ドッグラバーはそれこそ世界中にいて、かけがえのないパートナーとして愛犬と仲睦まじく暮らしています。パリの街にもそんな幸せそうな、飼い主&犬のカップルやファミリーがたくさん。その素敵な関係を、ちょこっと覗き見。今回は番外編、ノルマンディからお届けします。
夏休みが終わってしまった
今日はパリから離れて、ノルマンディ地方のカブールにいます。夏を過ごす場所として、フランスでは人気のエリア。もう夏も終わりの終わりですが、こんな街にいると、ちょっと浮かれてしまいます。
今回滞在した(ウソです)、グラン・オテルです。ザ・避暑で泊まりたいな、の素敵ホテル。夏の終わりの終わりで、人もまばら・・・。
おっ、このへんは、まだ人がいるな。残暑を楽しみ尽くしている皆さん、Bonjour! 今日もまだまだ暑いですね~
ん? そこの、白い毛皮の方?
あっつい・・・。(険しいお顔)
——シベリアンハスキーさん、シベリア生まれなだけに、暑いのは苦手でいらっしゃいますよね。お察しします。
あなたに何がわかるっての? 暑い日に毛皮着て出掛けたこと、あるわけ?
――毛皮は持ってません・・・。あの、シベリアからいらしたんですか?
ご先祖さまはね。ワタシは、ブルゴーニュ生まれ。ワインで有名なとこ。でもタイガ(Тайга́)って名前は、ロシア語なんだけどね。シベリア地方の針葉樹林のことらしいわ。
飼い主 ちょっとムッシュ、うちの子をナンパ? まだ2歳なんだから、困りますよ(笑)。
――あ、そんな。ちょっとおしゃべりさせてもらってます・・・(汗)。
飼い主 うちの子、おとなしいのよ。静かにお散歩するのが好きなんだから、あまり煩わせないでくださいね~。
違うの。(ささやき声。・・・というか腹話術?)
——え!?
うちのマダムって、過保護なの。ほんとはさ、こんなリードにつながれてノロノロ歩いてるのはイヤなの。わかってないのよ。
——走り回りたいって、言ってみたら??
つまらない顔とかしてアピールしてるんだけどさ、「あら、具合が悪いのかしら」って心配してくれちゃって、大嫌いな獣医さんのところに連れて行かれちゃうわけ。その獣医さんが「食事はドライフードだけに」とか余計なアドバイスするもんだから、真面目なマダムはドライフードしか食べさせてくれないの。はぁ~マドレーヌ、食べてみたい。(ため息)
今も、後ろで見張ってるんでしょ?(確認)
――はい、かなりしっかりと。マダムの娘さんらしき方も。
晴れてて気持ちいいわ~って、真っ昼間に連れ出されるんだけど。散歩は好きだけど、暑いから嬉しくないの。
ワタシは早起きだからさ、涼しい朝とかに、そこの大きな砂場(ビーチ)で思いきり走り回りたいのよ。カモメとか追いかけて遊びたいの!
おっと、マダムに聞こえてないよね?(確認)
――聞こえちゃったほうがよいのでは?
ダメよ! マダムは、良かれと思ってやってくれているからさ、傷つけちゃまずいわ。
聞こえてる?(確認)
――いえ、大丈夫そうです。(たぶん)
行きずりの人だから、いろいろしゃべっちゃったわ。そろそろ行かないと、怪しまれる。マダムに余計なこと、言わないでね。
さよなら。
――ご、ごきげんよう!
飼い主マダムは、マルセル・プルースト(20世紀の西欧文学を代表するフランスの作家。代表作は『失われたときを求めて』ですよ)のファンなんだそう。で、かつて彼が毎年のように夏を過ごしていたここカブールに、愛犬連れで訪れたんだそうな。ちなみに、プルーストが夏の常宿にしていたのが、さっきのグラン・オテルです(雑学)。
そんなプルーストは、幼少時代に喘息の発作を起こして以来、花粉などの影響を心配した父親が、旅行や花に近づくことを禁じていたそうな。本当は田舎で遊ぶのが大好きだった少年だったにも関わらず・・・。
愛情ゆえの過保護が、実は本人の自由を奪っている可能性あり――。とプルーストが言ったかどうか定かではないが(←言ってないです)、それってマダムとタイガの関係にも当てはまるような・・・!
ま、プルーストは病弱だったから致し方ない部分もあったとして、タイガは元気な大型犬。マダム、愛犬の本音に気付いてあげてくださいね~。
とにかく、早く涼しくなって、お散歩が快適になりますように・・・祈ってます。