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TIMELESSPERSON

2026.04.06

傷つきながら、言葉にしてきた|いつまで自分でせいいっぱい?【佐津川愛美】

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、俳優 佐津川愛美さんが綴るリアルな日常。【連載「いつまで自分でせいいっぱい?」】

一人では決して起こらない出来事

どれだけの言葉に傷ついてきただろうか。

何気なく投げられた一言が、深く刺さってしまうことがある。

相手はきっと覚えていないような言葉でも、こちらにはずっと残り続ける。

よく、「言葉じゃなくて行動がすべてだ」と言われる。

それはきっと間違っていないのだと思う。

でもそれは、信頼関係ができあがっているときにしか通用しない言葉だとも思う。

 

関係がまだ浅いとき、あるいは不安の中にいるとき、人は言葉を頼りにする。

その言葉が優しければ救われるし、曖昧だったり冷たかったりすれば、それだけで心が揺れてしまう。

どれだけの言葉に傷ついてきただろうか。

そして同じくらい、どれだけの「言葉のなさ」に傷ついてきただろう。

返ってこない返事や、説明されない沈黙。

それはときに、どんな強い言葉よりも残酷に感じる。

でもふと立ち止まると、それは相手だけの問題ではないのだと思う。

傷つけられた回数は、自分自身が自分を傷つけてきた回数でもある。

期待しすぎてしまったり、わかってほしいと願いすぎたり、言葉にされないものを勝手に解釈して、勝手に傷ついてしまったり。

誰かのせいにしたくなる瞬間もあるけれど、その裏側には、いつも自分の心がある。

だからなのか、仕事の関係は少し楽に感じることがある。役割があって、責任があって、目的がある。

そこにはある種の距離とルールがあるから、余計な期待を持たずにいられるのかもしれない。

でも不思議なことに、そういう場所でこそ、強い絆が生まれることもある。

同じ方向を見て、一つのものをつくりあげる中で、言葉を超えた信頼が積み重なっていく。

人と関わって生きていくことは、正直、疲れる。

どうしても理解できないことの連続で、わからないことだらけで、傷つきすぎたあの瞬間から、私は何年も、誰かと深く関わるのを避けてきた人間だ。

それでも、人と関わることの中には、信じられないくらいの感動がある。それに薄々気づいていた。

たった一言に救われたり、何気ない優しさに心がほどけたり、誰かと同じ景色を見て「いいね」と言い合える瞬間があったり。
一人では決して起こらない出来事が、そこにはある。

これまで私を傷つけてきた言葉や態度や行動は、確かに痛みとして残っている。

でも同時に、それらは私の中で形を変え、言葉として外に出ていった。

書くたびに、少しずつ整理されて、少しずつ受け取れるようになっていった。そしてその文章が、誰かの役に立つことがある。だから、そうやって、いくつもの感情を重ねながら、ここまでこれたのだと思う。

もちろん、私も誰かを傷つけてきたはずだ。

どれだけ気をつけていても、あるいは気を抜いてしまったときにも、意図しないところで誰かに傷をつけてしまうことがある。稀にあえて傷をつけたくなってしまう時もあるから恐ろしい。

それはとても怖いことだし、もしかしたら取り返しがつかないこともある。

だからこそ、人と関わることには、いつも緊張が伴う。

それでもやっぱり、一人で家にいたら、何も起こらない。

心が揺れることも少ない代わりに、大きく動くこともない。

人と関わり、人と重なり、人と積み上げていく。

仕事でも、プライベートでも、どんな形でもいい。

その中で生まれる喜びも、悲しみも、戸惑いも、全部。

ひとつひとつは小さくても、振り返ると確かな重さになっている。

きっとそういうものを抱えながら、生きていくのだと思う。

傷つくことも、傷つけてしまうことも、避けきることはできない。

それでも、誰かと出会い、関わり続けることを選びながら、私はきっとこれからも、言葉を紡いでいく。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:いつまで自分でせいいっぱい?
佐津川愛美

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