今回実際に叶えてくださいました。
――作り込まれたものではない、という考え方の延長線上にノーメイクでの撮影があります。
自分がやりたい方向性を話していくうちに、「この世界観において、メイクはそこまで重要じゃないかもしれない」という話になって。だったら、できるだけナチュラルでいいし、いっそなくてもいいんじゃないか、という流れで決まりました。
僕は結構、考え方が振り切れているタイプで、0か100か、みたいな感覚なんです。これは必要ないと思ったら割り切れる性格なので、一度決めてしまえば、あとから不安になることはあまりなかったです。正直、決断するまでに多少の葛藤はありましたが、その性格が今回はいい方向に働いたと思っています。
――また、撮影中はスタッフとアパルトマンでの共同生活だったとか。
もともと僕が「撮りたい」と言っていた写真のリファレンスが、誰かと一緒に暮らしているなかでの何気ない瞬間だったんです。「一緒に生活すれば撮れるじゃん!」という発想になって(笑)。仲間とワイワイしている空気感もそうですし、一緒にいれば、リアルな寝起きの瞬間も撮れるかもしれない。そう考えると、いろんな部分で辻褄が合いました。
実際に泊まったアパルトマンは環境もとても良くて、ひとり一部屋あり、シャワーやトイレも複数あって、不自由さがまったくなかったんです。もしぎゅうぎゅうな空間だったら話は違ったと思いますけど(笑)、あの環境だったからこそ、すごく楽しめたのかなと思います。
――そのほかに、堀さんからリクエストしたことはありましたか?
かなりありました。「こういう写真が撮りたい」というリファレンスもたくさん用意していましたし、「ここには絶対行きたい」という場所もいくつか挙げていました。本屋さんとか、そういうポイントも含めて。
正直、言うだけなら簡単なんですけど、実現するのはかなり大変だったと思います。なので最初から、「このなかのいくつかができなくてもしょうがない」という前提で、とにかく思いつく限り、やりたいことを一度全部投げてみよう、という気持ちで送りました。結果的に、それをかなり形にしてもらえて、本当にありがたいなと思っています。

――事前に細かく決めきらず、比較的自由度の高い撮影だったと伺いました。
最低限の大枠はきちんと組まれていました。この時間帯はここにいる、何を着る、といった全体の流れは決まっていて、そのうえで、あえて余白を多く残していた、という感じです。
その余白があったからこそ、その場の思いつきで動けたり、アイデアが自然に湧いたりした部分も大きかったですね。スタッフのみなさんもすごくクリエイティブで、臨機応変に楽しみながら対応してくれる人たちだったので、のびのびと撮影ができました。
結果的に、あの組み方だったからこそ出せた表情や瞬間がたくさんあったと思いますし、そう判断してもらえたこと自体にも感謝しています。
――制作チームはどんな印象でしたか?
僕からすると、本当に“エース集団”という感じでした。一人ひとりがすごく頼もしくて、「この人たちと一緒なら大丈夫だな」と思えたチームでした。
それぞれがクリエイティブな才能を持っていて、カメラマンさんとスタイリストさん、ヘアの方は普段から一緒に仕事をしているそうで、呼吸がぴったりで。普段はファッション誌や広告などを多く手がけている方たちですが、だからこそ、自分がずっと憧れていた表現を、ちゃんと形にしてくれる人たちだったなと思います。
――堀さんのやりたいことを引き出しながら、叶えてくれる存在だったと。
まさにそうで、「本物を知っている人たち」だったと思います。一緒に仕事ができたこと自体が、すごく刺激的でしたし、自分のなかに残る経験になりました。

