女優、モデル、映画監督、フォトグラファーとして多彩な才能を発揮する池田エライザさん。写真好きである彼女が、友人でモデルの福士リナさんを撮り下ろし、写真への愛を語ってくれました。
池田エライザさんがモデルとして選んだのは、友人の福士リナさん。
「リナちゃんは、以前にプライベートで一回撮らせてもらったことがあるのですが、今回『誰を撮りたいか?』と考えた際、記事に載ったときにパワーがあり、人となりがわかる人がいいなと思ったんです。リナはいつもフレッシュで、性格も明るくエネルギーを感じる人だから」
撮影を行ったのは、6月の週末。梅雨空のなか、あえてスタジオではなく外に出て、東京の街に佇む福士リナさんを写し出した。立ち位置の指示はあったが、池田さんからポージングや表情のリクエストはなし。カメラの前に立つ、ありのままの福士さんとレンズ越しに向き合った。
私たちの世代にとってはじめてのカメラはガラケー
池田さんは昨年公開の『夏、至るころ』では、映画監督に初挑戦するなど、女優をはじめ、モデル、歌手、エッセイストなど多彩な才能を発揮。フォトグラファーとして、カメラを持って仕事する機会も増え、撮られる側ではなく、撮る側になるのは“裏方気質”を公言する彼女にとって、とても自然な流れであった。
「私たちの世代がはじめてカメラに触れるきっかけはスマホだったんです。もちろんデジカメとか“写ルンです”はあったけれども、私たちにとってはガラケーが一番はじめのカメラでした。高校生になって、“写ルンです”を周りは誰も使っていないときに、たまたま近所に現像所があったので“写ルンです”でインスタを更新していました。こういう自然な流れで高校生のころからフィルムを使い始めて、機械もいろいろ好きなので凝り始めて。お給料もちょっとずつ増えてきたので、カメラに充ててという感じでした。今日みたいに、最近はお仕事として写真を撮ることも増えました。自分が前に出るよりも、誰かを撮ったり、誰かにフォーカスを当てたりするほうが私の性格には合っているから、そういう意味でもカメラを持って仕事をすることに違和感はありませんでした。意を決してカメラを持つという感じではなかったのかなと」
SNSがまだ盛んでいなかったときから、池田さんは自撮り写真をTwitterに投稿。発信するセルフィーポーズは、女子中高生の間でブームとなり社会現象にもなった。彼女のキャリアを築くきっかけを写真が生み出したと言っても過言ではない。
「自撮りは完全に仕事なんです(笑)。『(SNSを)そろそろ更新しなさい』って、怒られながらやってきました。写真を通して自分を伝えなきゃと思ったことはなく、でも手元にはいい写真がいっぱいあった。現在のインスタの写真のほとんどは、マネージャーさんが撮ってくださったオフショットなんです。ずっと一緒にいるマネージャーさんが愛情を持って撮ってくださった写真。また撮影現場でも、プロのフォトグラファーさんたちがふとした瞬間の私を捉えてくださったり――そういう連鎖で、今SNSにあげられる写真があるという感覚です。私自身は全然、頑張ってはいないです。また、私はすごく私生活に重きを置いているから、いい写真がたくさんあるのかなと思います。私にとって写真はとても身近なものなんです」
話すよりも写真を撮るほうがその人をより深く理解できる
普段は撮られる側である彼女が、撮る側になったとき、どんなところへ気持ちを向けているのだろうか。
「話すよりも写真を撮るほうが、その人のことをより深く理解できるんです。レンズ越しに、その人の意思表示みたいなものがひしひしと伝わってきて。『このアングルはちょっと嫌なのかな』『こっちを強調してほしいのかな』とか。またヘアメイクさんの意図もレンズ越しだと、よりクリアにわかります。被写体をはじめ、そこに携わるスタッフみんなのクリエイションをなるべく尊重したいと思っています。作品としての自分の個性は二の次で、『どうやったらモデルのパーソナルな部分が伝わるかな?』とかを考えて…結局、いい写真であれば、目を止めていただくことができるので。今回の撮影はコロナ禍だからこそ、今のリナの気持ちを大切にしたかった。なかなかこんなに世の中が暗くなっているときはないから、『そんなとき、彼女はどんなふうに生きているんだろう?』という、その佇まいを撮ることにフォーカスしたんです。この仕事のお話をいただいたときに、一瞬『フィルターを使って…』とか思ったけれど、私らしくないなと思ったし、いろんなクリエイターの方がいらっしゃるだろうから、私は正面から彼女に向き合うのがいいのかなと」
“最大級にかわいい瞬間”を写真に収めるという幸せ
写真を撮っているときの池田さんはとても美しかった。彼女らしい柔らかなリズムでモデルに話しかけ、静かなシャッター音が心地よく現場に響いた。自身の目をレンズと一体化し、まさにレンズ越しに被写体と対話をする。最後に、池田さんにとっての写真の魅力を聞いてみた。
「今、写真はデジタルなので、データを失わない限り一生残る――そこが大きな魅力だと思います。その人のその瞬間は、“そのとき”にしかないものだから、その一瞬に関われているっていうことに喜びを感じます。たとえ不可能であったとしても、被写体の“最大級にかわいい瞬間”を写真に収めるように頑張れるのは、すごく幸せなこと。また今回のように、仕事現場で友達と会えて、みんなでワイワイ言いながら一緒に何かを生み出すことが大好きなんです。私は表舞台に立ったときに『女優っぽくしよう』とか思えなくて、本当に芸能人に向いていない性格なので(笑)、みんなでてんやわんややっている、その過程が一番好き。だから仕事を続けられるのだと思います。また、女優という仕事を通して第一線で活躍されるプロフェッショナルな方々とお仕事をするたびに、発言を含めて、その人たちの一つひとつを自分でも無自覚に吸収しているんだと思います。映像や写真の仕事において、そういう方々に刺激を受ける機会がたくさんありますが、自分で写真を撮るときは影響を受けないようにしています。『この人にインスパイアされた』と思うと、そこに近づこうと頑張っちゃうので(笑)。その人の真似をしても、そっくりにはならないと自分でもわかっているので、結局、“自分っぽくなる”って信じるほうがいい。でも本当にみんなそれぞれ参考にすべき点があり、それぞれの感性だなって思います」
池田エライザ(いけだえらいざ)
1996年4月16日生まれ、福岡県出身。2009年『ニコラモデル・オーディション』でグランプリを受賞し、モデルとして活動をスタート。’11年に映画『高校デビュー』で女優としてデビュー。主な出演作に『SUNNY 強い気持ち・強い愛』『億男』(ともに’18年)、『貞子』(’19年)、『映画 賭ケグルイ 絶対絶命ロシアンルーレット』(’21年)など。