2023年4月から6ヵ国を回るワールドツアーを開催中のBTSのメンバー・SUGA。韓国では発売初日にミリオンを達成したAgust D(SUGA)のソロアルバム“D-DAY”を引っ提げ、6月2日〜4日の3日間、神奈川ぴあアリーナMMで公演。BTSが日本デビュー9周年を迎えた6月4日――日本最終公演の様子をレポート。
ステージを巧みに使い、圧倒的なカリスマオーラと存在感で魅了
オープニング映像の後、ダンサーにかかげられて登場したSUGA。日本での公演は3年ぶりとのことで、登場すると会場は悲鳴にも似た大歓声。会場に集まったARMY(※BTSファンの総称)は、久しぶりの再会に思い思いの気持ちを抱えていたよう。
ステージは装飾などほとんどなしのメインモニターのみ。シンプルなセット上をビートにのりながら縦横無尽に動き回るSUGAの姿は、観る者をあっという間に独自の世界観に引き込む。
1曲目、『D-DAY』のタイトル曲でもある「Haegeum」が始まると、大量のスモークと激しいレーザーの光の中、SUGAがハンドマイク1本でパフォーマンス。「Agust D」のイントロでは「準備はいいですか?」と投げかけ観客のレスポンスに笑顔でグッドポーズ。
挨拶では「こんばんは。SUGAで〜す。皆さんに会えてうれしいです。日本での公演はすごく楽しみでした。もう今日が最後の公演ですね、寂しいです。BTSのSUGAとしては初めてお見せするステージをたくさん準備しました。ではいってみましょう」と日本語でトーク。歓声に応えるようなやさしい彼の眼差しに、これからのパフォーマンスへの期待が高まったオープニング。
会場の雰囲気を一言で変えてしまうムードづくりの天才
次セクションでは、ギターを抱えるSUGA。そのギターにはBTSメンバーからの寄せ書きがびっしりと書かれ、そのひとつひとつを拾うようにカメラが寄りで接近。モニターに映し出されるたびに、観客からは歓声が。
オープニングの高速ラップや特殊効果を駆使した演出のエネルギッシュなシーンとは一変、心地良い歌声とともにギターをかき鳴らし、一気にムーディに。弾き語りで歌う「Trivia轉 :Seesaw」、リビングを模したようなステージのソファに腰掛け、カメラを内蔵したブラウン管テレビに向かって歌う「SDL」。韓国の歌姫「IU」とのコラボ曲「People Pt.2」も披露し、IUのパートを観客が大合唱。会場を愛おしそうに見渡す表情が印象的だった。
メロウなグルーヴに浸っているとSUGAが「では、雰囲気を変えてみましょうか?」と一言。スクラッチ音が鳴り「Moonlight」、会場中が飛び跳ねた「Burn It」がスタート。同じセクション内でもムードをガラッと変えられるのはSUGAの揺るぎないパフォーマンス力とステージを作り込みすぎない自由度の高さゆえだろう。
ライヴ中に繰り出されるSUGAの多面性
映像を挟み再登場したSUGAは真っ白な衣装に身を包んでいた。ダンサーを引き連れて歌い踊る「Interlude:Shadow」から「Cypher Pt.3: Killer」、「UGH!」と続くラップブロック。水をかぶったりヘドバンをしたり、音を全身で感じ取るバイタリティーに見入ってしまう。BTSのラップラインの特別メドレーが続き、このセクション最後の曲は、BTSのメンバー・J-HOPEとのコラボ曲「HUH?!」。
このラップブロックを駆け抜けたSUGAは「メンバーがいないと寂しいですね。でも皆さんが一緒に歌ってくれてうれしい」とコメント。「ARMYしか勝たん!」と言ったのち、微妙な雰囲気を感じとったのか「なんか違いましたかね…?」と照れ笑いする可愛らしい一面ものぞかせた。
ラストブロックでは「Life Goes On」をピアノの弾き語りで、坂本龍一さんとのコラボ曲「Snooze」をスタンドマイクで披露するなどエンターテインメントに富んだステージを届けた。
「とても幸せな時間でした。あっという間の3日間でした。明日も会いたいですね」と語りかけ、本編ラストは「AMYGDALA」。しっとりと、しかし力強く歌い上げた後に背後に倒れ込み、オープニング同様ダンサーにかかげられてステージを去った。
SUGAとARMYの強い絆を感じる場面も
「D-DAY」でスタートしたアンコールではアリーナを歩き、ファンとハイタッチする場面も。
最後のコメントでは「日本での公演はいつも楽しくて幸せです。素晴らしい思い出を作ってくださりありがとうございます。僕の公演やBTSの公演だけでなく、どこにいっても今日のように遊んでください。本当に残念ですが、これが最後のステージになります。次回僕が日本に来るときは7人で。本当に楽しかったです。ありがとうございました。皆さんが応援してくれたことを忘れません。また遊びましょう」と締めくくった。
終始鳴り止まないユンギ(SUGAの本名)コールと拍手に、SUGAとARMYの確固たる絆をみたよう。ファンが持つボードが次々と映し出されるシーンでは「日本に来てくれてありがとう」「日本デビュー9周年おめでとう」「7人が揃うのを待っています」などのメッセージが並び、あたたかい空気に包まれていた。「次は7人で」という言葉にこれからの活力を見出すファンも多いだろう。柔軟性と強さを兼ね備えるSUGAの今後の快進撃にも注目したい。