――ファッション好きで知られる堀さんですが、一冊を通して特に好きなルックを教えてください。
撮影している当時は、そこまで強く意識していなかったんですけど、あらためて今見返してみると、自転車に乗っているときのルック(ストライプシャツ)がいいなと思います。映画『マーティー・シュプリーム』のティモシー(シャラメ)っぽくないですか(笑)? 時間が少し経ったからこそ、今の自分の感覚にしっくりくる一枚になっている気がします。
――現地でスタイリングを変えたり、予定と違うことをしたりすることもあったんですか?
大きく何かを変える、ということはあまりなかったですね。基本的な流れは決めていましたが、部屋で撮ったときに、その場で着ていたパーカーをそのまま使ったり、現地で買ったものを取り入れたりすることはありました。
ただ、スーパーのシーンは完全に私服でしたし、(本編)一番最後の写真も、撮影後のご飯会なので、私服のカット。ただの日常の延長を撮ってくださって、そういう偶然がそのまま残っているのは、すごくいいなと思っています。
――電子版には旅のお供になった私物やルックの解説もあります。
もともと写真集のなかに入れる予定で、今回の撮影に持って行った私物を撮影していました。でも、制作過程でパリの写真とインタビューのみの構成にしようとデザイナーさんと編集の方が思ったみたいで。このまま出さないのはもったいないと思って、電子版の特典にしてもらいました。特典のページを見せてもらったときに思ったのが「この特典、豪華じゃない(笑)?」でした。写真だけではなく、テキストもしっかり入っていて読み応えもあります。僕の私服コーデの紹介もあるので、気になる方はぜひ見て欲しいです。

――憧れのパリを訪れてみて、あらためてどんな感想を持ちましたか?
現地にいる間は、すごく満足していました。いろいろな場所を見ることができましたし、おいしいものもたくさん食べて。コーディネーターの方に、いいところをぎゅっと凝縮して案内してもらって、短い滞在時間でも、かなり堪能できたと感じています。
でも、今振り返ってみると、たぶん僕は“パリのほんのひとつまみ”を味わっただけで、満足していたんだな、という気もしていて。冷静に考えると、まだ知らないことの方が圧倒的に多い場所だと思うので、また必ず行かなきゃいけないな、と思っています。
それでも、ずっと憧れていた場所に実際に行けたという意味では、ひとつ夢が叶った瞬間でした。こんなふうに「自分は夢を叶えた」とはっきり言えることって、なかなかないと思うんですけど、今回は胸を張ってそう言えます。
――そんなパリとは堀さんにとってどんな場所ですか?
「アナザースカイ」にしたい場所です(笑)。行く前からずっと憧れていた街で、実際に訪れて、ますます憧れが強くなりました。
でも不思議なことに、現地にいる間は、意外と自分が自然体でいられたんです。もっと気取って街を歩くのかなと思っていたのに、むしろ日本にいるときよりも肩の力が抜けていて、「普通の自分」でいられた感覚があって。
パリに行って、影響も受けたし刺激も得た。でも同時に、自分を無理に作らなくていい場所でもありました。そういう矛盾を含めて、すごく不思議で、魅力のある街だなと思っています。
――では最後に、この写真集におけるいちばんの挑戦と、制作の過程で特に刺激になったことを教えてください。
今回は一つひとつが挑戦の連続だったなと思います。実は、企画段階では、まさかパリに行けるとは思っていなくて。それでも、開口一番に「パリに行きたいです」と言うことを、自分のなかではひとつの挑戦として決めていたんです。その一言が、今回のすべての始まりだったと思います。
その一歩を踏み出せたことで、いい意味でバカになれたというか、「これもやりたい」「あれもやりたい」と、遠慮なく言えるようになった。だからこそ、後悔のない一冊を作ることができたと思っています。
制作の過程でいちばん刺激になったのは、やっぱり人との出会いです。普段のアーティスト活動だけでは、なかなか出会えない世界で生きている方たちと、共に過ごせたことは、本当に大きな経験です。プロフェッショナルの現場を目の当たりにして、圧倒されることもありましたが、その分、完成したときの楽しさや達成感も大きかった。あのチームと一緒だったからこそ、この一冊が完成したと思います。
堀夏喜 1st写真集『LIVING FOR』

撮影ロケ地から、⾐装スタイリング、デザインまで……本⼈のこだわりを遺憾なく発揮。堀 夏喜の新たな魅⼒に出合える渾⾝の⼀冊が誕⽣。購入や特典など、詳細はこちらから。
堀夏喜(ほりなつき)
1997年8⽉6⽇⽣まれ、愛知県出⾝。FANTASTICSのパフォーマーであり、近年では役者としても活躍。グループが展開するアパレルブランド「buddix(バディー)」のディレクターも務めている。
Instagram @natsukihori_official

