女芸人 紺野ぶるまさんによる女観察エッセイ「奥歯に女が詰まってる」。GINGER世代のぶるまさんが、独自の視点で世の女たちの生き様を観察します。
第37回 めっちゃ小分けにする女
少し前にこんなことがあった。
仕事後に女友達と約束していたが、お互い終わるのが遅くなり、リスケにする流れになった。
「残念! 旅行のお土産持ってきたんだけど・・・また!」というので、わざわざ用意してもらったのに悪いなあと、結果短時間だけでも会うことに。
そこで渡されたのが、小さいジップロックに入った白い恋人二枚だったのだ。
「あ、ありがとう~。食べたかったんだよね~」
動揺を隠すためにそう言ったが、そんなわけがない。白い恋人は確かに美味しいが、日常生活で思い出したことなど一度もない。
それでも、もらったらうれしいのが名産品というものだが、「お土産がある」と宣言するには足りなすぎる枚数だった。
いいものをもらえると期待していたわけではないし、気持ちはありがたく受け取るべきだが、「ちょっと説明してほしい」という思いは否めなかった。あれは、職場が一緒で休憩中に渡された時の適量だ。私のためだけに買ったものじゃないはず。
あの時生まれた「もらわないと失礼だ」と言うお土産への義務感を返してほしい。
彼女の小分けはそれだけじゃない。
「恋愛の相談に乗って」というから電話をしたら、「友人に紹介された人とLINEを始めた」だけだったりする。
まだ好きにもなっていない、遊ぶ約束もしていない段階での恋バナほど盛り上がらないものはない。
始めの「え!? なになに?」の温度感だけが残って、電話を切るに切れなくなる。
ある日、国家秘密のごとく慎重に口を開いたと思ったら「好きなタレントのインスタライブにコメントをしたら返事をしてくれた」と言い出した時は、ついに「もう少し話が熟してから連絡してほしいな」と喉まで出かかった。
しかし、誰に頼まれたわけでもないのにその場を勝手に背負い「自分が盛り上げなくちゃ」と話を盛ったり、自虐を言ったりして疲れてしまうときには、彼女の自分から誘っておいて、平気で無言の時間を過ごす神経が羨ましくなる。
祖母に駆け寄る初孫のような、あのプレッシャーのなさはさぞかし楽だろうと思う。
ジップロックに小分けは、お土産の正しい渡し方なのかもしれない。無理して箱で渡して相手のリアクションに不満を抱えるよりはマシだ。それでもせめて、もう2枚は入れてほしい。
最後に
“小分け”とかけまして
“お土産”と解きます。
その心はどちらも、“等分(糖分)”がそこにあるでしょう。
今日も女たちに幸せが訪れますように。
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