“大人のフリ”して放置(我慢したり、見て見ぬふりしたり)せず、煩わしい人間関係をぶった斬り、好きな人たちとだけ生きていく――。そんな“自分基準”を掲げて、人生を楽しく、生きやすくしていきませんか? 脚本家 岸本鮎佳さんの連載「私、幸せになるんで。はい、サヨウナラ」。あなたの人間関係やモノ付き合いの整理整頓&取捨選択に際し、ぜひご参考に!
VOL.19 宙の果てまでサヨウナラ!!!サ〇コパス男
まさか、この歳になって、ここまで最低野郎と出会うなんて思いもしなかった。
自分は疑り深く(特に男性には)、ある程度やばい奴を見極める力がついてきたと思ったが、どんなに気をつけていても、被害に遭うことはある。
まだ、コロナ前の遅くまで飲み歩ける時期に出会ったサ○コパス男のお話。
とある知り合いの紹介で出会ったその男は、年齢も同じくらいで初対面の印象も悪くなかった。
顔はタイプじゃないけど、明るくて食事の席でもさりげなく気を遣えるような、どちらかといったら好印象なタイプ。
連絡先を聞かれ、後日食事に誘われた。
好きでも嫌いでもなく、行っても行かなくてもどちらでもよかったのだが、作家の職業病なのかもしれないが、「初めてのこと」には出来るだけ飛び込みたいと思ってしまう自分がいた。
なので、断る理由も特にないので食事に行った。
明るく、よく喋る方だったので、楽しくご飯を食べながら…
と、ここまでは良かった。
お酒も少しずつ回り始めた頃、彼はそれとなく店員に絡み始めた。
「ねぇ、お兄さん韓国の人? このスープって何が入ってるの?」
その問いに、韓国人の店員の若いお兄さんが答えられずにいると、
「だめだよ~! バイトなんだから、ちゃんと答えられないと~時給もらってるんでしょ?」
と、笑いながら注意し始めたのだ。
…わ。
その時点で初めて嫌な予感がした。
店員に文句を言ってるわけじゃない。ちょっとした冗談だと彼は言った。
でもそのとき、彼の目の奥に、ドス黒くて歪んだ心をしっかりと感じたのだ。
なんか、こえぇ!!!
まぁ、どうせもうこの彼とは会うこともないのだからと、あまり深く考えず、店を後にした。
お会計は、彼が出してくれたのでコーヒーでもご馳走しようかとも考えたのだが、私はその後、別の友人との約束があったので、
「ごちそうさまでした! また今度!」
と、軽い社交辞令を言って、別れようとしたら、彼はまだ飲み足りないらしく、友人との約束に自分も混ざりたいと言う。
全く気乗りがしなかったが、あまりにしつこく言われたので、友人に連絡し、了承を得たので、半ば強制的に友人との飲みの約束に付いてくることになった。
友人と彼と3人で飲んでいて、明確に分かったのが、「この男、全然うちらと会話が噛み合ってない!」ということだった。
酔っているのか、なんなのか、微妙に会話が合わない。
友人は明るく、人に気を遣える天才なので、初対面の友人をこれまで何人も会わせてきたが、みんなに好かれ、楽しい会にしてくれるような人徳のある子。
私もほぼ初対面のような人を突然連れてきてしまって、申し訳ない気持ちがありながらも、やっぱり今回もうま~く会話を回してくれる友人に心のなかで感謝した。
そして楽しい気持ちで、お開きの時間を迎え、お会計の伝票を店員が持ってきたとき、事件は起きた。
お会計は3人で約¥10,000。
単純計算でも、一人¥3,000ちょっと。
すると、彼は「¥2,000しか持ってない」と言い始めた。
「じゃ、カードで払えば?」と私。
すると彼は、信じられない一言を我々に放った。
「たまには、自分で払いなよ」
…は?
なに? たまにはって…会ったの2回目だよな?
無理矢理人の約束に付いて来て、¥2,000しか持ってなくて、「たまには自分で払いなよ」って…
頭に血が昇るのを抑えながら、彼にしっかりと伝えた。
「え、ごめん、たまにはって、さっきのお会計は自分で払わせてって言ったよね?」
てか、よくよく考えたらさっきの店でも奢ってもらってはいなかった。会計が¥13,000で¥3,000は自分で払ったのだった。
すると、彼は急に声のトーンを低くして、
「いやいや、払いなよたまには…」
と。
どうやら日本語が通じていない様子。
「だから、¥2,000じゃ足りないでしょ? だったら、おろして来てよ」と言ったら、
「だったら、お友達に払って貰えばいいじゃん」と…。
その発言に、絶句する友人。
あまりの常識のなさと、男としてのダサさ、逸脱した価値観を感じさせる発言に、絶句。
たかがあと¥1,000ちょっとだが、友人でもましてや彼氏でもないようなこのサ○コパス男の会計を、余分に払う気持ちなど、1ミリもなかった。
「カードで払いなさいよ、あなた勝手に付いて来たんだからさ!」
彼が誠実な人間で、この会に呼んで良かったと思ったら、私は何の躊躇もなく払ったと思う。
こいつにはたかが¥1,000でも絶対に払わせないといけないと、私の魂が震えた。
しかし、私が次に言葉を発しようとしたとき、彼は自分の鞄を持って、颯爽と店を出て行ってしまったのだ。
え…信じられない…。
彼は、¥1,000を払いたくなくて、逃げたのだ。
彼の異常性を感じた。
普通の人間なら、そんな行動は出来ない。
とんでもない男…。
初対面でそれを見抜けなかった自分を呪ったし、何かのバチが当たったとすら思ったが、何よりも彼の異常性は、ただの「ヤバい男」とは訳が違う。
あぁ、気持ち悪かった…。
これほどまで常識とかけ離れている男は、まるで詐欺師のように、相手に寄り添い、初対面では決して本性を表さない。
レディファーストだったり、おいしいご飯をご馳走してくれたり、上辺の優しさでこちらの気をさりげなく引く。
レディファーストされて嫌な女はいないだろう。
でも、優しさの本質はそこじゃない。
本当に思いやりがある人は、異性や恋愛関係じゃない人に対しても、相手を気遣うことができるはず。
皆さんも上辺の優しさに惑わされないようにしましょうね。
一生私の前に現れないでください。永遠にサヨウナラ。
サ○コパス野郎…。
岸本鮎佳の【私、幸せになるんで。はい、サヨウナラ】をもっと読む。