美容家・神崎恵さんの心の機微を綴る連載「Megumi's Mirror」。今回のテーマは「ゴシップ」。
vol.7 「ここだけの話」は、存在しない
「女子が3人集まれば、噂話に花が咲く」などとよく言われるように、いわゆる“ゴシップ”は今も昔も変わらず、人々の関心の的。
かつて、『GOSSIPS』という、薄くてハンディタイプの雑誌がありましたが、皆さん、知ってます?(今は休刊のようです、残念) 海外セレブのプライベートな素顔を、パパラッチたちが撮った写真がスクラップブックのようにレイアウトされ、ファッションや美容など、彼らの最新ブームがまとめられていて、眺めているだけで楽しい一冊でした。
お騒がせセレブと言われたパリス・ヒルトンのパーティーでの煌びやかな衣装やはしゃぎっぷり、海外ドラマの主人公たちが、まるでドラマのワンシーンのように、大きなサングラスをして、コーヒーの紙コップを片手に愛犬を抱っこしてその辺を歩く姿、ノーメイクで髪の毛をわしっと結わえて、ヨガマットを持ってビーチサンダルでスタジオへ向かう様子…。
プライベートな姿だし、撮られる方はきっと大迷惑なんだろうけれど、どの姿もやっぱり絵になる。ファッションもメイクもさり気ないのに華があって、ちょっとマネしてみたい。憧れの気持ちとともに雑誌を眺めたものでした。
対して、今、世間をざわつかせている“暴露系”。私の周囲でも「神崎さん、例の動画、見ました…?」など、どうしても話題になりがちです。
そんなとき、私ははっきり言います。「まったく興味ないんです」と。
普段から、ネットニュースも週刊誌も見ません。年々そういう話に興味がなくなり続けています。
もちろん、この世界に身を置いて長いですし、私自身がネタになることだってあるでしょう。でも、昔から、本能的に“人の口に蓋はできない”と確信していました。
「誰にも言わないでね…」
「ここだけの話…」
「これ、誰にも言ってないんだけど…」
どんなに仲の良い人からでも、こう切り出されたら一瞬身構えます。そして、大切な相手の大切な相談ごとなら、墓場まで持っていく覚悟で話を聞きます。逆に、今の自分にはその話を聞く自信はない、と感じたら「ごめんなさい」と断って、聞く前に席を立つ。
冷たいと思われるかもしれませんが、それくらい「ここだけの話」がもたらす威力は半端ないと思っています。話す方も、受け取る側も、覚悟を持って、腹をくくらねばいけない。それが“秘密”を打ち明けるときのお互いのルールだと思うのです。
人間ですから、だれだって、いい面も悪い面もあります。私だって、人生を振り返ると「あぁ、やっちゃった」と思うことだらけです。叩けば埃ひとつ出ない、聖人君子のような人もいるかもしれませんが、人間にはいろんな側面があって、いろんな人がいる。それをわかっておくことが大事だと思っています。
私は、知られていいこと、むしろ、知ってほしい、広めてほしいことしか公の場では言わないようにしています。そして、自分はもちろん、他人が聞いて嫌な気持ちになるようなことは言わない。というより、言いたくない。自分の口から発した言葉は、そのまま自分に戻ってくるような気がして。一瞬でも、ぽろりとこぼれ落ちてしまった楽しくない、美しくない言葉は、ざわざわと、心の平和を乱します。
秘密を持つことが難しいこの時代に、見なくていいこと、聞かなくていいこと、知らなくていいことを持つ勇気も必要なのでは、と思っています。
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