ドッグラバーはそれこそ世界中にいて、かけがえのないパートナーとして愛犬と仲睦まじく暮らしています。パリの街にもそんな幸せそうな、飼い主&犬のカップルやファミリーがたくさん。その素敵な関係を、ちょこっと覗き見。
今回はパリ郊外、フォンテーヌブローからお届けします。
余計なお世話だけど言ってしまうとね・・・
ボンジュール! 暑いわね、暑すぎるわね。
暑いと顔に出てしまうタイプです、ワタシ。お見苦しくてごめんなさい。
さっさと自己紹介を済ませておくと、名はペルーシュ(ぬいぐるみって意味なのよ)。9歳だから、皆さん(人間)のものさしで計算すると50歳ちょっとね。あら、急に態度を変えるのね、それやめて。
言わなくてもわかると思うけど、パグって犬種よ、ご存じでしょう? 量ったことはないけど、太ってます。あら、急に同情的な目で見るの、やめて。太ってる自分が好きなんだから。
コドモのころから「可愛い」と言われ続けて・・・
今日は特別に、コドモのころの写真を見せてあげるわ。もう天国に行ってしまったけど、パパとママも写ってる。今はよその家で暮らしている兄妹たちも。懐かしいわ。
ねえ、家族みんなそっくりでしょう?
私の飼い主のエロイーズが写真を撮って、残しておいてくれたの。
コドモのときからずっと、「なんて可愛いんでしょう!」ってみんなから言われてきて、ずっと自分でも「ワタシは可愛い」と思って生きてきたわ。
——そうね、人間的に言えば、20歳ぐらいまではそう信じてた。
でも、あるとき、知ったの。ワタシへの「可愛い」という賛辞の前には、言わずもがなの“ひと言”が隠されていたことを。
あるときは、散歩途中で会ったキッズがうれしそうに声を掛けてきた。
「わ~、そこのブサイクちゃん、ブサイクで可愛すぎ♡」
またあるときは、家に遊びに来た人がワタシの頭を撫でながら言ったわ。
「おへちゃな顔がたまらないわ! なんて可愛いんでしょう!」
ワタシの気持ちは、複雑だった。ブサイクだから可愛いだなんて、うれしくなくない?
でも、パグはみんな、おへちゃな顔なの。それは変えられないし、じゃあパグじゃなくて、プードルにでも生まれてきたかったの? ううん、ワタシはパグがいいの。パグだから、ごはんのときも低い鼻が邪魔にならないし、丸々としていて抱き心地がいいって言われるし、太めボディのわりに手足が細いのもおしゃれで気に入ってるから。
それからは、ワタシはワタシ
それからワタシは、ワタシについてのカン違いを改めたのよ。この顔でツンケンしていると、怖がられて、誰も近づいてきてくれない。黙っていたら誤解されるから、こっちから積極的に近づいていこうってね。
黙って座っていれば、周りがちやほやと寄ってきてくれるなんて、私の飼い主のエロイーズみたいに美人じゃないとムリ。
お友達のモミジにも、いつも自分から近づいていくの。もっと仲良くしたいからね。
あ、逃げた・・・。
モミジったら、ツレないの。ねえねえ、ガールズトークしましょうよ~。
モミジはデザイナーの島田順子さんちの柴犬よ。パリとここフォンテーヌブローを行ったり来たりしてるわ。
いつも眠そうで、邪魔しないでって顔されちゃうけど。大好きだから、追っかけ回しちゃう(笑)。
来ないでオーラを出しているから、気のないフリをしてそーっと少しずつ近づく作戦。
おっと、そろそろお庭でホームパーティーが始まるから、移動しましょうよ! ゲストが続々と到着よ。
順子さんは、パーティーの用意で朝から大忙しだったみたい。テーブルにはお花も飾られて、準備万端。
右の彼女が、ワタシの飼い主エロイーズ。美人さんでしょ。パリの国立装飾芸術学校で学んで、今はアーティストとして活躍しているの。ときどき、ワタシのことも描いてくれるのよ。
エロイーズが描いたデッサンをこっそり公開。お気に入りよ。
えっと、モミジは・・・いたいた!
ねえねえ、モミジ~、一緒にお散歩に行きましょうよ!
あ! また逃げた~
いいな、エロイーズは。イケメンたちが彼女の周りに集まってる。
でも彼女は美人なだけじゃなくて、とても優しくて、ワタシにも愛情をたっぷり注いでくれるの。つまり、エロイーズはワタシのことが大好き。
今日もエロイーズはワタシのことを男たちに語っているわ。
「ペルーシュは、とても情熱的で、勇気があって、人見知りもしないから、いつだってみんなから愛されちゃうのよ」
そうそう、そのとおり! だからみんな、ワタシのこと好きになっていいのよ!
エロイーズがワタシに優しい眼差しを向けながら、さらに語ってる。
「ペルーシュはね、ピザが大好物なのよ! ピザをあげると、ブウブウ言いながら食べるのが可愛いの」
ちょっ、それ余計な情報! 言わなくていいのに~(苦笑)。
最後はモミジも逃げることを諦めたのか(笑)、ワタシの相手をしてくれたわ。楽しい夏の午後。日が暮れてもう少し涼しくなったら、森のほうに出かけましょう。何か美味しいものが落ちているかもしれないわ。
誰だって、自分が“可愛い”って思いたいものだけど、他人にとって自分のどこが魅力的に映るのかを、よーく考えないとダメ。若いときは、自分のことを冷静に判断できないから、自分のことをカン違いしがちだけど。失敗しながらでも、“本当の自分”を見つけて勝負していかないと、どこにでもいるような面白みのない女になっちゃう。
ワタシはワタシが、世間でいうところの“可愛い”容姿ではないけれど、この顔が“可愛くないから”こそ愛されるってことに気付いた。そこから、ワタシは“愛嬌”を武器にしてモテる方法を身につけたわけよ。
でもワタシだってまだまだ、“自分の魅力”ってやつをもっと見つけようとしている途中なの。さあ、お互いに頑張りましょう。