女芸人 紺野ぶるまさんによる女観察エッセイ「奥歯に女が詰まってる」。GINGER世代のぶるまさんが、独自の視点で世の女たちの生き様を観察します。
第36回 褒めながら落とす女
褒められてうれしくない人はいない。もれなくニヤニヤしてしまう。しかし時々、「なんか入ってこないな」と思うときがある。それどころか「あれ? バカにされてる?」と感じることさえある。おそらく執拗に褒められるときだ。
「あれ? 痩せました? その服お似合いです。この前のあれ観ましたよ」。
これを言っとけばこいつは大丈夫だろう感が透けて見えるのと同時に、相手を褒められる余裕を見せつけられてる気分になる。
これに対して「高みの見物やめろ!」なんて噛み付けば、こちらがひねくれ者として揶揄されるから、「ありがとうございます」と馬鹿なふりをするしかない。本当は「格下の人間褒めて気持ちよくなってるんじゃないよ!」と大声で言いたいが、苦笑いでグッと堪える。
こういう自称太鼓持ちな女は「おじさんとか太ってる人が好き」と表では言っておきながら、裏では、ホクロひとつない美容師とか、すごい金持ちと付き合っているから、少しでも気を許したら負けなのである。
髪型を変えた際などに、「全然いいと思うよ」と言われると「下手くそ!」と突っ込みたくなる。褒めてもらって当たり前だなんて思っているわけではないが、あまりに気が利かなすぎやしないだろうか? だったら何も言わないでいてほしい。
大体「全然」って何だ!? 「よくはないけど最悪はまぬがれてる」的なニュアンスに聞こえる。
「いいと思うよ」ってどういうことだ!? 「元気出しなよ」と勝手に憐れまれてる気がしてならない、「私的にはなしだけど」と採点されてる気分になる。
こういう自称嘘つけない女は、大人数でピザを食べるとき、1人1枚なことに気づかず自分だけ2枚食べて、「あれ〇〇ちゃん食べれてないの? いいよいいよ、もう1枚頼もう!」と名案を思いついたかのようなドヤ顔をする恐れがある。
しかしここまで文句を垂れていると、いよいよ自分が腫れ物な気がしてならない。
髪型を変えた友人に、一体何と言うのがベストなのか、提案もしていかないとならないだろう。考えた末「もしかしてセラチネトリートメントした?」ではないだろうかと思った。
「何それ?」と返されたら、「ほら、あの2万くらいするやつ。吉川ひなのがハワイでやってるやつ。綺麗だからしたのかと思った」と情報を添える。
もちろん“セラチネトリートメント”なんてこの世に存在しない。とにかく、良さそうなものを使ってると思った旨が伝わればいいのである。
これをぜひおすすめしたい。
最後に
“ひねくれてる人”とかけまして
“猫っ毛の人の前髪”と解きます。
その心はどちらも“うまく立てるのは不可能”でしょう。
今日も女たちに幸せが訪れますように。
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