恋愛、仕事、結婚に家族や病気…。30歳前後は、常にたくさんの悩みがつきまとい決断することも多いタイミングです。それぞれのテーマで、「する前」と「してから」を取材。今回は、山崎薫さん(仮名 32歳/IT系勤務)に、マッチングアプリを始めてからの変化について聞きました。
File3. マッチングアプリ、始める前と始めてから
山崎薫さんが純粋な好奇心からマッチングアプリを始めたのは27歳のとき。
「人と話すのが好きで、合コンもよく行っていたんですけど、恋人を見つけるなら1対1で会うアプリの方が効率がいいなと」
超完璧主義者な山崎さん、やるとなれば妥協しない。4つのアプリを掛け持ち、1日平均100はくる「いいね」をさばきながら、1日約40通のメッセージをやりとりする日々。
「そこまでくるともう業務(笑)。実は特別結婚したいわけでもなく、ゲーム感覚でした」
週末は2時間制でデートを4ターン。3回目のデートで大体の男性が告白をしてくれた。
「それで承認欲求は満たせたかもしれない。けど3回デートするにいたるまでが難しい」
なかには「料理ができないと女じゃない」と言う男性や、マルチ商法の勧誘だったなどのトラップも。現在まで200人に会い、付き合ったのは6人。
「いい人もいました。でも誰も好きになれなかった。これだけ会っても人を好きになれないって、それは自分に問題があるのかもって」
やたら人に会うよりも、自分を知らなくては。マッチングアプリを通し、気が付いた。
「そんなとき、久しぶりに母に会ったんです。うちは父が乱暴な人で、母が泣かされていた。だからそのときも、母の前で父の悪口を言ったんです。そしたらすごく怒られて」
父をかばう母を見て「お母さん、お父さんのこと好きだったんだ」と初めて思った。そう思ったら、体の力が抜けるほど安心した。
「私、ずっと母のことをかわいそうだと思っていて。父を見ていて男の人って女の人を傷つけるものだと思い込んでいた。でも実は、母も父のことをちゃんと好きだったんです。そう思ったら別に結婚って悪いものじゃないのかもって」
マッチングアプリを通して、どうやって男性から告白を引き出すか、さまざまな技術を磨いてきたと山崎さんは笑う。
「1日100の『いいね』をもらっても、それはどうでもよくて本当は誰かひとりに愛されたいし愛したい。自分の根源にあった男性への不信感が少し払拭できた今、もしかしたら誰かを好きになれるかもしれない。そのときはこのマッチングアプリで鍛えたテクニックを役立てたいと思います(笑)」
【する前としてから】をもっと読む。