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TIMELESSPERSON

2020.02.11

デートでアレをないがしろにする男って、ありですか?

この世で生きていく以上、仕事でも日々の暮らしのなかでも誰かと関わらざるを得ないし、できることなら避けたい人物に遭遇しても、本音と憤りと不快感を抑えながら、“大人のフリ”してやり過ごさなければならぬ。でもソレ、本当に必要?

“大人のフリ”して放置(我慢したり、見て見ぬふりしたり)せず、煩わしい人間関係をぶった斬り、好きな人たちとだけ生きていく——。そんな“自分基準”を掲げて、人生を楽しく、生きやすくしていきませんか?
脚本家 岸本鮎佳さんの連載「私、幸せになるんで。はい、サヨウナラ」。あなたの人間関係やモノ付き合いの整理整頓&取捨選択に際し、ぜひご参考に!(編集部)

連載を始めるにあたって・・・

脚本家という職業柄、ついつい人間観察をしてしまう。
先に言っておくが、私は人間が大好きだ。
でも、大好きだからこそ、大嫌いになることもある。

友人にそのことを話すと、大抵の場合このように言われる。
「そんなどーでもいい人、放っておけばいいじゃん!」

うん・・・それは分かる。頭の中では十分分かっている。
いや、でもね? 何か気持ち悪いじゃん! そういうの!って、思ってしまうのが私なのだ。

人に対して、「好き」「嫌い」この二つしかない。
「どーでもいい」というジャンルは、私にはない。

だからこそ、私はまるでジャンヌダルクのように、あらゆる批判を受けながらも、人間関係をぶった切ってきた。

vol.01「俺あんまり外食にお金かけたくない人なんだよね男」

岸本鮎佳

(c)Olga_i/Shutterstock.com

彼は、私の三つほど年下。

でも見た目は、私よりも年上に見えるくらい大人びていて、将来は良いパパになりそうな可能性を秘めた雰囲気を持っていた。

何より、「タレ目」!!!

何故だかわからないけれど、昔から、「タレ目」に惹かれる私にとって、彼の顔は正直どタイプだった。

そんな彼と知り合い、メールで頻繁にやりとりし、週にデートに出かけたりして、所謂「いい感じ」の状態になり、私は完全に浮かれていた。

共通の趣味である野球を観に行ったり、ご飯を食べに行ったり、こんな顔がどタイプのタレ目年下男子と付き合えるなんて、幸せ以外の何者でもないじゃないか!と。

そして、何回かデートを重ねたある日のデート・・・。

昼間に「お芝居を観に行こう!」というお誘いを受けました。

いよいよ・・・今日あたり告白されるんじゃないか? おいおい、どーすんのよ! 私、ついに彼氏できちゃうじゃない!と、テンションマックスで、お洋服を選ぶ私・・・。

お芝居は、物語が重くて、デートで観るような内容ではなかったけど、終わったのが16時半! ここから、プラプラと散歩しつつ、どこかのお店で夜ご飯♪という流れに当然なると思っていた私。

・・・甘かった!!!

私たちが行くいつものエリアに戻ったのが、17時半頃。

ほとんどのお店が18時オープンということで、少ないながらもやっているお店を

私「ここは〜?」

彼「うーん・・・」

私「あ、ここ、ハッピーアワーやってるよ!」

彼「うん、そうだね・・・」

と、一軒一軒、巡ってきたけど、一向に決まらない・・・。

この時点で、優柔不断な彼に対して

「おい、てめぇ、こっちがいろいろ提案してやってんだから、いい加減決めろやぁ!」

と、イラついてたわけです。

この時、彼は、家族の話(まず、店探そう?)、飼っていたペットの話(うん、それも店入ってからな?)、ランニングの話(全く興味ない)など、喋り続けていた。

店を探し始めてから、30分が経ち、もうこれ以上我慢ならないと私は彼に、

「もしかして、お腹空いてないの?」

すると彼は、

「そういう訳じゃないよ」

と一言・・・。

ん? で?

私「でも全然、お店決めてくれないじゃない?」

彼「うーん・・・」

私「どこか、入らない?」

彼「うーん・・・」

おい、「うーん・・・」って何だよ!

煮えきらねぇなぁ!!!と、私はスイッチが入り、彼にこう返した。

私「もう、店入るのやめる?」

すると、彼の意外すぎる反応に、私は思わず面食らってしまった。

彼「うん・・・そうだね」

そして、私たちはその場で別々の方向に歩き始めた。

え? 何!? 私何か、気に触ることした!? いや、してない! 一生懸命お店探してた!
怒りと悔しさが溢れ出し、半泣きになりながら「もうこの男とは終わった・・・」と思い、トボトボ家に向かって歩いていると、一通のメール・・・。

彼 【俺、外食にあまりお金使いたくないんだよね】

え・・・。

「外食にお金使いたくない」・・・?

デートしてんのに、「外食にお金使いたくない」・・・?

そもそもデートで、外食しないシチュエーションある・・・?

いや、ない!

お腹が空いてないならまだしも、外食そのものを否定されるとは、夢にも思わなかった。

男女というのは、食事をしてこそ、相手の好みを知り、自分をさらけ出すものなのではないのか?

「食の趣味は大事」という、もはや常識となっているようなうまくいくカップルの条件も存在しているにも関わらず、「外食にお金を使いたくない」・・・?

彼とはこれまでも何度か外食はしていた。

年下ということもあり、奢らせるわけにはいかないので、常に割り勘にしていた。

でも、それは私にとっては、まったく嫌ではなかったし、むしろ潔くていいなと思ったポイントでもあった。

食べ終わった後は「美味しかったね」と料理の感想を語り合ったりもしていたはずだった。

だとしたら・・・

きっと、彼は無理をしていたのだろう。

今、思い返してみれば、彼は自分自身のことを「ケチ」だと言っていた。
髪の毛も千円カットの店で済ませ、服もUNIQLOが好きだと言っていた。

本物のケチは、自分の事を「ケチ」と言わないと、私は自分に暗示をかけていたのかもしれない。

恋愛をすると、相手の嫌な所は、つい見て見ぬ振りをしてしまう。
一度好きになった相手を嫌いになりたくないから。
もうこれ以上、傷付きたくないから。

自分にとっての普通は、相手にとっての普通ではない。

「恋愛をする」ということは、その価値観の違いをすり合わせる作業だと思っている。

でも、誰に何と言われようと、変えたくない価値観がある。

外で美味しいご飯を一緒に食べ、美味しいお酒が飲めない相手なら・・・

例え顔がパーフェクトで優しい心を持っていたとしても・・・

私はお断りだ。

その男とは、それから、一度デートしたが、やはりご飯は食べなかった。

今はたまに、連絡が来るが、返してもいない。

私は、一緒に外食を楽しめる恋人が欲しいから。

サヨウナラ・・・

外食したくない男・・・。

岸本鮎佳の【私、幸せになるんで。はい、サヨウナラ】をもっと読む。

TEXT=岸本鮎佳

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