3月25日から開始された、写真や映像を通じてHIV/AIDSへの理解を促すプロジェクト「Message Photo & Music Video」。写真家レスリー・キーさんとパートナーである池田将真さんが担う使命とは?
レスリー・キーの止まらぬ挑戦

ファッションや広告、ポートレートの第一線で活躍しているレスリー・キーさん。その名を世に知らしめ、注目を集め続ける所以は、フォトグラフアーという領域を超えた意欲的かつ革新的な活動にある。彼のキャリアは単に美しいものを撮ることではなく、その作品を使って世界にメッセージを届けること、そしてそのメッセージを拡散させるために尽力すること——つまりゴールを目指してトータルでプロデュースしていく企画力で積み上げられてきたともいえる。
今回彼が向き合うのは、SDGsのなかでも「Goal 3:すべての人に健康と福祉を」というテーマだ。美を提示するだけでなく、その先にある社会課題へと人々の視線を導く、というアクション。またしてもレスリーさんが見据えるゴールは明確だ。
知ることから、できることへ。HIV流行を終わらせよう。

HIVとは「Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)」の略称。人間の免疫細胞(CD4陽性リンパ球)を破壊して、最終的にエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)を引き起こす原因となるウイルスの名前だ。1981年に米国で確認され、その後世界中へと広がり、2004年のピーク時にエイズによる年間死者数は世界で約210万人にも及んだ。
現在は、HIVは早期発見と治療によって「死に至る病」から「コントロール可能な慢性疾患」へと変化し、たとえ感染しても治療薬の進歩で通常と変わらない生活が送れるまでになっている。それにも関わらず、過去の記憶からアップデートされないままという人が多く、HIVは死に至るものという恐怖感を持ち、感染者に対する偏見が未だに残っているのも事実。
この誤解や偏見を取り払いたいと立ち上がったのが、レスリーさんだ。
国連SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」において、2030年までにエイズに対処することがターゲット3.3とされていることをご存じだろうか。さらに2021年の国連合同エイズ計画(UNADIS)においては「2030年までにHIV流行終結」が採択され、世界共通の目標になっている。日本でもこの目標に向けて、当事者団体や製薬会社など6団体(HIV/AIDS GAP6)が、HIVやエイズへの理解を促すプロジェクト「知ることから、できることへ。HIV流行を終わらせよう。」を始動させた。レスリーさんはこのプロジェクトのために多様な分野を横断し、人と人を繋いで、理解の促進と検査・予防への一歩を後押しする。
写真×音楽×映像で心を震わす伝え方

発表された〈HIV/AIDS GAP6〉のプロジェクトは、レスリーさんとパートナーである池田将真さんとのユニット「SILK」が軸となって展開される。「SILK」 というユニット名は、将真さんの英文字イニシャルの「SI」と同じくレスリーさんの「LK」を組み合わせたもの。
レスリーさんは「この日本発のプロジェクトを、私たちSILKのような同性カップルが賛同して、堂々と拡散することはとても大切。日本のLGBTQの人達を取り巻く環境から、差別や偏見を減らすことがSILKの願いです。これからもっとたくさんの社会貢献に参加する予定ですし、今よりもっと素晴らしい世界に変えていくために二人三脚で一歩ずつ進んでいこうと考えています」と、決意を語る。
今回の試みは「Message Photo & Music Video」という形式が取られ、写真、音楽、映像を駆使して視覚と聴覚に訴えかけるメッセージを発信していくそう。啓発活動においては情報伝達も大事だけれど、ここでは「感情」にフォーカスすることで、まず共感を得るところから始めよう——と考え、より広い層へアプローチしていく狙いだ。
プロジェクトのメインとなるのが、120名にもおよぶ参加者たちがHIV流行終結に向けたメッセージを発信する「Message Photo & Music Video」。NPOや支援団体、医療・教育現場、エンタメ業界など、セクターを超えて多様な人々が参加し、"赤いリボン"を手にしたポートレートとともに共感を呼び起こしていく。
レスリーさんはこのビジュアルを通して、「あいまいを、あんしんに。」というメッセージを伝えたいと考えている。漠然とした不安や距離感を、可視化された人々の存在によってやわらげていくこと。ポートレートに収められた、自然体でありながらも力強さを感じさせる人々のポジティブな姿を目にすることで、「HIVやエイズを特別視するのではなく、"ともに生きる現実"として受け止めるきっかけになれば」と、願っているのだ。

「HIV/AIDS GAP6」というコンソーシアムのもとで実施される本プロジェクトは、医療、教育、NPO、エンターテインメントなどの、多様な領域が連携。そこにレスリーさん、そしてSILKとしてのパワーが加わり、ビジュアルの力で人々の意識改革を促していく。
アートがもたらす想像力は社会課題を動かすことができるのか。——その答えがYESだと信じる表現者、レスリーさんの挑戦。写真を、"鑑賞するもの"から"より良い社会を示唆する"役割へとシフトさせ、写真の持つチカラを高めていくその表現力は圧巻。そして予想を超えていく彼の行動力と、周りの人々を惹きつけて巻き込んでいく吸引力は、きっと観る者の心を大きく揺さぶるはずだ。
本プロジェクトのMusic VideoのテーマソングにはEPOの名曲「う、ふ、ふ、ふ」(1983年発売)が起用され、6月6日のTokyo Rainbow Prideの日から公開される予定。彼の情熱がたっぷりと注がれた「Message Photo & Music Video」を観て、そこから発せられるパワーをダイレクトに受けとめたい。
HIV/AIDS GAP6
https://www.endinghiv-gap6.jp/

