30歳前後、誰もが考える結婚などのライフプラン。田中みな実さんが、充実した生活を送りながらも時折思うこととは?【連載「田中みな実のここだけ話」】
今回のテーマ:結婚できないと感じるときーーーっ。
お風呂上がりに顔に貼り付ける最近お気に入りのビタミンCパックが液だれするから、剥がすまでの15分、バスタオルをマフラーのように首にぐるぐるに巻きつけ塞ぎ止める。この間に体に化粧水やらクリームを塗り込み、髪を乾かし、その恰好のままゴム手袋をはめて(手の乾燥防止)夕飯の食器を片づける。時折そんな自分を俯瞰して思う。ああ、私、当分結婚しないだろうなあって。
何年か前、終わりかけていた彼との別れを決定的なものにするべく、彼の寝室のダブルベッドよりも大きい、クイーンサイズのベッドを自分の為だけに購入した。「ベッド、大きくしない?」といつだったか提案したら「ベッドフレームがもったいない」とか「業者まわり全部手配してくれるなら金出してもいいけど、本当に必要?」とか、あーだこーだ言われて一向に話が進まなかった、そのクイーンサイズのベッドを私は誰に相談することもなく手に入れた。
それを新居に迎えた夜、大袈裟なほど手足を投げ出して大の字で仰向けになると、この上ない幸福が押し寄せた。そして何年ぶりだろう、泥のように眠った。好んで選んだ彼との生活がいかに窮屈だったかを思い知る。『経済的にも精神的にも自立している私、最高』定期的にそう思わせてくれる実に良い買い物をしたと今でも少し誇らしい。
ちなみに、ベッドフレームはシモンズでマットレスはエアウィーヴL01。高額な買い物だけに勇気は要ったけど、寝がえりが打ちやすい設計になっているやや高反発のマットレスは理想だった。彼が好きな沈み込むようなホテルライクなベッドが嫌いだった、ずっと。
録画したドラマを観ながら気ままにとる夕食も、食器を洗うタイミングも、エアコンの温度設定も、声を出して台詞を覚えるのも、誰からも咎められない。この自由を知ってしまうと後戻りできない気がしてくる。そうして、みるみる自分以外を許容できる範囲が狭まり、誰かの言動に傷つきそうになったらダッシュで自身のテリトリーへ戻りバリアを張る。少しずつ何かが欠落していくのを感じているけど、もう少しこのままでいても…いいと思っている。
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