ひとり旅は自分をリセットさせてくれるかけがえのない時間。これまでの旅の経験から、考えたことや感じたこと、学んできたことを綴る連載『ひとり旅×松本まりか=THINK CLEARLY』。
ひとりで旅をしていると言うと、孤独に強い人と思われるかもしれませんが、けっしてそんなことはありません。小さいころは、むしろすごい寂しがり屋でした。おばあちゃんにすごく甘えていましたし、母や祖母がそばにいないと、ひとりではいられないような子供でした。
10代から仕事をするようになり、同世代の俳優仲間のなかには、地方から上京してひとり暮らしをしている子もいました。そして、20歳くらいになったときに私も自立をしなければと強く思ったのです。実家は東京なので、そのまま家族と暮らすこともできました。実家にいれば、食事の支度も洗濯や掃除もしてもらえますし、話し相手もいます。でも、自分が甘えん坊だという自覚があるからこそ、実家に甘えない人生を送る必要性を感じていました。ですから、家を出るときには、ここには帰らないと言う決意をし、そのくらいの覚悟を持って、ひとり暮らしを始めたのです。
ひとり暮らしを始めて、すべての時間が自分の自由になる楽しさを知りました。行動には責任が伴うけれど、自分の責任において生きていくというのは、面白い経験もたくさんしますし、自信にもつながります。
すべては自分次第。自分で乗り越えなければ。
私は、結局のところ、ひとりで完結できるようにならないと、最終的には何も進まないんじゃないかと思っています。たとえば、何か悩みを人に相談したとして、ヒントや刺激を受けることはあっても、たとえ解決方法を教えてもらえたとしても、自分のなかで腑に落ちなければそれは解決にはなりません。自分で選択して決断をし、乗り越えること以外進む方法はないように思います。
ですから、ひとりの時間は、誰にとっても大切なのではないかと思います。ひとりの時間が充実して豊かになれば、きっと周囲も豊かになり、人間関係も豊かになっていきます。私はすべてのことは自分次第だと考えています。
それには、自分自身にどれだけ向き合えるか。
自分の本当の声を聞けるかどうか。
「こうありたい」と自分が思う通りに生きることができる人はけっして多くないと思います。やはり社会的な生き物ですから、家族やパートナー、会社や周囲が望む声を、自分の望みと思い込んでいる場合もあるように思います。自分の本当の思いと目の前の現実が乖離していることは多々あるでしょう。
私自身、いま自分の声を聞けているかと問われれば、耳を塞いでいるところはあります。でも、この状態を自分で乗り越えなければ、とも思います。
ひとりでいようとも精神的に豊かに過ごせること。寂しさや孤独に打ち克つ強さは必要ではないか……なんて、昭和っぽい考え方でしょうか?(笑)
これまでの私のひとり旅は、好奇心旺盛にいろんなところを歩き回り、さまざまな現地の人と出会い、外へ外へと気持ちが向かっていました。でも、もし次に旅に出るとしたら、何の計画も立てずに、ただぼーっと静かにその土地の空気を味わう、そうして自分の本質を取り戻すような時間の過ごし方ができたらいいなと思っています。
Marika’s Memories/猿の惑星
松本まりか(まつもとまりか)
女優。ドラマ『ホリデイラブ』の井筒里奈役で一躍注目を集める。配信中のParaviオリジナルドラマ『東京、愛だの、恋だの』、Amazon Prime Videoで配信中の映画「雨に叫べば」で主演を務める。
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