日々気になる世の中の動きを、時に笑いと、またある時は真面目にお伝えするコラム「ま、一杯飲んでベッラ ヴィータよ」。舞台は南麻布の架空のバー「Bar D’Amore(バール ディアモーレ)」。ジョバンナ洋子ママの鋭くも優しいお叱りトークに、癒やされる人々がいるとかいないとか。第18夜は、昨今話題の地球の未来を考える女子がご来店。さて、今宵はどんなやりとりが繰り広げられることやら。
【第十八夜】サスティナビリティを考えてみたら・・・・・・
ボンジョルノ〜? ボナセ〜ラ? もうね、昼夜の感覚がおかしいのよ。ちょっと仕事でニューヨークに出かけてたんだけど、ヨーロッパの時差より数段カラダにくるわ。もうね、毎日、夕方から眠くて、眠くて。
「こんばんは〜。いいですか?」
あら、もう開店時間なの? 眠いから、塩対応かもしれないけど、それでいいならどうぞ。
「あ・・・・・・。バッドタイミングでしたね。私、今日はノンアルにしたいんで、モクテルで何かお願いします」
そういえば、ニューヨークでも結構あったわね。カクテル風のノンアルコールドリンクでしょ。要はジュースだけど。
「最近多いんですよ。やっぱりお酒を飲むと話がノリになって結論が出ないけれど、モクテルは雰囲気が華やかでジュースとは違う気分になれるので」
じゃ、やっぱりこの店だから、スパイスを使ってクセありのモクテルを作ってみようかしら。でも、なんだかまだ暑いから、私はまずキリッと冷えた白ワインをいただいて、目を冷ましてからね。
価値観の変化はあの事件から
今回のニューヨークはあの9.11から18年ぶりだったの。実は当時も仕事で出かけていて、あの事件のときの衝撃と空気感、今でも忘れられないわ。
「わ、ちょっと鳥肌立っちゃいました。そうなんですか・・・・・・」
もちろん直接の被害はなかったんだけど、現実の有り様を目の当たりにして、サバイブするにはまず自分が強くならなきゃ、最終的には自分しか頼れないとも感じたわ。
「遭遇しないに越したことはないけれど、ある意味、貴重な体験でしたね」
今年の9月11日もニューヨークにいて、夜空に伸びる追悼の2本のライトを眺めながら、ついこの20年弱、自分は何ができたのかしみじみを振り返っちゃったわ。
「あのときの事件の根底にある差別感情みたいなものは、この数年でようやくみんなの意識が変化してきた気がします」
そうね、ニューヨークではミネラルウォーターも紙パックがあったり、とにかくライフスタイルはヘルシーな方向になっているみたいだったわ。ま、ようやくこの地球の未来を考えるようになってきたのかもね。
今や、思想も売る時代
「洋服や食べ物を買うとき、できればちゃんとエシカルなことをやっているかどうか、少しは調べるようになりました」
わかるわ、まだまだ私も勉強不足。できることからやるべき、とは思うけれど、トレンドとしてサスティナビリティを捉えているみたいなのはどうなのかとも。
「わかります。ちょっと宗教チックになるのは、ですよね」
そう、今ってそういう意味で思想の時代だから、一歩間違って盲目的になりすぎるとお布施っぽくなる場合もあるわね。ニューヨークで某ロイヤルファミリーがブレーンになっている話題のブランドのポップアップストアに行ったみたの。
「あ、ネットのニュースで読んで、ちょっと興味を持ってました」
在庫を持たない=無駄を出さないために、そこでは商品は持ち帰れず、サンプルを試着するためだけの店っていう仕組み。それはいいんだけど、ボウブラウスが200ドル以上、現物を見るとクオリティに見合わない気がして、ちょっと言い方はきついけど、私は商売の匂いを感じたわね。
「なるほど。ホント上っ面の知識だけじゃ、ダメですね」
難しい問題よね。私もずっとサスティナビリティは、半端にやるもんじゃないと思ってるけど、それだと地球の問題を深く知るまで先に進まないわけで、環境大臣がおっしゃるように『楽しく、クールで、セクシーに』、ファッション的にちょっと軽めな調子でやる方が、ある意味浸透するのかもなんて、思うこの頃よ。
「今日はモクテルにしてよかったです。また環境問題を考えるきっかけになりました」
そう、良かったわ。でもね、あんまりストイックになってもね。たまにはお酒飲んで開放感を楽しむ時間も必要よ!
試されるのはしなやかな対応力
本当にこのところの意識の変化は目まぐるしいわよね。バーにきてノンアルって何よ。それにしても、ある意味、私たち世代はいい時代を生きてるわ。あの破天荒な時代も経験してるからこそ、そのままの価値観でもいけないこともわかるし、180度違う新しい時代を学んで楽しむこともできるから。この店も頭をしなやかにして需要に応えていかなきゃ。
【今宵の一杯】
ラ・カッライア ポッジョ カルヴェッリ オルヴィエート クラッシコ スペリオーレ
今回ご紹介する一本は、緑の多きウンブリア州オルビエートの南に位置するワイナリー、ラ・カッライアの白ワインです。地元でブドウ栽培を行っていたジアッレッティ家と、世界的に有名なワインメーカー、コッタレッラ家によって1988年に創業。エストリア時代からの伝統的な製法を継承しながら、革新的な手法を加え、ワイン造りを行っています。
所有するポッジョ カルヴェッリという畑で採れる柑橘系の果実味、フレッシュな酸、ミネラル豊かなグレケット品種を主体にプロカニコ種を使用。シャルドネ種を加えることで、特徴を生かしながらエレガントな味わいを添えています。バランスのとれた味わいで、お刺身などにもぴったり。
La Carraia – Orvieto Classico Superiore DOP Poggio Calvelli
ウンブリア州
グレケット50% プロカニコ25% シャルドネ15% ヴェルメンティーノ10%
750ml ¥1,900(参考小売価格)
フードライナー
078-858-2043