ドッグラバーはそれこそ世界中にいて、かけがえのないパートナーとして愛犬と仲睦まじく暮らしています。パリの街にもそんな幸せそうな、飼い主&犬のカップルやファミリーがたくさん。その素敵な関係を、ちょこっと覗き見。
素敵なカップルは見ていて気持ちいい
もう肌寒い日にはアウターが必要なパリです。夏のバカンスの想い出を反芻しつつ、はやくも来年のバカンスに思いを馳せて、仕事に勤しむパリジャン&パリジェンヌたち。こんな穏やかな秋の数日が、一年で一番好きだったりしますね。
と、気分よく、マレ地区を歩いていたら、どこからか女性の声が。
ジジ、ジジィ
ジジイと呼ばれるほど、歳はとっておりませんが・・・と、恐るおそる声の主の方向を見ると——
マダム ほらほら、ジジ、行きましょう。
・・・イヌの名前か(よかった・・・笑)。
確かに、ジイさん犬だな。(←失礼!)
——ジジさん、ジジさん!
いち度呼べば、わかるよ。耳が遠いわけじゃないんだからね。
――あ、すみません! このあたりにお住まいですか?
マルティニークから来とる。うちのマダムが、パリとマルティニークを行ったり来たりしているからね、ときどき一緒に来るんだよ。
――マルティニークといえば、カリブ海の島ですよね! 行ったり来たりだなんて、なんて優雅な生活!
・・・能天気なお方だね。飛行機に8時間も乗って移動するのは、結構しんどいんだよ。かといって留守番だと、施設に預けられるし。でもマダムとなるべく一緒にいたいから、こうして同行しておる。
――魅力的なマダムですもんね。お似合いのカップルですねぇ。(なぜかご機嫌取り)
そやね。小さいときはマダムからコドモ扱いされていたけど、途中から年下の恋人に昇格したんだ。で、今はようやく年齢的に追いついたかんじで、お互いにいたわり合っておる。
――まるで、一大ラブストーリーですね。
問題は、このあとワシのほうがマダムの歳を追い越して、どんどんジイさんになってしまうことだね。
――あの、ちなみに、今おいくつなんですか。
11年生きとるから・・・人間でいうと65~70歳ぐらいか。いずれにしろ、ワシがいなくなったあとに、マダムを支えてくれるオトコが現れることを願っているおるんだよ。マレ地区のカフェとかにいると、ワシと同い年ぐらいのムッシュがマダムに声かけてくるから、そのうちいい人が見つかる気もしとる。
——心が広いんですね。ジェラシーとかはないんですか?
はぁ~、そんな心の狭いことでどうする? 自分の欲ばかりかいて、大切な人の幸せを邪魔するなんて。ダメなオトコのすること!
―—はい、すみません。(なぜか、謝罪)
自分じぶんって、オレ様な男はダメ。そりゃみんな、本音は自分なんだよ。だけどね、恋人や家族の幸せがオレの幸せだ、ってことに決めて生きてるヤツでないとね。
――はい、頑張りたいです。(背筋ピン)
マダム お話が盛り上がっているところ、ごめんなさいね。ジジ、そろそろ行きましょうよ。お刺身かお寿司(ジジの好物)を、買わないとね。
ウィ、マダム。よろこんで!
――マダム、ムッシユ、ごきげんよう!
振り向きもせず、立ち去ったジジ。オヤジに軽く説教されたような、パリの午後でした。
それにしても、素敵な雰囲気のカップルは、見かけるだけでもほんわか幸せな気分が伝染しますね。ふたりのデュアルライフが、できるだけ長く続くといいなぁ。また、お会いしましょう!