日ごろから“言葉”についてあれこれと思いを巡らせている壇蜜さんの連載『今更言葉で、イマをサラッと』第14回目。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください!
その14『分かりません』
何かを問いかけられ、分からなかったとき「分かりません」というのは当たり前のことだ。知ったかぶりをしたり憶測で答えて相手を振り回すことは良くないし、自分も嘘をついたような目で見られると損だ。しかし、「分かりません」にはどうにも突き放してその後は寄せ付けないぞ・・・とう力が強いようにも感じる。「・・・ですよね?」と聞かれて「分かりません」という返事のあと、正直に分からないと答えただけなのに、なぜこんなにも気まずいムードになるのか・・・と疑問を抱くのは私だけではないだろう。
できれば答えたい。しかし、自分の持っている情報が相手の質問に答えられるだけのものではない・・・だからこそ生まれる正直な言葉、「分かりません」なのに。どうしたことか。しかも「ちょっと分からないですね」と「ちょっと」など入れられた日には、ちょっとを入れたのにどういうわけか心の距離が出てしまう。思い出そうとしてくれる気持ちや、何か別のアイデアをくれるような気持ちがないのだろうと汲み取ってしまいそうな言葉・・・それが「分かりません」なのかもしれない。
ではどうすればいいか。知人に「分かんないなぁ」と言ったあとで「あー、ごめん。分かんない・・・分かんない・・・から、どうしようか、調べよっか」と若干ではあるが前向きに「分からないこと」と向き合ってくれる者がいる。実際に調べてもらうかは別として、大変ありがたい気持ちになる。
もしも誰かに何かを聞かれて、分からないことだったとして、しかもその誰かが大事な人だったとしたら・・・または、自分のなかに余裕があるとしたら・・・、「分からない」の前にほんの少しの謝罪や補助的な気遣い言葉を入れてみてほしい。「ごめんなさい。私には分からないので詳しい方に聞いた方がいいかもしれません。せっかく聞いてくださったのに・・・」とシュンとしてみれば、その後気まずいムードが流れることも減るだろう。女は皆女優。ちょいと気遣いの一芝居をうつことも覚えていて損はない。