映画『さかなのこ』でさかなクンを演じたのんさん。「この役を誰にも譲りたくない」――そんな強い思いを持って撮影に臨んだそう。常に歩みを止めないのんさんに演技に対する熱い思いを聞いた。
思い込んで突き進む、そのパワーで演技を深める
「『男か女かはどっちでもいい』って台本の読み合わせをする部屋のホワイトボードにそう書かれていて。ああ、性別って別に関係ないんだ、って。それですごく腑に落ちたんです」
映画『さかなのこ』でお魚博士のさかなクンをモデルにした“ミー坊”の青年期を演じるのんさん。監督が書いたという言葉を見たときのことをそう思い出します。
「ずっと、自分はヒーローのポジションで生きる人間だと思っていた。守られるヒロインではなくて、みんなを守っていく存在になりたいって。そしてこの作品のミー坊はヒーロー。だからこの役をいただいたとき、私以外に考えられない、誰にも譲りたくない、と思いました」
魚を愛して、熱中する主人公の姿に共感できると頷くのんさん。
「ミー坊にとってのお魚は、私にとっての演技です。俳優になりたい、それだけで上京して、何もできないころから自分はいい俳優になるって信じていた。思い込んで突き進む、そのパワーで演技を深めていっているんです。ミー坊はお魚博士になったから、私もいつか表現に関する知識や経験をたくさん手に入れて、“表現博士”になれたらいいな」
のんさんに3つの質問!
Q. 俳優になっていなかったら何になっていた?
A. 絵を描く人…かな?
宇野亜喜良さんの絵に出会ったことが衝撃で、絵を描くことにより打ち込むようになりました。私自身も、ほかのことができるのか不安になって、妹に聞いたことがあります。「ほかの仕事だったら私、何をしていると思う?」と。そしたら「その辺でのたれ死んでる」と言われ納得してしまいました。俳優しかないんです。
Q. 好きな魚は?
A. サンマ、ヒラメ!
お寿司のネタならヒラメ! でも、存在としてなら、サンマ。まず漢字で書くとカッコいい。「秋刀魚」ですよ! フォルムも刀みたいで、絵に描きやすい。焼いたサンマを、頭と尻尾と骨が繋がった状態で、キレイに食べきることにも憧れます。
Q. リラックス方法は?
A. 喫茶店でまったり
何をするでもなく、ロイヤルミルクティーを飲みながらぼーっとする。人と行っても特に何も話さない。最近お気に入りの、街の小さな喫茶店が廃業してしまい、今はチェーン店に行くようになりました。仕事の合間に寄るのがいいんです。
『さかなのこ』
原作/さかなクン
監督/沖田修一
出演/のん、柳楽優弥、夏帆ほか
制作・配給/東京テアトル
2022年9月1日(木)公開
のん
1993年7月13日生まれ、兵庫県出身。近年出演作に『この世界の片隅に』『私をくいとめて』など。今年2月に公開の映画『Ribbon』では監督、脚本、主演を務めた。秋には映画『天間荘の三姉妹』が公開予定。