ひとり旅は自分をリセットさせてくれるかけがえのない時間。これまでの旅の経験から、考えたことや感じたこと、学んできたことを綴る連載『ひとり旅×松本まりか=THINK CLEARLY』。
先日、私はスリランカのアーユルヴェーダのリトリート施設で数週間を過ごしました。その旅のお話の続きです。
アーユルヴェーダは、インドやスリランカで約5000年の歴史を持つ伝統医学。最初に詳しい問診、脈診を受け、食事療法のほか、オイルを使ったトリートメントなど個々に合わせた施術をしてくれます。私はドクターの問診で、「ルーズ・ウェイト・プログラム」を受けることになりました。
普段、日本で私は「痩せすぎだから、とにかく食べなさい」と言われます。でも、私自身はたくさん食べないほうが感覚が冴えますし、調子が良い感じがしていました。ですから、アーユルヴェーダの、食事を制限して体に溜まった余分な毒素を外に出すという考え方には納得。私は以前から、取材などで美容法を訊かれると「デトックスです」と答えていたんです。特別なことをしなくても、体も心も頭もデトックスすることで、肌も内臓も健やかでいられる気がします。
栄養のある食物やサプリはいろいろありますが、それらをたくさんとることが万人にとって良いわけではなく、体質によって必要な量は違うんじゃないかなと思います。
「足るを知る」。たくさんのものを手にしなくても、少量でも十分に満たされることをスリランカで実感しました。空腹になって初めて食べる。ごはんを時間をかけて味わって食べる。これは東京に戻っても習慣にしていきたいです。
滞在したホテルはホスピタリティーにあふれていました。ルームクリーニングの青年スタッフに、お花が好きなので用意してもらえないかとお願いしたら、毎日素敵なお花を飾ってくれるようになりました。また、タオルを使って象さんやらお猿さんやら、かわいい動物を器用に作って飾ってくれました。私がそれに感激していたら、毎日1匹、新しい動物が増えていきました(笑)。長い滞在だったので、「レパートリーがなくなるから、もう十分だよ」と伝えたのですが、「大丈夫、まだある」と笑顔で、部屋の住民を増やしてくれました。
施術してくださる方、お部屋を掃除してくださる方、すれ違うたびに笑顔で挨拶を交わします。二言三言、なんでもない会話です。でも、人として大切に扱われている感じがして、とてもうれしかったです。私にしてくれたお仕事に対して「ありがとう」と伝えると、相手も喜んでくれる。そんなささやかな交流が心をほんわり満たしてくれました。
持続可能な働き方を目指して
皆が忙しく働いている間に休みをとることに対して、私はちょっとだけ罪悪感がありました。でも日本でも海外のように、皆が、もっと長いお休みを気軽にとれるようになったらいいなとも思います。
自分に限界はない、休みなんかいらないと思っていました。でも、それは短距離走的な働き方だったなと思います。良いパフォーマンスをキープするには心身を休めることも大切。「持続可能な働き方」を選んでいきたいです。休むというのは、自分を甘やかすことではなくて、自分を労わること、大切にするということなんじゃないかなと思います。
スリランカにいる間、私は幸せを噛み締めていました。それは高揚するような幸福感ではなく、地に足のついた満たされる感じ。じんわり、ほわーっと、体のこわばりが抜けていくような。この感覚を帰国後も味わえたら……それが目下の課題です。
Marika’s Memories/部屋の住民たち
松本まりか(まつもとまりか)
女優。ドラマ『ホリデイラブ』の井筒里奈役で一躍注目を集める。Amazon Primeにて配信中の『雨に叫べば』にて主演を務める。映画『極主夫道ザ・シネマ』『妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪』が公開中。
【ひとり旅×松本まりか=THINK CLEARLY】をもっと読む。