アーティストそして俳優として、活躍のフィールドを広げ続けている川島如恵留(Travis Japan)の連載『のえるの心にルビをふる』。11月22日に30歳を迎える彼が、今だからわかったこと、気付いたこと、そして様々な出来事についての自らの考察をつづります。【vol.5≪欲求のポイントカード≫】
欲求のポイントカード
お腹が空いたらご飯をいただく。それが食欲を満たす方法。
眠たくなったらベッドで横になる。それが睡眠欲を満たす方法。
お風呂に入りたくなったら給湯のボタンをポチッと押す。えーと、ポチり欲…?を満たす方法…?
欲しいものがあったらカートにいれておくのが…物欲を…嗚呼…これもポチり欲…か…
えー、なんとなくですが、人生だいたいポチり欲なんだと思います。ポチり欲を満たせれば良い感じになるんじゃないかと思います。(知らんけど)
色んな欲求が我々人間にはありますが、その殆どがポチる事で解決されるとは思いませんか? 私は思います。
勿論全部というわけではないですが、大体のことは、ね?
「世の中大体のことはお金が解決してくれる」というあれと近いようなそんな感じです。
この事についてもいつか私見を共有したいなぁ、なんて思っておりますがそれはまたいつか。
昨今は食事も宅配サービスを活用してポチる事で楽をする事が出来ますし、睡眠の質を高める為にと目を温めてくれるアイマスクなんかをネットでポチればより満足度の高い睡眠をとる事も出来ます。
部屋が暗いと思ったら電気のスイッチをポチれば点灯するし、娯楽が必要となればテレビやゲームのリモコンをポチってしまえば生活に彩りが加わる。今は大体どんなものでも指先ひとつで欲しいものを手に入れる事が、欲求を満たす事が出来るようになっています。
貴方が住んでいるお家にもポチッと出来る場所は沢山ある筈です。一体幾つあるでしょうか。電気や洗濯機、テレビやエアコンのリモコンの数を数えた事がございますでしょうか。
日頃特に気にも留めていなかったポチれる場所が意外と身の回りには沢山あるはずです。是非探してみてください。「欲しい」を満たしてくれる存在がこんなにもあるという事に驚く事になると思います。
ここからは、私達が普段何気なく押しているボタンやスイッチに意味を持たせたらどうなるのだろうと考えるのが案外楽しかったんだよ、という私のお茶目な部分を共有させてください。
私は家に帰ると先ず電気をつけるためにスイッチをポチッとするところから始まります。玄関先だけは人感センサーを導入しているので自動的に明るくなるのですが、洗面所以降は手動になるため洗面所の電気のスイッチを人差し指と中指と薬指を器用に使いこなして3つ同時に押します。これには専門的な訓練が必要なレベルで特殊技能だと勝手に思っています。
という事で早速ここで私は3つもスタンプをゲットするのです。やったね。
そして洗面所でのルーティンが終わればスマートスピーカーに「電気を点けて」と話しかける事でスマートにハンズフリーで寝室が明るくなります。残念ながらスタンプはゲットならず…
その後寝室の電気を声で消してコンタクトレンズから眼鏡に切り替える為に再び洗面所へ行き、同じく器用に電気を消してリビングへ向かうとまたここでも明るくする為に2つスイッチをポチります。この時点で既に8個もスタンプが貯まるのです。
何を隠そう、ここでいうスタンプとは「ありがとうポイントカード」にのみ有効の限定のスタンプのことです。
え、そんなものがどこにあるかって? 自分の心の中にあるんですよ。当日限り有効の珍しいポイントカードが。
大した特典も変哲もないただの自己満足のポイントカードだけれども、今日も沢山能動的に動いた自分と自分の為に働いてくれたスイッチやボタンへの感謝と労いの気持ちを忘れない為に作り出した遊び心のあるカードです。
沢山貯まったら夜にアイスのご褒美を自分にあげちゃってもいいかなと思わせてくれるくらいの可愛げあるカードという事にしています。
何か見返りがあるから貯めているわけではありません。たまたま結果的に貯まったところにラッキーが転がっていたと思う事が肝なのです。
