子宮頸がんは、どの年代よりも20代〜30代の女性に最も多いがんです。日本では毎年、子宮頸がんにかかる女性が増え続けています。子宮頸がんで命を落としたり、子宮を失ってしまう若い女性がいまだに増えているのです。子宮頸がんを予防できるHPVワクチンは、20代以上の大人の女性も接種するメリットがあります。もちろん、ワクチンだけでなく検診も行うことが必須です。最新の子宮頸がんの予防法についてお伝えします。
検診+ワクチンで、子宮頸がんはほぼ完全に予防できる時代です
子宮頸がんが“検診+ワクチン”でほぼ完全に予防できる時代になったことを知っていますか? がんが予防できるなんて医学的にも画期的なことです。世界中100ヵ国以上の女性たちは、今現在、検診とワクチンで頸がん予防を行っています。
大部分の子宮頸がんの原因は、性交渉によるヒトパピローマウィルス(HPV)の感染です。HPVは、全部で100種類以上あり、がんになるものが約15種類。ワクチンで予防できるのは、このうちHPV16型と18型の2種類です。
この2種類は、全部の子宮頸がんのうちの約70%を占めていますが、ほかのHPVタイプの子宮頸がんは予防できません。
ですから必ず、子宮頸がん検診も、年1回は行なうことが大切です。ワクチンだけではほぼ完全に予防できないからです。
大人の女性にもHPVワクチンは有効です
ワクチンというと、中学生、高校生が接種するというイメージを持っている人も少なくないかもしれません。でも、大人の女性にもHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)は有効です。
性交渉を行なう前、HPVに感染する前の子供たちに接種することは大事です。でも、仮に今、HPVに感染している大人でもワクチンは有効なのです。
20代、30代ではHPV16型、18型両方に感染している人はほとんどいません。たとえ、どちらかに感染していても、もう一方の感染は防げます。
そして、多くのHPV感染は一過性で、しばらくすると免疫力で自然消滅します。ワクチンは消滅したあとの再感染を防ぐこともできるのです。
このHPVは、性交渉のある女性の80%以上が50歳までに感染を一度は経験するといわれているほど、ありふれたウイルスです。ですから、性交渉があれば、何歳でも感染する可能性はあります。
HPVワクチンは、肩に近い腕の筋肉に注射します。半年の間に3回接種します。費用は、クリニックによって違いますが3回で5万円くらいが多いようです。HPV16型、18型に加え、性感染症である尖圭コンジローマも一緒に予防できる6型、11型が加わったワクチンもあります。
中高生のHPVワクチンの無料接種は見合わせたまま
2009年、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)が世界に遅れてやっと日本で接種可能になりました。日本でも2010年から、中学1年~高校1年までの女の子に、公費助成でワクチン接種が始まりました。
ところが2013年、厚生労働省では、接種のあと体の痛みを訴えるケースが30例以上報告されたことから、厚労省は、全国の自治体に対して積極的な接種の呼びかけを一時中止していまいました。現在もそのままです。
しかしながら、この判断は、医学的な科学的根拠に基づかない日本の政策決定であることから、多くの非難を浴びています。日本産科婦人科医会、学会ともに、早期の接種再開を何度も厚労省に要望していますが、いまだに中、高校生の公費助成のHPVワクチン接種は再開されていません。
大人の女性の公費助成は行われていないので、自分で支払うことになりますが、厚労省は接種そのものを差し止めたわけではないので、主に婦人科クリニックなどで希望すれば相談や接種も可能です。
このままでは日本女性だけが子宮頸がんにかかってしまう・・・
WHO(世界保健機関)は2015年12月の声明で、日本だけが公費助成の接種を中止していることに対して、日本を名指しで非難しました。
「日本の若い女性は、本来なら避けられるはずのHPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんの脅威に暴露されている、“薄弱な根拠”に基づく政策決定は、安全で効果的なワクチン使用を妨げて、結果として真の被害を招く可能性がある」と厳しい見解を示しました。WHOが1国のみを名指しで非難することは異例のことです。
日本小児科学会理事も、日本産科婦人科学会理事も、なんとか早い積極的接種再開を望むとの声をあげています。
世界中でHPVワクチン接種が行われているにもかかわらず、このままでは、日本だけにHPV(ヒトパピローマウイルス)が蔓延して、日本女性だけに子宮頸がんが増える状況になってしまいます。
特にこれから妊娠出産を望む女性は、正しい情報を知って、ワクチンと子宮頸がん検診で、子宮頸がんを予防してください。