最近よく耳にするワード“ガールクラッシュ”。なぜガールクラッシュな女性は多くの人の心を掴むのか。その理由とともに見えてきたのは、目指すべき新時代における女性像でした。このカルチャーに詳しいライターの轟友貴さんと東山サリーさん、本企画担当編集Aが語り尽くします!
“ありのままの自分で強く訴える”ガールクラッシュの始まり
ガールクラッシュ
同性から見ても惚れてしまうような魅力的な女性。カッコ良くクールなイメージが強く、韓国の音楽シーンから生まれたといわれている。現在では、アーティストのコンセプトのひとつとして使われることが多い。
編集A ここ最近の韓国ブームもあり、私の周りの友人たちがこぞって“ガールクラッシュ”をコンセプトにしているグループの沼に落ちています。でもみんな“ガールクラッシュ”を正確には理解していない様子。
東山さん 今韓国でも人気のグループは、ガールクラッシュをイメージさせるグループが大半かも。でも確かにイメージはできるけど、ひと言で表すのは難しい…。
編集A ざっくりとひと言で表すなら“カッコいい系女子”のアーティストと思っていました。そもそもは韓国発の言葉らしいのですが…。
東山さん 私がはっきりと認知したのは2NE1ですね。あの、人を惹きつけるパワーは唯一無二で衝撃だった。“可愛い”って形容されやすいガールズグループのなかで、2NEIは「カッコいい」「クール」「セクシー」という言葉がぴったり! ガールクラッシュが日本に認知されるきっかけになったと思います。
編集A 私もやっぱり入り口は2NE1です! 当時の日本のガールズグループにはない、あのエネルギッシュなパワーに一気に虜になりました。
轟さん ガールクラッシュのアイコン的存在ですよね。私はメンバーのCLのオーラというか、常に余裕がある佇まいに憧れました。ビジュアルだけではなく、マインドもカッコいいのがガールクラッシュなんだと思います。
編集A (深く頷く)確かに。それは歌詞にも表れていますよね。彼女たちが発信しているメッセージって、いつもポジティブで勇気をくれる言葉ばかり。
東山さん 彼女たちはありのままの自分で、伝えたいメッセージを強く発信していた。その姿が多くの人を惹きつけたんじゃないかな。
轟さん 作り込むことなく媚びていない、その内からにじみ出る強さに色気を感じたほど。
編集A ガールクラッシュの根底にあるのは、やっぱり“強くてカッコいい”なんですね。
原点はここに。ガールクラッシュヒストリー
韓国で生まれたガールクラッシュ。その起源はいったいいつ…? 原点には今も変わらない魅力の理由が隠されていました。
2NE1(トゥエニィワン)
2009年に同じ事務所の先輩であるBIGBANGとのコラボレーションソング「LOLLIPOP」で登場した2NE1。尖った衣装で激しく踊る、個性的な4人の女の子たちに韓国のみならず日本も魅了された。ミュージックビデオではバットを振り回したりスポーツカーを乗ったりと、とにかくパワフル。これまでのガールズグループのイメージとはガラリと違う、“強い女”を全面に打ち出し、ガールクラッシュの基盤を作った。
MAMAMOO(ママム)
2014年にデビューした、抜群の歌唱力を持つ実力派グループ。2019年に発表した「HIP」は、頭に残るサウンドとユニークで強気な歌詞で大ヒット。高いアーティスト性に反して、バラエティ番組などで見せる気取らない姿も魅力のひとつ。メンバーのファサから発信された、外見に囚われない自己肯定を後押しするメッセージも話題に。
UNPRETTY RAP STAR(アンプリティ・ラップスター)
韓国にヒップホップブームを起こした、大人気ヒップホップサバイバルプログラム。男性ラッパーが活躍していた韓国の音楽シーンにおいて、女性ラッパーの確固たる地位を確立した。エッジの効いたファッションで、男勝りのパワフルなラップを繰り出す姿を“ガールクラッシュ”と表し、この言葉が広まった、という説がある。
BLACKPINK(ブラックピンク)
2NE1の後輩にあたる4人組グループ。彼女たちの人気は世界規模で拡大中。2019年にはアメリカ最大の音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」に出演、今年9月にはYouTubeアーティストチャンネル登録者数世界1位に。ソロ活動も積極的に行っていて、ラッパーLISAの初ソロシングル「LALISA」のMVは3億回再生を達成し、この記録は韓国の女性ソロアーティスト最短。
ITZY(イッチ)
TWICEを生み出したJYPエンターテインメント発の5人組。エネルギッシュでキレのあるダンスが持ち味。“私は私”、“そのままで完璧”など、ITZYが届ける女性像はガールクラッシュマインドそのもの。12月22日にはベストアルバム『IT’z ITZY』で待望の日本デビューが決定。彼女たちの快進撃は止まらない!
