まさにGINGER世代ど真ん中を生きる、田中みな実さん。場を仕切り、盛り上げ、ボケもツッコミもこなす知的な仕事人として、コスメ愛を探究する美容賢者として、チョコレートをこよなく愛する乙女として、その人気と注目度はますます上昇中。 そんな彼女が本音で綴る連載コラム「田中みな実 ここだけ話」。今回はみな実さんが経験した“旅”にまつわるお話です。(編集部)
今回のテーマ:バロセロナ
海外旅行から帰ってきて、「人生観が変わった!」などと大騒ぎしている人をみると、なんだかちょっぴり陳腐な気がしてならない。
それなのに、写真集の撮影でスペインを訪れて以来、私は、清々しいほどの笑顔を周囲に振りまき、「人生観変わっちゃった♪」などとぬかしている(笑)。
“バックパッカーでヒッチハイクをしながら”とか、“ガンジス川のほとりで”とか、“アフリカの雄大な荒野を”とかなら分からなくもない。けど、写真集の撮影でバルセロナにたかだか4泊してきたくらいで、一体どうしてしまったのだろう。
事実、その数日のうちに、私はこれまでの人生で一番美しいものをみた。バルセロナの海を照らす朝焼けは今も鮮明な記憶として全身にとどまっている。海岸沿いからなんとなしにみていたら、あそこまでの感動は訪れなかったかもしれない。
撮影のためにカメラマンと腰まで水に浸かった状態で水平線をぼんやり眺め、やわらかく打つ波に身をゆだね、日の出を待った。朝日が昇り始めると、穏やかな水面が夕陽のようなオレンジに染まり、私たちをまるごと包み込むようだった。ふんわりあたたかく、心地よく、安全で、油断したら涙があふれてしまうほどに胸をいっぱいにするものだった。
街並みや建物からのぞく未完成の美、不完全の尊さは、自分の在り方をみつめ直すきっかけを与えてくれた。特集の長編(2020年GINGER1月号掲載)はそんな経験をしたからこそ綴れた、不恰好な等身大の田中みな実。是非ご一読を。