三代目 J SOUL BROTHERSやE-girls、GENERATIONS from EXILE TRIBEなど、多数のビッグアーティストに詞を提供している作詞家の小竹正人さん。2017年に書き下ろしエッセイ『あの日、あの曲、あの人が』(幻冬舎文庫)が発売された際、特別キャンペーンとして、一般読者から歌詞にしたい恋愛体験を募集したところ、数百通にも及ぶ応募が寄せられたそう。
そのなかからついに、小竹さん作詞の1曲が誕生! 3月27日(水)にリリースされる、Flowerのオリジナルアルバム『F』の収録曲「まだ好きだから」。その誕生の舞台裏をお届けします。
小竹さんが選んだ「非日常的な恋」
すべての応募書類に目を通し、小竹さんがセレクトしたのは福井県在住、26歳の女性A.Mさんの恋愛体験。小竹さんの世界観が好きで、『あの日、あの曲、あの人は』も何度も読み返しているという彼女の、まぶしい恋のエピソードがこちら。
留学先のオーストラリア。綺麗なエメラルドブルーの海岸近くの街で私は彼に出会った。日本を飛び出して海外で出会った彼だったけど、青い目の外国人ではなく3歳年下の日本人大学生。20代前半の私達は、一緒にいることだけで楽しくて、幸せで、親も地元の友達もいないこの土地で、2人だけの秘密の場所にいるような、そんな感覚だった。
日本に帰る時期が来て私は地元の田舎に、彼は地元の東京にそれぞれ戻った。オーストラリアの片田舎の小さな空港で言った、「日本に帰っても一緒にいよう」。そんな口約束もすぐに駄目になってしまった。
お互い、相手よりも夢や仕事、地元が捨てきれなかった。お互いが完全に大人になりきれていない年頃。
あの街で恋をした彼は、まだ子供で不器用で、生きることにカッコつけている、そんな人だった。でも人一倍、素直で繊細で努力家なことを私は知っている。10年後の自分を追い求めて貪欲に突っ走る姿を、心配になりながらもその背中を見ているのが、話を聞くのが好きだった。東京という学歴社会と、信じて裏切られ他人との競争の街で育ってきた彼が、親にも褒められたことのない彼が、私の腕の中で弱気になって泣いたあの日、私と一緒にいる間だけは気が楽になったと、さびしそうな眼をしながら言ったあの日、知らぬ間にぎゅっと力強く抱きしめた私の腕を忘れないでほしい。
帰国後の東京で、「あなたに会うのはこれが最後かもね」と言った私に、彼が返した「またね」は、彼なりの精一杯の強がりなのか、また会えると信じているのか。だけど、あまのじゃくな彼は次があるときには「もう会わないだろうけど」なんて言うから、素直にまたねっていう言葉を言うなんて、本当に終りなのかもなって実感させられる。
でもいつか東京という大都会で、またあの時のようにたくさんの人ごみの中、幅広い向かい側の交差点からでも見つけてもらえるように、色気を身につけておきます。だから、どうか迎えに来てほしい。
彼がふと思い出す女でありたい。私という存在が彼の目の前から完全に消えたとき、彼の頭に居座るくらいのそんな存在になっていてほしい。彼が惜しいことをしたと悔むぐらいの女にはなっていたい。自分勝手で構わない。でも、そうでもしていないと私は立っていられない。彼は私の知らない世界を知っていて、私とは逆の世界を生きていて、彼はわたしの夢の続きだった。
いつかまた、大人になったあなたを楽しみにして、待ってます。
小竹さんコメント「今は失くしてしまったものをたくさん思い出した」
A.Mさんのエピソードは、小竹さんの手によって歌詞となり、Flowerがリリースするオリジナルアルバム『F』に収録されることに。曲名は「まだ好きだから」。A.Mさんにとって大切な一曲になれば、と小竹さん。
***以下、小竹さんコメント全文***
『あの日、あの曲、あの人は』を読んだ方々から予想以上にたくさんの恋愛経験談を送っていただき、思わず嬉しい悲鳴をあげました。
まるで青春映画を観ているかのように甘酸っぱいもの、読んでいて胸が痛くなるもの、音楽として届けるにはドラマティックすぎるもの。途中から、歌詞にするという本来の目的を忘れ、夢中で読みふけってしまいました。
すべての恋愛体験のなかから今回A.Mさんの体験談を選ばせていただいた理由は、私も若かりし頃に彼女と似たような経験をしていたからです。
外国の、海の近くの街での恋。そこには非日常的な眩しさと開放感があり、まるで生まれ変わった自分が、今までに出逢ったことのないような人と恋をしているような気持ちになる。
そして、帰国して日常に連れ戻された瞬間、今まで見えなかった現実や未来の入口が見えてくる。
遠い昔の自分の無防備さ、迷い、強がり、真っ直ぐさ、今は失くしてしまったものをたくさん思い出しました。“若さ”という鎧(よろい)のなかでそのすべてを持っていたということも。
A.Mさん、あなたの“あの日”を歌詞にさせていただき、ありがとうございます。今のA.Mさんが、素敵な毎日を送っていること、『まだ好きだから』が大切な一曲になってくれること、心から願っています。
また、今回、『あの日、あの曲、あの人は』を読んで恋愛体験談を送ってくださったすべての方々に、この場を借りてお礼を申し上げます。
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A.Mさんの恋愛体験が、どんな歌詞に仕上がっているのか。「まだ好きだから」にぜひ注目してみてくださいね。
Flower 4年ぶり3枚目となるオリジナルアルバム『F』
『F』(エフ)
発売日:2019 年 3 月 27 日
価格:CD+BD ¥4,800、CD+DVD ¥4,200、CD ¥3,000
Flowerオフィシャルサイト:http://www.flower-ldh.jp/