小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.26 何も考えず異世界に浸れる、ファンタジー小説を教えてください
《読者からのリクエスト》
最近、仕事も恋愛にも大きな変化はないし、平和だけど、面白みのない毎日です。小説のなかだけでも、ゆめゆめしいというか、現実離れした世界に浸りたく。こんな私にオススメの一冊を、ぜひお願いします。
舞台は京都。
結末が見えない不気味な世界にワクワクする
私、ファンタジーな物語を本で読むのがとても苦手で・・・。
ファンタジーな世界に浸れる遊園地やアニメーション映画は大大大好物なのですが、小説となるとなかなか手を伸ばしづらいジャンルなのです。
なんせ自分でも驚くほど現実主義者なもので、活字を追うだけとなるとファンタジーの世界に浸れないというか、そんなわけないだろう!と、なぜか思ってしまうのが原因なのであります。
そんな私が一昨年の春、地方で撮影をしている頃にホテルの近くにあった本屋さんでたまたま出会ったのが、森見登美彦さんの『夜行』でした。京都で泊まり込みの撮影をしていた時期で、この物語の舞台が京都だったこともあり、なんだか親近感が湧いて手に取ったことがきっかけでした。なので、あらすじも特に知らず、表紙の女の子になんとなく惹かれて偶然手にしたので、どんな話なのか全く分からずに読み進めたのですが・・・。
物語は、学生時代、京都で行われる鞍馬の火祭を英会話スクール の仲間6人で 観に行った時に、同級生の長谷川さんが姿を消したという過去の話、そしてその10年後にその仲間が鞍馬の火祭で再会するというところから始まります。
物話は長谷川さんがどこに行ったのか・・・というサスペンスのような話の展開になるのかと思いきや、その鞍馬の火祭を観に行った仲間それぞれに起こった不思議な話で進んでいくのです。
この本は、ファンタジーというより私にとってはホラーにも思えまし た。読むたび読むたび、え!どういうこと !? こわっ・・・と、一人でホテルの部屋で読んでいたため怖さと不気味さが倍増し、やっとの思いで少しずつ読み進めたのを覚えています。
時間軸も変わるので、私には読み終えるのが大変でしたが、なかなか結末が見えない物語にずっとワクワクしていました。
ファンタジーと言えば、キラキラした夢のような、誰もが憧れる世界のお話を想像しがちでしたが、こういうファンタジーの形もいいな・・・と思いました。
小説で不気味な世界に浸りたい方はぜひ、『夜行』を手に取ってみてください。
今回のオススメ本はこちら!