【知って驚き!アートの豆知識】《最後の晩餐》にまつわるエトセトラ

こんばんは、アートテラーのとに~です。
“美術界のストーリーテラー”として「アートテラー」という肩書きを名乗っている僕。これまでにも「アートテーラー」や「アートテナー」などと間違えられることはちょくちょくあったのですが、つい先日、10年以上の付き合いがある美術館から届いたメールを開いたところ、宛名が「アートテラピー・とに~」となっていました。
セラピー? のりピー? いったいどういう間違い方なんだ?!・・・と思ったものの、そのバカっぽい響きに少しだけ自粛疲れが軽くなるものがありました。

さてさて、本日は久しぶりに読者の皆さまからの質問・リクエストにお答えしたいと思います(送ってくださった皆さま、本当にありがとうございます!)。
今回は、ペンネーム・まみりんさんからいただいた「《最後の晩餐》にまつわる物語がききたいです」というリクエストを取り上げます。

最後の晩餐ってどんな絵?

宗教画の題材としてよく取り上げられる“最後の晩餐”。イエス・キリストが十字架にかけられるその前夜に、12人の弟子たちと共に行った食事会の様子が描かれています。

おそらく会の初めは和気あいあいとした雰囲気だったのでしょうが、イエスのある予言でムードが一転。弟子たちに向かって「この中にひとり、裏切り者がいる」と言い放ったのです。『カイジ』の世界であれば、間違いなく“ざわ・・・ざわ・・・”という擬音が登場するであろう緊迫のシーンですね。
ちなみに、その裏切り者とはユダ。銀貨30枚でイエスを売ったと言われています。“最後の晩餐”を題材にした絵は、ユダをわかりやすく描くのが鉄則。たいてい銀貨が入った袋をこれ見よがしに持っています。もしくは、裏切りの象徴の色であったという黄色い服を着ています。

また、サイゼリヤによく飾られているドメニコ・ギルランダイオの《最後の晩餐》では、ユダだけがキリストや他の11人の弟子たちとは反対の席に座らされています。まさにぼっち扱い。やはり人を裏切らないに越したことはないですね。


レオナルド・ダ・ヴィンチによる《最後の晩餐》

《最後の晩餐》のなかで最も有名なものといえば、やはりレオナルド・ダ・ヴィンチ作の《最後の晩餐》でしょう。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》

こちらはミラノにあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂に描かれたもので、その大きさは縦約4m×横約9m、現存する最も大きなレオナルド作品です。その一番の特徴は、ぱっと見では誰がユダなのかが分からないこと。ほかの画家による《最後の晩餐》と比べて、謎解きの難易度が高いのです。
ちなみに正解は、左から5番目にいる青い服の人物。よく見ると、右手に銀貨が入った袋を握り締めています。

今でこそ世界遺産にも登録されている世界的な名画ですが、実は意外にも、大切に保護されるようになったのは最近のこと。この《最後の晩餐》は、完成から500年近く、それはそれは劣悪な状況を耐え抜いてきたのです。
そもそも描かれた場所が食堂なので、食べ物の湯気や湿気によりじわじわとダメージを受けている状態。そこへ、17世紀のナポレオンの時代になると、食堂として使用されていた場所が馬小屋になり、動物の呼気や排泄物によるダメージを受けました。そのうえ、兵士たちがこの絵に向かって石を投げていたという記録もあるようです。
そして第二次世界大戦では、空爆によって食堂が破壊されます。しかし、奇跡的に《最後の晩餐》のある壁は残りましたが、しばらくは食堂に屋根が無い状態が続きました。
・・・と、さまざまな災難に見舞われ瀕死状態だった《最後の晩餐》ですが、1977年より大規模な修復作業がスタート! 20年以上かけて、ようやく現在の姿を取り戻すこととなったのです。


《最後の晩餐》を観に行きたい!

今すぐイタリアにこの絵を観に行くことは叶いませんが(コロナウイルスが終息したら、ぜひ一度は実物を観たいものです!)、国内なら徳島にある大塚国際美術館(こちらも現在臨時休業中ですが)で目にすることができます。

2018年のNHK紅白歌合戦で米津玄師さんが『Lemon』を歌った場所としても有名な大塚国際美術館。世界各国の名画約1000点の精巧な陶板名画を展示する美術館です。
「え、ホンモノじゃないじゃん・・・」と思った方もいらっしゃるでしょうが、こちらの陶板画は色も大きさも完璧に再現されています。

〈左〉修復前、〈右〉修復後

さらに、修復後の現在の《最後の晩餐》だけでなく、その向かい側に修復前の《最後の晩餐》を再現した陶板画も展示されています。修復後と修復前を同時に楽しめるのは、間違いなく世界中でここだけです。

ちなみに《最後の晩餐》といえば、今年1月に代官山ヒルサイドフォーラムで開催されていた“ダ・ヴィンチ没後500年 「夢の実現」展”で、最新の研究や技術を駆使して復元された《最後の晩餐》が紹介されていました。
まず驚きだったのは、キリストと弟子たちの服装のカラフルさ。笑点メンバーの衣装くらいカラフルです。そしてそれ以上に驚かされたのが、テーブルの上の状態。まさかパンがクロスの上に直置きだったとは! しかもワイングラスでなく、タンブラーだったとは!!
この展覧会は、今年の夏に東京富士美術館で開催される予定ですよ。


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美術の魅力をわかりやすく、面白く伝える、世界でただひとりの”アートテラー”。よしもと芸人時代に培った話力と笑いのセンスで、アートを語ります。日本を代表する数々の美術館で、公式トークガイドを担当。著書『東京のレトロ美術館』(株式会社エクスナレッジ)『ようこそ! 西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社)が好評発売中。
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