aespa(エスパ)
東方神起、少女時代が所属するSMエンターテインメントから誕生。韓国、日本、中国の多国籍なメンバー構成や、仮想現実にアバターを持つなど、新時代の可能性を感じさせるグループ。今年の5月に発表したデジタルシングル「Next Level」が世界で大ヒット! デビューわずか3ヵ月でジバンシィのアンバサダーに抜擢されるなど、ファッションアイコンとしても注目を集めている。
アイドルに収まらないアーティスト性に“女が惚れる”
東山さん 最近のグループを見ていると感じるのは、もはやアイドルという枠で正しいのかっていうこと。
編集A 私もそれは思っていました。ガールクラッシュのアイドルにハマる大人女子に話を聞くと、「ビジュアルもそうだけどアーティストとしての魅力がスゴイ!」という声が大多数。もはや年下の彼女たちを憧れの対象として見ていて、アイドルとは思っていないのかも。
轟さん それは日本と韓国のアイドル文化の違いが大きいですね。成長の過程をも魅力と捉える日本に対し、韓国アイドルたちは厳しいレッスンを経て世に出るので、デビューしたときからかなりの実力派。いちアーティストとして完成しているんです。
東山さん 日本のアイドルを基準に見るとびっくりするし、とても新鮮に感じると思います。あと、あまり日本にはガールクラッシュを体現するグループがいないので、よりハマりやすいのかもしれません。
編集A しかもガールクラッシュをコンセプトにしているグループって、訴えてくる歌詞もかなり強気ですよね。「私って素敵でしょ?」「私の道は私が決める!」みたいなメッセージは聴いていて気持ちがいいし、素直に憧れてしまう。そして私も頑張ろう!って思わせてくれる。
東山さん まさに! 恋愛も最後には「私の魅力がわからないならいらない!」的な感じに振り切っている。男性主導になっていない恋愛観は、現代女性が持っておきたい強さのひとつですよね。
轟さん それを圧倒的な歌唱力を持つ彼女たちが発信することにより、さらに心に響くんでしょうね。
編集A こんなに素敵な人たちが言っているんだから、もう間違いないだろう、みたいな(笑)。まったく媚びていないところも好感度高いです。なのに素の顔は可愛げがあって…あぁ、うらやましい!
東山さん “女が惚れる女”のど真ん中って感じ!
轟さん そうですね。女性から見ても素直にカッコいい!
轟友貴
ライター。語学能力を活かし、多くの韓国俳優、アーティストのインタビューを担当。韓国コスメにも詳しく、Webで連載記事を担当している。マルチな知識でさまざまな雑誌で活動中。
東山サリー
韓国在住のライター&コーディネーター。韓国のおしゃれなカフェを紹介したインスタグラムで人気を獲得。最新著書は韓国の“可愛い”を詰め込んだ『KOREA SENSE』(ワニブックス)。
編集A
本企画担当。学生時代から韓国文化に興味を持ち、音楽をメインに日々情報収集中。過去には年間15回渡韓したことも。最近は苦手としている語学勉強を検討している。