佐藤健さんの役者人生においての代表作でもある『るろうに剣心』シリーズが、ついにファイナルを迎えた。22歳で出会った緋村剣心とともに歩き出し、当時は予想もしなかった10年にも及ぶ道のりを振り返って、今、その胸の内とは・・・?
最終章で描いた剣心の過去
2012年に1作目の『るろうに剣心』が公開されると、これまでの日本映画にはなかった圧倒的スピード感と迫力を持ったアクション、そして佐藤健さん演じる緋村剣心の生きざまの物語が日本中を感動の渦に巻き込み、大ヒットを記録しました。公開直後から続編を熱望する声があとを立たず、満を持して2014年、『京都大火編』と『伝説の最期編』の2部作が公開に。前作をも上回るスケールの大きさでその実力を更新し、再び大きな痕跡を残します。それから約7年。現在公開中の『るろうに剣心 最終章 The Final』と、6月4日(金)に公開を控える『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の2作連続公開をもって、『るろうに剣心』シリーズはついに完結。10年にわたる『るろうに剣心』シリーズの中心に立ち続けてきた佐藤健さんに、最終章公開への意気込みを語っていただきました。
「『The Final』と『The Beginning』はまったく違う物語。2本分の映画を一気に撮ったことになるので、それはもう大変な撮影でした。1作ごとに役者もスタッフも各々が確実に成長し、つまりこの最終章が過去最高のアクションに仕上がっているのは間違いない。だからそこに新たに参加したまっけん(新田真剣佑)なんて、相当大変だったと思います」
明治時代を描いた『The Final』から時は一気に遡り、『The Beginning』は幕末が舞台。ここでは剣心の頬の十字傷の秘密、剣心の過去、そしてなぜ剣心が“不殺の誓い”を立てたのかなどが次々に明らかになります。
「剣心がまだ日本刀で斬りまくっている時代の話なので、逆刃刀を持つ『The Final』よりアクションは派手に感じると思います。ただここでは、どっしりと重いドラマの部分を観ていただきたい。映画ではこれまで語られなかった、剣心の10代~20代の生きざまを軸に、剣心と巴のラブストーリーが描かれています。僕自身も一番描きたかったエピソードでした。というのも僕は、この『The Beginning』で描いた剣心の過去を、1作目から内包し、背負いながら演じてきたつもりなんです」
実は剣心のルーツをしっかり自身に叩き込んだうえで、1作目から演じてきたという佐藤さん。自身の代表作ともいえるこのシリーズに幕を下ろすことに、どんな想いを抱いているのでしょう。
「何よりシリーズの最後に、剣心の生い立ちや生きざまのドラマを描けたことでやり遂げたという達成感に満ちています。そして、剣心を背負ってきたプレッシャーはとてつもないものがあったので、その責任から解放されたという気持ちもすごく大きい。とはいえ、どんな作品でもそうなんですが、自分が関わってきた役でロスになったことはないんです。すでに次の別の作品や新たな役が控えているから。ただ、子供のころから原作漫画が大好きで読み続けてきた僕自身が、一番の剣心のファンであることはこれからも変わりません」
役者もスタッフも、全員で切磋琢磨しながら成長してきた『るろうに剣心』。シリーズを支えてきた2人が、佐藤健さんの魅力と10年間を振り返ります。
大友啓史監督から見た、佐藤健
「この規模の作品で10年間も中心に立ち続けることは相当のプレッシャーだし、佐藤健にしかわからない孤独もあったと思う。でも『るろうに剣心』という作品を子供のころから愛し続け、剣心という人間を身を持って演じてきたからこそ、剣心を一番理解しているのも当然、彼。俳優というのは演じながらその人物を自分の体のなかに宿していくもので、彼のなかにも剣心は確実にいたんだと思います。
ただ、アクションシーンを中心に、前作よりもハードルを上げてレベルアップさせることは毎回必要だと思ったし、それによって役者もスタッフもみんなの底力が上がり続けるだろうと思った。だから僕は『るろうに剣心』のために集めた若いスタッフたちがいろんな挑戦ができて力を発揮できるような土俵作りを徹底したんです。若いスタッフとともに作ったその土俵に上がってきた彼も、すごいスピードで成長していきました」
大友啓史(おおともけいし)
1966年生まれ、岩手県出身。NHKに入局し連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズや大河ドラマ「龍馬伝」などを演出。2009年映画『ハゲタカ』で映画監督デビュー。’11年に独立し『るろうに剣心』シリーズを手がける。
谷垣健治アクション監督から見た、佐藤健
「佐藤(健)さんが優れているのは、自分がイメージしたことを肉体を通して表現できて、しかもその誤差が少ないところ。できるかできないかの見極めが難しいアクションも、何回目かの挑戦で結局できてしまう。テイクを重ねるほどミラクルを起こす優れた俳優ですね。編集の段階でも素材を見返すと、大胆なアクションのなかで実はとても繊細に表情が変化していることなどがわかって、改めてすげーな!って思わされることがあります(笑)。
毎回、剣心のアクションを練習してやるのではなく、いつしか体に染みついた剣心の動きを微調整して演じるという表現が近い。それは本番に向けて体調やコンディションをどう持っていくかというアスリートの調整方法と同じ。もはやトップアスリートです」
谷垣健治(たにがきけんじ)
1970年生まれ、奈良県出身。香港や中国、日本でアクション監督として活躍。2018年に中国映画『邪不圧正』で台湾金馬奨最優秀アクション監督賞受賞。主な作品は『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』ほか。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』まもなく公開!
剣心の頬の十字傷の謎、なぜ不殺の誓いを立てたのか、巴との関係など、映画シリーズではこれまで明かされてこなかった数々の秘密が描かれた最終章であり、1作目の『るろうに剣心』よりも前の幕末を舞台にした今作。全国12都道府県、43ヵ所以上のロケ地を回り、日本映画史上最大規模の撮影を敢行! 6月4日(金)にいよいよ全国公開です。
終わりであり、始まりでもある剣心の姿を、ぜひ劇場でその目に焼き付けてください。
佐藤健(さとうたける)
1989年3月21日生まれ、埼玉県出身。2007年にドラマ「仮面ライダー電王」で初主演。連続テレビ小説ドラマ「半分、青い。」「恋はつづくよどこまでも」、映画『バクマン。』『何者』など、代表作を多数持つ。『8年越しの花嫁 奇跡の実話』では日本アカデミー賞優秀主演男優賞受賞。主演映画『護られなかった者たちへ』がこの秋公開予定。