今の美容業界を支え、牽引し続けているビューティ・ライフスタイルデザイナーの藤原美智子さんに、「おしゃれとメイク」「美しさを滞らせないための秘訣」について、特別に語っていただいた。イメージモデルに田中みな実さんを起用し、メイクのポイントも解説!
ある程度は「他人の目」も必要。美への起爆剤となる
正直に告白すると、私がメイクに目覚めたのは34歳。その年にヘアメイク事務所を設立し、ヘアメイクアップアーティストとして女優やモデルのヘアメイクをするだけでなく、一般の人にメイクアドヴァイスをする仕事もしてみようと思いついた。それが自分のメイクに向き合うきっかけとなったのだ。
それまで私生活でも取材で写真を撮られる時でさえも、口紅か眉をサッサッと塗ったり描いたりする程度。撮影の仕事の時はほぼスッピン状態で行くことが多かったが、業界の人たちは私がノーメイクで撮影現場に現れても誰も何とも思わないし、問題にもしない。何故なら私ではなく、「モデルに」メイクすることが私の仕事だったから。
でも、こうした業界の“普通”は一般の人には通じない。たとえ私が「このように眉を描くと綺麗になれますよ」と言ったとしても、その本人の眉がボサボサだったら…。あまりにも説得力が無さすぎる!そのように考えて、仕事で使っていたテクニックで自分の眉を整えることにした。「ファンデーションを塗ると好きなように顔を拭けない」と思っても、「マスカラを塗ると瞼が重くなる」と感じても、説得力のために「藤原流」のメイクを自分にもすることにした。これが私自身のメイクの第一歩となったのである。
こうして自分をメイクするようになって、あることに気がついた。それは「人から見た自分」を意識すると綺麗になるということだ。そして、それこそが美容において、いや女性が綺麗になることにおいて最も大事であることに気づいた。無人島で暮らしていたら綺麗になりたいと思うだろうか。他人の目があるからこそ、そして比較対象があるからこそ綺麗になりたいという意識が生まれるのだ。
「他人の目を意識する」というのは時にネガティブに捉えられることもあるが、それは程度の問題である。必要以上に意識しなければネガティブな方向にはいかないし、それは美への起爆剤となる。他の人がいてくれるからこそ「自分らしい美しさとは」と考えもするのだ。
女性のメイクは20代後半で変化する
ところで、これは多くの女性を観てきた私の勝手な推論だが、20代半ば頃まではメイクの一番の関心事は「あの人のようになりたい」とか「流行を取り入れたメイク」と言っていいだろう。でも27歳頃からは「自分らしいメイク」へと興味がシフトしていく。
それは20代のパンパンに張っていたハリが和らぎ始め、そうした肌の内側からその人の内面性が滲み出てくる時期と重なっている。その内面性を外側に美しく的確に表現したい。つまり内面と外見を一致させたいという無意識の思いが「自分らしいメイク」へと興味を移らせるのではないかと思っている。
だから27歳頃からは流行ではなく「自分らしさ」に重きを置き、外見と内面が一致するようなメイクを意識すること。それこそが「その人らしい美」が花開いていく30代以降への布石となると私は思っている。そうした意味でも34歳でメイクデビューした私は奥手であったことを認めざるを得ないのである。
やっぱり化粧品は効果がある。潤いが失せ始めたら、頼ること
次に、私の美容に転換期が訪れたのは36歳の頃。実はこれも内緒にしておきたいようなことだが(笑)、スキンケアをちゃんとするようになったことだ。それまでは手元にあるもので適当にちゃっちゃっとしても、一晩寝ると肌は蘇っていた。それが、ある朝、肌に潤いが失せ始めてきている自分を鏡に見つけた。それから慌てて、仕事でモデルにメイクする前に施すスキンケアを自分にもするようになった。
荒地でも水や栄養分を与えると緑豊かな土地に生まれ変わるように、私の肌も一気に潤沢な印象へと変わった。ここだけの話(笑)、「やっぱり化粧品って効果があるんだぁ」と自分の肌の変化を見て心底、感心したことを覚えている。
背中や肩、首は顔と思って‘固まらせない、縮ませない’
もう一つ、私には大きな転換期がある。それは38歳の時。あまりにも硬く歪んでしまった体を何とかしようと一念発起して、様々な治療を試すようにしたこと。危うく治療難民になりかけたが、自分に最も効果があるのは「丁寧なマッサージ」というシンプルな方法であることに辿り着き、週に1回のペースでマッサージ店に通うようになった。
それから2年後。体がだいぶ楽になったからなのだろう、ある日、「他人に任せるだけでなく、自分でも毎日ストレッチをしてみよう」と思いついた。当時は夜遅く仕事から帰ってきても毎日3時間ぐらいストレッチをしていただろうか。硬く、捻れてもいる体だったので開脚をしても45度ぐらいしか開かず、骨盤も真っ直ぐに立たせることもできなかった。それでも毎日続けていたら1ミリずつ前屈できるようになっていった。ちなみに今は175度ぐらいまで開脚できるようになっている。
さらに2年後の体が柔らかくなってきたと自覚してきた、ある日。自分の背中を鏡で見て、以前よりも厚みが薄くなっていることに気がついた。以前の私は手足は細いのに、異様に硬かった上半身は厚みがあり、くびれがない体型だったのだ。この変化によって体が硬くなると贅肉が付きやすくなるということに気がついた。血流もリンパの流れも悪くのだから当然のことなのだろう。それと共に肌の色艶も良くなったし、顔のむくみも取れてスッキリともしていった。こうした自分の変化によって、顔は体全体と密接に繋がっていることを改めて思い知ったのである。特に顔にダイレクトに影響するのは骨盤から上の上半身であるが、この時から背中や肩、首は顔と思って‘固まらせない、縮ませない’が私の美容の信条となった。
大人になるほど美容は奥深く、面白い
さらに40代後半には食に目覚めて栄養学を学んだり畑で野菜作りを始めたり、念願の朝型生活へと切り替えたことでライフスタイル全般がオセロの石をパタパタとひっくり返すように変化していった。そうした日々によって私の顔つきも変化していったと思う。
そして改めて思ったのだ。美容は生き方も含めトータルで捉えたほうがより効果的であり、より自分らしい芯の美へと繋がっていくということを。美容というのは大人になるほど奥深く面白いものであり、自分に対する興味が失せない限り生涯にわたって楽しめる分野だということを。だから私は言いたいのである、「大人こそ美容を」と。
藤原美智子
ビューティ・ライフスタイルデザイナー。長年卓越した技術でヘアメイクアップアーティストを務め、2022年から現キャリアに。MICHIKO.LIFEではメイクアイテムをはじめ、生活が充実する製品が好評。