社会にSpark(ときめき&ひらめき)を発信している女性を取材する連載「プロジェクトS」。商品やサービスについて知るとともに、その舞台裏で輝く彼女たちの言葉から、仕事を楽しむヒントを見つけて!
忙しい朝、コーディネートに悩んだ結果「とりあえずデニム」・・・という経験がある人は多いはず。そんな頼れる大定番とも言えるアイテムに「今こそ改めて注目してほしい」と語るのは、デニム好きなら知らない人はいない世界的ブランド、DENHAM(デンハム) の日本支社でMD(マーチャンダイザー)兼企画を担当している近藤恵理香さん。
「デニムの最大の魅力は、長くはき込んで楽しめること。最近のファッション業界ではサステナビリティが重視されていますが、1着を長く大切に着るという意味では、デニムほどサステナブルなアイテムはないと思うんです」
おしゃれで使い勝手がよいだけでなく、環境や社会にも優しい服──そういう視点で自分のデニムを見たことがありますか? 今回は近藤さんに、知ればもっとデニムを好きになる、“長く愛せる”デニムの魅力を教えていただきます。
“育てる”から一生モノ!
近藤さんの言う「長く」は数年ではありません。一生はけると言っても過言ではないほど、デニムの寿命は長いのだとか。
「デンハムでは、イチから“育てる”ことを楽しんでいただけるデニムをご用意しています。それがいわゆる生デニム。加工が一切ほどこされていないデニムのことで、何年もはき込むことで経年変化を楽しめるのが醍醐味です」
生デニムは現在はメンズのみの展開ですが、女性でもメンズ商品の小さいサイズや、ウィメンズ商品のなかからワンウォッシュ程度の軽い加工のものを購入し、“育てる”人は多いそう。
「はけばはくほど色落ちが進み、生地が柔らかくなって肌に馴染んでいきます。穴が空いたら、裏から当て布をしてリペア。プロの手にかかればおしゃれなワンポイントになります。どんなダメージがあってもたいていはリペア可能なので、お気に入りのデニムに出合えたら、それはもう一生モノなんです」
“育てる”ことを提案するデンハムならではの取り組みとして知られているのが、持ち込んだデニムを店頭でハンドウォッシュしてもらえるサービス。自然な色落ちをキープするため、デニムを知り尽くしたスタッフの手で、優しく丁寧に手洗いしてもらえるのです。
「洗濯機だと色が落ちすぎたり、落ち方がまばらになってしまうことがあるので、人によって洗濯は半年に1回であったり、年に1回であったり、はたまたほとんど洗わないという方もいらっしゃいます」
そう聞くと、デニムってそんなに繊細なの?と、少々腰が引けてしまう人もいるかもしれません。でも近藤さんいわく「楽しみ方は人それぞれ」。
「実は、私自身はけっこう頻繁に洗濯するんですよ(笑)。もともと淡い色のデニムが好きなので、もっと薄くしたくて洗ったり。お客様のなかには、やすりをかけて自分好みのダメージを作る方がいる一方で、“色落ちしにくい”が売りのシリーズを何本もまとめ買いする方もいます。洗濯しないほうがいい、というのはあくまで一般論で、自分の好みしだいで、自由に扱っていいんです。そうやって“自分だけの一着”に育てるところに、デニムの楽しさがあると思います」
今も10年後も新鮮にはける、デニムのスゴさ
モノとしての寿命の長さもさることながら、デニムを“長く愛せる”理由はもう一つあると近藤さん。それは「トレンドに流されない」ということ。
「デンハムでは、シーズンごとに商品の入れ替えはありますが、基本的には常にタイトからワイドまで、シルエットのバリエーションを揃えています。たとえ一時的にワイドが流行っていても、タイトをはいている人も普通にいる。そのときの流行に捉われることなく、自分に似合うか、デザインが好きかで判断できるのが、デニムのいいところだと思います」
流行を気にせず選べるから、本当に好きな一着を選べる。好きだからこそ、何度でもはきたいと思える。そんなデニムならではの好循環を生み出すのに、デンハムで一役買っているのが、トップスやコートなどデニム以外のアイテム。実はこれらのうち約半分は、日本オリジナル企画の商品なのだとか。
「やはりヨーロッパと日本では、気候も違えば、人々のスタイリングの好みも違います。デニムは本国オランダからのインポートですが、コーディネートのアイテムはより日本のニーズに沿ったものをお届けするため、日本オリジナルで作っているものもたくさんあるんです」
日本オリジナル商品の役割は、デニムの可能性をさらに広げること。例えばこの春は、デニムにぴったりなフーディがあり、そのフーディに合うワンピースがあり・・・といったように、デニムを起点にコーディネートの幅がどんどん膨らんでいく仕掛けになっているのです。
「どのアイテムもデニムに合うことが大前提ですが、その上でさり気なく時代の気分を取り入れることも意識しています。デニム自体がオーソドックスなので、合わせるアイテムによって変化を楽しんでいただけたらなと。そしてもうひとつ大切にしているのは、シンプルななかにも何かひとひねり加えること。何年か経っても『着たい』と思っていただけるように、ディテールにこだわりのあるアイテム作りを心がけています」
デニムはどんなアイテムともコーディネートしやすく、合わせるアイテムしだいでトレンドを取り入れたり、がらりとムードを変えたりすることも可能。だからこそ、今買ったものを10年後も新鮮な気持ちではけるのです。
──経年変化を“味”として楽しめること。トレンドに流されず、気に入った一着を愛用できること。この2つの特徴が、デニムが“長く愛せる”服である理由。近藤さん自身、入社当時に購入したものを、今でも大切にはいていると言います。
「サステナブルだし、何より楽しい。そんなデニムの魅力を、商品を通してたくさんの方に知っていただけるよう、これからも頑張りたいと思っています」
次回はデニムの“選び方”について、同じくデンハム・ジャパンで活躍するGINZA SIX店勤務の松本瑛美さんにお話を伺っていきます。お楽しみに!
近藤恵理香(こんどうえりか)
デンハム・ジャパン MD/企画担当。アパレル勤務を経て2016年に販売スタッフとしてデンハム ・ジャパンに入社。現在は本国オランダからの商品の買い付けや、日本オリジナル商品の企画に携わっている。Instagram @eeeeer_k
デンハム・ジャパン
https://www.denhamjapan.jp/
Instagram @denhamjapan
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