美術を面白おかしく、わかりやすく解説する“アートテラー”として活躍するとに~さんによる連載。今回は、秋の行楽と合わせて訪れたい、京都の展覧会をご紹介。
こんばんは。アートテラーのとに~です。先日、とある美術館でのトークイベントの終了後、帰路についていると、若い男性の方から「あの、とに~さんですよね? トークイベントに実は参加していました!」と声を掛けられました。なんでも、僕のPodcastや出演番組を聴いてくださっているとのこと。そして、おもむろにカバンから僕の著書を取り出し、「サインしてもらえませんか?」と言ってもらえました。アートテラーを長いことやっていますが、初めて芸能人みたいな経験をしました。ありがたや。おそらく、その男性と思われる方が、その日のTwitterで「とに~さんと同じバスだったので、お声掛けしてサインして頂いた! 家宝にします!」と呟いていました。僕は彼のこのツイートを家宝にします!
さて、すっかり秋めいてきましたね。秋になると、無性に京都に行きたくなるものです(僕だけですかね?)。寺社仏閣巡りや嵐山で紅葉狩りもいいですが、今年の京都は特に展覧会が熱い! いろいろオススメはありますが、今回はそのなかでもとりわけ見逃せない2つの展覧会を紹介いたします。
おいでやすウォーホル
東京府美術館(現・東京都美術館)に次いで、日本で2番目に古い公立美術館、京都市美術館。2017年より大規模な改修工事が行われ、2020年に名前も新たに、京都市京セラ美術館としてリニューアルオープンしました。その秋に満を持して開催される予定だった展覧会が『アンディ・ウォーホル・キョウト』。コロナのせいで延期を余儀なくされてしまいましたが、今年2022年についに開幕をしました!
出展作品は、約200点。ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館より、ポップ・アートを代表する芸術家ウォーホルの珠玉の作品の数々が来日しています。しかも、そのうちの半数、100点近くが日本初公開。それらのなかには門外不出とされる《3つのマリリン》や、ウォーホル晩年の大作である約3×10mの《最後の晩餐》も含まれています。
もちろんウォーホルの代表作ともいうべき、キャンベル・スープ缶や花をモチーフにした作品も出展されていますよ。また、展覧会では、ウォーホルと京都の意外な関係も紹介。1956年、当時アラサーだったウォーホルは人生初の海外旅行として、世界一周旅行をしています。その際に日本には2週間ほど滞在。もっとも多く過ごしたのが、京都だったのです。会場ではその旅行に関する資料の数々も展示。ウォーホルが京都で描いた貴重なスケッチも展示されていました。
ちなみに『アンディ・ウォーホル・キョウト』と展覧会名にあるだけに、この展覧会は国内を巡回しません! アンディ・ウォーホル先生の日本での最新個展が観れるのは、キョウトだけ。
『アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO』
会期/2022年9月17日(土)~2023年2月12日(日)
会場/京都市京セラ美術館(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124)
https://www.andywarholkyoto.jp/
シン・日本美術展
京都市左京区岡崎にある細見美術館。琳派や伊藤若冲の絵画をはじめとする約1,000点にも及ぶ日本美術コレクションで知られる私立美術館です。
そんな細見美術館で今開催されているのが、『響きあうジャパニーズアート―琳派・若冲 × 鉄腕アトム・初音ミク・リラックマ―』という展覧会。琳派や伊藤若冲の作品と、手塚治虫作品や初音ミク、リラックマといった日本が世界に誇るポップカルチャーの人気キャラクターたちが時代を超えたコラボレーションを果たす新感覚の日本美術展です。
ちなみに、これらの作品は、パソコン上でちゃちゃっと合成して作成されたものではありません。なんとすべて、友禅絵師として50年以上の経歴を誇る大ベテラン・平尾務さんの手によって、日本画の技法で描かれたものなのです。初音ミクやリラックマといったキャラクターもちろんのこと、組み合わせられている琳派や若冲の作品も手描きで再現されています。会場では、『シン・日本画』とも言うべきこれらの驚異的な作品と、元ネタとなった細見美術館コレクションの日本画を合わせて展示。古今の芸術家が奇跡の競演を果たしています。
ちなみに、この展覧会は細見美術館よりも先に、2021年11月から2022年1月にかけてドイツのミュンヘン五大陸博物館で開催され、大好評を博したそう。全独が驚いた…と言っても過言ではない展覧会。こちらも国内巡回の予定は今のところ無いそうです。お見逃しなく!
『響きあうジャパニーズアート―琳派・若冲 × 鉄腕アトム・初音ミク・リラックマ―』
会期/2022年9月6日(火)〜12月4日(日)
会場/細見美術館(京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6-3)
https://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex078/index.html
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