年末年始に読み込むのにぴったりな、招福コラム「ま、一杯飲んでベッラ ヴィータよ」。舞台は南麻布の架空のバー「Bar D’Amore(バール ディアモーレ)」。本業はファッションエディター、イタリアを愛するジョバンナ洋子ママが繰り広げるトークは、悩んだ時にポジティブになれると評判。第9夜は新年早々に来店した、ギフトをもらいっぱなしという無礼な子羊にゲキ。今宵も語らううちに、寒い冬の夜に熱いトークが炸裂して……。
【第九夜】スマートにお礼を伝えたい
いよいよ平成も終焉を迎えるわ。短いような気もしていたけれど、なんだかんだ30年も経っていたのね。私の平成は仕事人生とともに、って感じ。それにしても90年代初頭の平成元年と、2019年の平成31年で、ここまで生活や価値観が変わろうとは、予想だにしなかったわよ。あ、しみじみしてる場合じゃなかったんだったわ、そろそろお店の準備にかからないと!
「あけましておめでとうございます! まだ準備中ですか?」
あら、アナタ、2019年第一号のお客様よ! ま、だからって特別なサービスもないですけどね。準備途中だけど、寒いからお入りなさい。まずは華やかに赤ワインでもどう? 金沢で仕入れた金箔を添えておくわね。
「わ〜、良かった! 彼は今日から仕事初めだったので、ひとりで初売りに出かけた帰りなんです。いや〜、相変わらずの人出で疲れちゃいました」
平成も終わろうというのに、まだ物欲にまみれているのね。
「え〜、ダメですか〜? 買い物、楽しいじゃないですか。お得な福袋ゲットしちゃいました」
大人は時間を人のために使う
アナタ、“お得”のフレーズにこそ罠があるのよ。なんとなく使えそうで、結局使えないものしか入ってないんじゃない? まだまだね。
「ジョバンナさん、ひどいです!! でも確かに、袋の奪い合いをする場の熱気に盛り上がって、それほど欲しかったのかどうか・・・・・・」
そうよ。縁起物だから、まあ気持ちもわかるけれど、そろそろ時間もお金も自分のためじゃなくて、他人にも使っていく年頃よね。
「わっ。痛いところ、つかれました。実は年賀状いただいたのに、まだお返しできていないんです。気にはなってるんですが、まず自分の欲望が優先してしまって」
そうこうしているうちに、もうね、松の内も過ぎて、寒中見舞い出すのも微妙な時期になっていくのよ。ということは、結婚しているみたいなのに、お歳暮のお礼状は書いているのかしら?
「ギクッ。それって必要なんですか? あ、でも、そういえば母は書いていたような気が」
今は昔みたいに、ご主人の仕事絡みのお歳暮が自宅へ届くなんてことも少なくなったでしょうけど、親戚、ご友人関係は多少あるでしょ?
「メールやLINEで返しちゃってました」
でも目上の方へは、それはちょっと失礼になるわね。
お礼を返してないなんて!
「そうなんです。でもどうしよう・・・・・・と悩んでいるうちに、何も返さないまま年をまたいでしまって」
贈ったほうはセレクトにも気持ちを込めているから、しっかり覚えているものよ。私も以前、仕事関係の方に一見さんお断りの入手困難なクッキーをいただいたんだけど、お礼状はもちろん、パーティーでお会いした時に直接お礼を伝えることも忘れて。思い出した時は時すでに遅し、って苦い経験があるの。
「ですよね、私も逆の立場だったらそう思います。どうしよう、今からでもいいでしょうか?」
すぐにお伝えするならハガキでもいいけれど、時間も経っているし、きちんと少し丁寧に、封書で無礼のお詫びと、お礼を添えればいいと思うわ。
「明日素敵なレターセット仕入れて、早速書きます!」
そういう時用には、銀座の鳩居堂か日本橋の榛原のものがおすすめ。今後のためにお礼状用のハガキも一緒に買っておくのよ。
「年を持ち越して気になってたことを、新年早々解決できて、清々しい気持ちになれそうです」
そう、持つべきものは良き人間関係よ! 頑張るのよ!
人間関係、大事にしてる?
平成の生活の変化って、ドラエもんのどこでもドアみたいに、漫画でしかありえないと思っていたことが現実になっている話よね。声を聞かずに書いた言葉や画像だけで瞬時に交流できたり、AIっていうの? そんなものを搭載したロボットが人間の代役を果たしたり。支払いもスマホで済ませる世の中で、お金もどんどん現物を見る機会が少なくなっていくわね。
不思議なもので、そうなればなるほど、本当に分かち合える人同士の生のつながりが大事になると思うの。ドライな関係に慣れすぎると、鬱陶しい時もあるかもだけど、イタリアの家族みたいなつながり、忘れずにいたいわ。
【今宵の一杯】
ガロフォリ アゴンターノ コーネロ・リゼルヴァ
今回はそんな家族愛を感じさせるワイナリーの一杯をご紹介します。
長靴に例えられるイタリアの地図でいえば、ふくらはぎに位置するマルケ州。アドリア海の風を受けるコーネロ山にある、アンコーナ県ロレート村を代表するワイナリーがガロフォリ。この村はヨーロッパの美しい村にもノミネートされており、歴史を感じさせる風光明媚な土地です。
ワイン造りに適した環境を備えたロレート村で、1871年からガロフォリ家がワイン造りと販売をスタートし、現オーナーで四代目という代々情熱を注ぐ名門。
土着品種ぶどうをこよなく愛するファミリーが生み出したのが、この「ガロフォリ アゴンターノ コーネロ・リゼルヴァ」。赤ワイン用のぶどう、モンテプルチアーノの魅力を最大限に引き出すべく、余計なものや無理な力を加えず作られています。濃厚な果実の香りやスパイス感と、フランス産バリックでの18ヵ月熟成による、樽のバニラニュアンスのマラスカ(チェリー)が融合。砂糖漬けのフルーツのような好ましい余韻が残ります。アンコーナ県で昔流通していたコインにちなんだアゴンターノの名のように、歴史と愛を感じながら頂く冬にぴったりな赤ワインです。
Garofoli Agontano Conero Riserva
マルケ州
モンテプルチアーノ100%
750ml ¥4,200(参考小売価格)
フードライナー
078-858-2043