ドッグラバーはそれこそ世界中にいて、かけがえのないパートナーとして愛犬と仲睦まじく暮らしています。パリの街にもそんな幸せそうな、飼い主&犬のカップルやファミリーがたくさん。その素敵な関係を、ちょこっと覗き見。
パリの蚤の市で・・・聞こえてきたつぶやき
ボンジュール。ワタシ、ギネスといいます。年齢は8歳。
人間でいうと、そうね、アラフィフっていうのかしら? 酸いも甘いも経験済みのマダム世代よ。なんてね、そんなたいしたもんじゃないけどさ、フフフッ。
ワタシの日課は蚤の市をパトロールすることなの。いろんな出店をハシゴして、顔なじみの店主たちに挨拶してまわるのよ。みんなワタシが立ち寄るのを待っていて、声をかけてきて、頭をなでたり、ちょっとした食べ物をくれるわけ。
ほら、ワタシって自分で言うのも何だけど、スタイルもいいじゃない? 顔も小さいし。ボーダーコリーとブラック&タンのミックスらしいのよ。めずらしいでしょ。どこに行っても、注目されちゃう(笑)。
あ・・・パトロールから戻ったワタシを待ち構えている・・・このオトコは・・・
いうなれば・・・ワタシの相棒というか・・・同居人かな。
ラブラドール・レトリバーで、ガストンって名前。年齢はだいたいワタシと同じ、あ、でもちょっとだけ上ね。
正直、ハンサムではないわね。悪くはないけど。
ちょっと今日は、ガストンのことを語らせてもらうわ。・・・だって、彼ったら、オトコの面倒なトコをぜんぶ持っているのよ。ワタシの苦労を聞いてほしいの。
その1 オンナを従わせようとする
ほら、よそ見するなよ、とか、そこ危ないぞ、とか。オトコって、あれこれと指図するのが好きよね。自分では、オンナを守ってあげているつもりなの。日本では、亭主関白っていうんでしょ? そういうの。
こっちはね、言うことに従っているフリをしてあ・げ・て・る、の。もちろん、心のなかでは、うるさいなぁってイライラしてるけど。言い争うのも面倒だし、時間と労力のムダだし。結局、オンナのほうが包容力あるからね、飲み込んであげてるのよ。そこ、たまには気付いてほしいわ。
その2 目立ちたがり屋
ワタシが座っていると、必ずワタシより前に陣取るのよ。自分の後ろ姿を見せたいのかしら。あと、通りを歩く街の人たちを、自分の方に惹きつけたいのかもね。でも残念。この蚤の市のアイドルは、ワタシだかから。
その3 ボスに媚びる
飼い主のマニュエルが現れたら、すかさず、これ。可愛がられようとしてるのか、点数稼ぎなのか、謎・・・。ううん、もしくは・・・単に、カラダは大人だけど、精神的には子供ってこと? いい歳して、甘えているのね。
その4 疲れているとノリが悪い
さっきはボスには全力でサービスしていたのに、いきなり、ワタシを冷たくあしらったりして。むしろオレは疲れているから、オマエが気を遣えって態度なのよ。なんて身勝手なのかしら。いつものことだけど。
その5 いきなり醜態をさらす
カッコつけていたかと思えば、お腹が空いたり、眠かったり、気にくわないことがあると、急にだらしなくなるの。見ていて恥ずかしいわ。これじゃあ、100年の恋も冷めるって。
ううん、ワタシがガストンに恋してたときがあったって意味じゃないのよ。彼がワタシに夢中だったんだから。なのに、長年一緒にいると、カッコ悪いところを平気で見せてくる。ほんと、残念だわ。
まだまだいろいろあって挙げたらキリがないから、このへんでやめておくわね。
困ったところだらけなのに、何で彼と一緒にいるんだろう?って、考えることがあるのだけど。——自分でも、これって理由が見つからなかったわ(笑)。
ただ、そうね・・・。ときどきガストンから見えないところに隠れてのんびりしていると、ワタシの姿を探してキョロキョロしていたり。ワタシが誰かと仲良くしていると、ちょっと寂しそうな顔をしたり。
なんだか、ワタシがいないと、このひと可哀そうって思っちゃうの。ワタシがいないと、威張ったり、カッコつけたりする相手もいないわけだし、だらしない姿見せて許してくれるひともいないだろうし。
だから、ワタシのためというより、彼のために一緒にいてあげてるの。オンナって、そういうところあるわよね。心が広くて、情に厚いから。
そんなこっちの優しさに気付いているのかいないのかわからないけど、たぶんわかっていないと思うけど、でも、もういいわ。だってそれが、オトコってやつなんでしょ?
ずっと一緒にいられる理由は、きっと、こうやって、お互いがまるで違うことを考えているからなのかもね。相手のことが何だかよくわからないから、なんだかつい気になってしまう・・・みたいなこと(笑)。オンナとオトコの関係って、そんなふうにはっきりわからないほうが、長続きするのかもしれないわよね。