その対象が人であってもモノであっても、“推し”の存在は心を潤し、人生を豊かなものにしていきます。一度ハマるとなかなか抜け出せないことから「沼にハマった」と表現される愛。本日公開の映画『あの頃。』で主演の松坂桃李さんが演じたのは、ハロー!プロジェクトにオタク仲間とともに青春を捧げたハロオタ。映画を介して触れた“沼活”の世界を、松坂さんはどんなまなざしで見届けたのでしょうか。
素直に理解できる、沼にハマる気持ち
今回この作品に参加するにあたって、モーニング娘。’20の公演を観たという松坂さん。
「すごくわかるんですよね、ファンの方たちの気持ちが。僕はBUMP OF CHICKENさんが大好きなんですけど、アイドルファンに限ったものじゃなく、熱量も想いも同じなんです。生で歌を聴きたいし、会いに行きたい。
改めて感動したのは、長くて深い歴史があるからこそ、ファンの方々が成熟していること。好きなものって継続していくと、熱狂的ではなく、情熱の注ぎ方が穏やかになっていくじゃないですか。無償の愛というものを肌で感じました」
作中で描き出された“ハロプロ”沼
「僕が演じた劔(つるぎ)さんは、松浦亜弥さんという存在と出会うまでは、ずっと地中にいるような日々を送っていた人。そのなかで“あやや”という光が差し込んで、人生が動き始めたんです。
僕の人生を思い返すと、人物ではないけれど、映画『僕たちは世界を変えることができない。』という作品がひとつの光でした。映画の面白さに触れ、俳優としてやっていく覚悟が決まって、欲も生まれた。貴重な財産です。相変わらず『遊☆戯☆王』も大好きだけど(笑)、僕にとって仕事である芝居も、ある意味“沼”なんですよね」
松坂さんが思う、沼活の魅力とは
「映画でもドラマでも本でも、その世界に没頭して感動したり、盛り上がっている時間があることで、身の回りで起きた悲しいことや悩みを解消できることもある。目の前の生活を整えたり、守ることも大事だけど、エンタメの力で心に風を通す時間を作ることも人には必要だと思っています」
映画『あの頃。』は本日全国公開
楽しいことなどなにひとつなく、うだつの上がらない日々を送っていた劔(つるぎ)。そんな彼の人生を大きく変えたのは、「♡桃色片想い♡」を歌って踊るアイドル・松浦亜弥の存在だった。ハロプロ愛にあふれたメンバーとのくだらなくも愛おしい時間。だが次第に、仲間は別々の人生を歩み始め、離ればなれになっていく・・・。
『あの頃。』
原作/劔樹人『あの頃。かしまし物語』イースト・プレス
出演/松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ
配給/ファントム・フィルム
※2021年2月19日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
松坂桃李(まつざかとおり)
1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。2009年、俳優デビュー。映画『孤狼の血』で第42回日本アカデミー賞 最優秀助演男優賞、『新聞記者』で第43日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞を受賞。’21年4月より、土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK)で主演を務める。公開待機作に映画『いのちの停車場』『空白』『耳をすませば』など。