写真家のレスリー・キーさんと、LVMHの各ブランドとのコラボレーションが実現したスペシャルな写真展が渋谷で開催中。ティファニーやウブロなど憧れのハイブランドとセレブリティたちの美しい共演にうっとりすること間違いなし。けれど、そこに込められたメッセージは、煌びやかなだけじゃない。本企画にかける想いをレスリーさんに伺った。
パッションとビジョンがあれば、なんでもできる
セレブリティから市井の人まで、世界中を飛び回りポートレートを撮影してきた写真家 レスリー・キーさんの写真展「SUPER LVMH ~ ART DE VIVRE」が現在、原宿・キャットストリートのアートスペース「Creative Space Akademia 21」で開催中。
この写真展には、モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン(以下LVMH)のエグゼクティブ30名のポートレートと、それぞれのブランドを纏ったセレブリティたちが写った、レスリーさん監修のマガジン『SUPER』のタイトル入り写真が展示されている。
「人間はみんなそれぞれの輝きがある。そしてそれを捉えることができる写真というものは、ある種の魔法なんですよ」
レスリーさんはそう言って、展示された作品を嬉しそうに眺めている。
「ブランドの社長さんですから、みんな強い人なのかな?って思うじゃないですか。けれどカメラの前に立つと、それぞれがとてもチャーミング。社長という仮面を脱いだ“ひとりの人間”として、写し出せたと思っています。僕自身もファッションが大好きで、こういうかたちで同じようにファッションを愛する人を写せたことをとても嬉しく思っているんです」
ファッションを愛し、写真を愛してきたレスリーさんは、コロナ禍に気がついたあることから、このLVMHとの企画をスタートしたそう。
「コロナ禍、僕はニューヨークにパートナーと住んでいました。当時はみんな外で働くことができませんでしたよね。その間を僕は“Rethink(考え直す)”と“Research(リサーチ)”と“Rebuild(再構築)”に費やしました。まずは自分の人生を考え直して、気がついたんです。僕が本当に好きなものは、ファッションと写真。それらを通して人をもっと輝かせたい、ということにね。
そのためにリサーチしていくと、LVMHに協力してもらえたらいいのではないかと。みんなが憧れる世界的なブランドの数々が一緒になって多様性について発信してくれたら、もっと世界の人たちを勇気づけられる、そして輝けるのではないかと。特に日本においては、人種の違いについてやLGBTQへの理解を、もっと深めていってほしい。このアイデアがうまくいけば、きっと日本も変われるかもしれないと思ったんです。LVMHジャパンの社長ノルベール・ルレさんとお会いし、話していくなかで、僕自身のアイデアが再構築されていきました」
レスリーさんは、現在アメリカに住むアジア人であり、LGBTQの一員でもある。それぞれの違いを尊重し合うことの大切さも、写真を通して長年発信してきた。彼のその熱い想いとLVMHの想いが共鳴し、今回の写真展が実現。LVMHジャパンは、4月19日から3日間開催された「東京レインボープライド2024」に協賛しており、LVMHのダイバーシティ&インクルージョンを紹介するブースを出展、さらにLVMHジャパンとグループブランドの社員と家族約250人にレスリーさんも加わってパレードに参加した。
そして、開催中の「SUPER LVMH ~ ART DE VIVRE」との連動。この特別なコラボレーションを実現することは、そう簡単ではなかっただろう。
「すごいことですよね。自分でも、ここまで大きな会社を説得できたのはパッションしかないと思います。でも僕にはもうひとつ、ビジョンもある。パッションとビジョン、このふたつがあれば無敵だって思っています。
ポートレートを撮影していると、人を観察することが必要になってくるんです。それと同時に僕は、常に社会も観察している。今、社会はどうなっていて、何が必要なんだろうかって。僕は、日本という国が好きで、写真が好きで、仲間が好きだから、すべてに輝いてもらいたいからこのプロジェクトを始めたんですよ」
その人らしさを生かし、永遠に残る一枚に
今回展示されている写真には、桐谷美玲さんや三吉彩花さん、水上恒司さんなど「GINGER」でもお馴染みの面々が、LVMHグループのブランドを纏う。展示されている写真一枚一枚にメッセージがあり、観る者を魅了する。
「みんな、僕が撮りたいと思った人たちばかり。この人にはこのブランドがいいんじゃないかなと、僕自身がマッチさせた例もありますよ。例えばウブロのモデルになってくれた水上恒司さん、すみれさんがそうですね。時計だから全身のカットではなくて、撮影はアップになるでしょう。ぐっと近づいて撮りたい、ふたりに関してはそう思ったからウブロに登場してもらいました。ふたりと僕はずいぶん昔から仲良しなので、近い距離感もいい感じに撮れると自信があったんです」
撮影は昨年11月ごろから、本展覧会が始まる直前まで。ニューヨーク、ミラノ、パリ、東京、シンガポールの5ヵ国で行われた。コロナ禍から長年温めてきたこの大きな企画を成功させたあと、レスリーさんはどんな撮影に情熱を注ぐのだろう。
「実は昨年、写真家のリチャード・アヴェドンをトリビュートした写真集『A Tribute to Richard Avedon』をつくりました。世界で活躍するモデルやデザイナーなど、多くの人を、アヴェドンだったらどう撮るだろうとイメージして撮影したんです。僕にはまだまだトリビュートしたい写真家、アーティストがたくさんいますから、これからはこのトリビュートシリーズをどんどん撮影していきたいですね」
ひとつの夢を実現させてなお、満足することなく次を見据える写真家、レスリー・キーさん。彼が捉えた“人々の輝く瞬間”を、ぜひ会場で目撃してほしい。
写真展「SUPER LVMH ~ ART DE VIVRE」Photographed by Leslie Kee
会期/開催中〜5月19日(日)まで(11:00〜19:00)
会場/Creative Space Akademia 21(東京都渋谷区神宮前5-27-7 アルボーレ神宮前 1F/2F)
LESLIE KEE(レスリー・キー)
写真家。1971年シンガポール生まれ。ポートレート、ファッション、アート、広告の撮影、短編映画やミュージックビデオの監督も務める。写真集にセレブリティを撮影した『Super Stars』や『LOVE&HOPE』などがある。市井のLGBTQ+の人々を撮影する「OUT IN JAPAN」などのさまざまなプロジェクトも長年をかけて行っている。昨年はリチャード・アヴェドンをトリビュートした展覧会「A Tribute to Richard Avedon」を東京で開催。現在はニューヨークと東京の2拠点を中心に、世界中で撮影を行う。
signo-tokyo.co.jp/artists/leslie-kee/
Instagram @lesliekeesuper