小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優 多部未華子さんの連載「多部未華子がBOOKコンシェルジュ!」。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.47 夢中になれるものを見つけたいと思えるような、面白い本を教えてください。
《読者からのリクエスト》
私の悩みは熱中できる趣味がないことです。毎日仕事が忙しく、スキマ時間もだらだらと無目的にSNSを見て時間を無駄にしている現状…。そんな状況から抜け出して、有意義に時間を使いたいです。
《多部さんのオススメは・・・》
“推し”という存在がなかった私は、勉強のような気持ちで読みました。
少し前に芥川賞を受賞した宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を読みました。テレビで芥川賞受賞のニュースを見てからずっと気になっていたのですが、またさらに知り合いからもおすすめされたのでいっそう気になり、手に取りました。
学校や社会に馴染めない高校生・山下あかりは、なにをしてもうまくいかず、世の中から孤立していて、そんな彼女の唯一の心の救いとなっているのは、アイドルの上野真幸。彼女の人生の軸は上野真幸を追っかけることでした。しかしある日、上野がファンを殴ってしまいSNS上で炎上してしまう。それをきっかけにあかりの人生も徐々に変わっていく…という、“推し”の話。
この本は、“推し”の存在がいる方であれば、主人公の女の子あかりの気持ちや描写が理解しやすいんだろうなと思いました。“推し”に対するひとつひとつの文章がすんなりと共感しやすくとても読みやすいのだろうなと。生まれてこの方、“推し”という存在がなかった私にとっては共感しながら読む、というのは正直難しく、「なるほど。こういう世界(女の子の生き方)も存在するんだな」とある種、勉強のような気持ちで読みました。
みなさんには“推し”はいますか? 私には、まさに、この本の主人公のように、“推し”に人生が救われているような友人が一人いるのですが…。本当にすごいんです。一喜一憂っぷりが(笑)。そこまで熱心になれるのかと尊敬しますが、常に「“推し”を全力で応援する」という志を軸に生きているので、仕事で辛いことがあったりプライベートで悲しいことがあったり、ネガティブな環境に身を置かれたとしても全くめげないんですよね、その友人。むしろその“推し”との色々な妄想を頭で繰り広げているらしく、ずっと幸せそうなんです。羨ましいです。そこまでになれるのが。
そんな私でも、“推し”と言えるほど熱心に追いかけてはいないのですが、きっと沢山の方が推しているであろうNizi Projectに去年はハマりました。そして今も、韓国のオーディション番組を熱心に毎週楽しく観ています。中学生くらいの頃は『ASAYAN』が大好きだったし(同年代ならわかるはず…!)、意外と思われるかもしれませんが、私、オーディション番組が大大大好きなんですよね。
今回のオススメ本はこちら!
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。全世代が熱く震える、令和を代表するベストセラー。第164回芥川賞受賞作品。
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