当たり前にしている事に意味を与える事が出来ればその瞬間に満足度を持たせる事が出来るし、その先にぼた餅が降ってきたらただただ嬉しい。平静を装いながらも小さくガッツポーズを決め込めるような自分でいる事が日々に潤いを与えてくれるということに気付いたから、ここ最近はこのポイントカードを貯めていく事に心を弾ませるようになっているのです。
家に帰ってきてくつろぎ始めるまでに、10個くらいスタンプが貯まるこのポイントカードを想像するだけで「今日もよく集めたなぁ」と、ニコニコ出来るのが嬉しいのはきっと私だけかもしれません。
高校生の頃、それは私にとってお買い物がとても楽しかった頃。ポイントカードにスタンプが押されていっていっぱいになるのを見るのがとても好きでした。
今ではほとんどのポイントカードが電子版になってきていて、スタンプを押してもらうかわりに数字が加算されるシステムになりつつありますが、今から15年前くらいは紙のカードに店員さんが値段や支払い金額に応じてスタンプをいくつか押してくれる時代がありました。覚えている方もきっといらっしゃることでしょう。今でもたまに見かける事がありますね。
判を押すために作られた格子が少しずつ埋め尽くされていくのに達成感を感じずにはいられなかった私は、カフェやカラオケなどのその店独自のポイントカードを展開している店舗に足繁く通ったのを覚えています。
1ptが2ptになるのとスタンプの量が倍になるのとでは直感的にスタンプの方が数字の何倍もの価値があるかのように思えていたというのもありますが、スタンプが増えていってカードが華やかになるのがただただ好きだったのです。
収集癖のある私は算用数字が増えていくよりもスタンプを集める事が刺さったのでしょう。
それを今はイマジナリーポイントカードでやっているというわけです。
電気のスイッチやボタンでもこれだけひとりで楽しめるのです。自分の欲求を達成するごとにスタンプを押してあげたらもっともっと貯まると思います。
「欲求」と聞くと人間の理性では抑えられない動物的な卑しいものだと思ってしまっていた私はずっとその言葉が好きになれませんでした。だからこそこの欲求のポイントカードを作る事にしたのです。
食欲が無くても体調管理の為に食べなければならないと思い続けていたが、それ以前にその欲求を楽しんだ方が人間らしい。仕事をする為に睡眠を削っていたが、睡眠欲に従順になってベッドに入った方が健康に良い。
その言い訳を作ってあげる事で、自分に少し優しくなってあげられたような気がします。
少しずつでいいです。自分を肯定してあげられる人になれたらいいなと思います。
他の人に自分の価値観を押し付けるのは間違っているかもしれません。それでも言わせて欲しいです。自分で自分の事を褒めないでどうする! 自分の頑張りを誰よりも分かってるのは自分なんですから!
日頃から他人に優しくあろうと十分頑張っている私達なのですから、自分にも率先して優しくありましょうよ! 最「優」先ですよ! 何があってもせめて自分にだけは優しくいましょうよ!
貴方はどうですか? ポイントカード、貯まっていますか?
【今月のTouch the Heartstrings】
我が家では近頃何者かに観葉植物を食い荒らされる事件が多発しておりました。どこのどいつだと思いながら過ごしておりましたところに突然目の前に白い怪物が現れたのです。奇跡的に激写に成功しました。健康状態はとても良好です。これ以上食うなよ?
川島如恵留(かわしま・のえる)
1994年11月22日東京都出身。小学生1年からジャズダンスを始めた後、芸能活動をスタートし子役としても舞台にも出演。その後、2007年10月よりアイドル活動を開始。2012年7月にTravis Japanの結成メンバーに。2022年10月に全世界メジャーデビュー。2017年青山学院大学卒業。2019年に宅地建物取引士、2023年には国内旅行業務取扱管理者の資格を取得。2024年4月から個人のYouTubeチャンネル「のえるの隙間時間」、同名のXも開設。
YouTube @noelnosukimajikan