小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優 多部未華子さんの連載「多部未華子がBOOKコンシェルジュ!」。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.43 将来のことが不安です。同じ悩みを持つ人の気持ちを知りたい!
《読者からのリクエスト》
30歳という人生の一つの節目を目前に、仕事や結婚など将来を考えると「このままでいいのだろうか?」と焦りを感じています…。漠然とした不安を鎮め、一歩前に踏み出す勇気を与えてくれるような本が知りたいです。
《多部さんのオススメは・・・》
ライフステージが変わっても、新たな悩みが出てきたり、戻れない以前の生活に切なくなったりする
山本文緒さんの『自転しながら公転する』を読んでみました。あらすじを読んで興味をもったのですが、まさにドンピシャ!! 読んで正解でした。
母親の看病のために実家へ戻り、地元のアウトレットモールのアパレルショップで働いている32歳の都は、ひょんなきっかけから、同じモールの回転寿司店でアルバイトをしている貫一に出会います。そこからは都と都の母親からの視点、2つの目線から都の人生が描かれていきます。やはり同世代の女性が主人公だととても感情移入しやすく、環境は違えど大まかな心境の変化や悩みには共感する部分がたくさんあり、随所で“あー分かる”と、頷けることばかり。
仕事のことは自分一人のことだから自分がどうしたいのかが一番大事だけど、結婚は自分“たち”のことになるから二人が相容れないと前には進めない。一見難しいように感じるけれど、お互いの気持ちがすんなり合致すれば全く難しい問題ではなくなるし、こればかりは本人たちにしかわからないことです。貫一君は私も嫌いなタイプではないけれど、結婚や将来のことを考えると、どうもポジティブに一歩前へ踏み込めない! がしかし悪い奴ではない! どうするんだ都!と思いながら読破しました。
20代の頃にはあまり深く考えていなかった将来のことが、30代になった途端に突如として目の前に出現し、あれ!? 自分そんなに若くないぞ、これから先どうしていきたいんだ?と思う日が突然やってくるというか。そこに気づいた瞬間、無駄に焦るんですよね。でも毎日やらなきゃならないことがあるので自然と忘れていき、そしてまたハッとして焦る! その繰り返し。
私としては、30代はとにかくライフステージを変えたいと思い、(それも29歳の最後の方で急に)実際に結婚。家族をつくるということをしてみて、子供が産まれた今、ただひたすらに目の前の幸せを噛み締めている日々ですが、結局はライフステージが変わったところでまた新たな悩みが出てきたり、もう戻れない前の生活に懐かしさを感じて切なくなることもあったり。
人間、欲望の塊だと思うので、いつまで経っても満足して落ち着くことができないようです(特に私)。なかなかリアリティのある物語だったと思います。都と一緒に将来に悩みたい方はぜひ(笑)。
今回のオススメ本はこちら!
結婚、仕事、親の介護――全部やらなきゃダメですか? 東京で働いていた都は母親の看病のため茨城の実家に戻り、地元で働き始めるが…。ぐるぐる思い惑う都の人生の選択から目が離せない、共感度100%小説。
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