夏は肌荒れしやすい季節(※)。そこで、皮膚科専門医に取材。肌トラブルが起きる仕組みと、その防ぎ方について聞いた。
健やかな肌を保つ“肌免疫”とは?基本の仕組みを解説
肌は「内臓を映す鏡」と言われる。体調がすぐれないと、肌にもトラブルが表れることを感じている人も多いはず。だが逆に、肌こそがさまざまな刺激から体を守ってくれていることは知っているだろうか。
ココメディカルクリニックの泉さくら先生によると、皮膚は「最大のバリア機能」。
「ただれた皮膚から細菌感染し、命を落とすこともあるほど、肌のバリア機能は人体にとって重要です。皮膚には免疫細胞のひとつである“ランゲルハンス細胞”が張りめぐらされていて、異物の侵入を防いだり、炎症を鎮静化したりしています。その機能が乾燥などによって弱まると、体内に細菌やウイルスが侵入したり、肌トラブルが起きたりするのです」
肌の免疫機能は、健やかな肌だけでなく、健康そのものを保つためにも必要不可欠なのだ。まるで乾いた地面が水をぐんぐん吸い込むように、肌からウイルスや細菌が入っていくことを想像すると恐ろしい。
「皮膚の炎症が慢性的に続くと、シミや肝斑につながりますし、長期的に見れば皮膚がんのリスクもあります。細菌感染は、軽いものならニキビや吹き出物ですが、さらに皮膚の奥深くに広がり重症化することも。また、免疫が落ちると代謝が遅れて角質層が厚くなり、かさつきやごわつきの原因となります」
肌の免疫力が落ちているかも?気になる症状チェックリスト
見た目を美しく保つためにも、細菌やウイルスから身を守るためにも重要な、肌の免疫力。低下のサインは次のとおり。
□皮膚のかさつきがある
□毛穴が開いている
□ニキビや吹き出物がある
□かゆみがある
□赤みが続いている
□ひりひりする
ひとつでも当てはまる人は、肌の免疫力が落ちている可能性アリ。早めの対策で、コンディションを整えよう。
肌免疫力アップのためにできる3つのこと
では、肌の免疫力を上げるためにできることは? 泉先生によると、重要なのは「スキンケア」「バランスのよい食事」「ストレス発散」の3つ。
1. 毎日のスキンケア。ポイントはクリーム!
やはり何より重要なのはスキンケア。保湿はもちろんのこと、紫外線対策やクレンジング・洗顔まで含めた、丁寧なケアを心がけよう。
「何より重視してほしいのはクリームです。化粧水や乳液は、肌の表面をうるおわせるにすぎません。肌本来の免疫力を引き出すためには、奥にある水分を逃がさないよう、クリームで蓋をすることが大切です」
逆に肌を傷つけてしまうような、過度なケアはNG。スクラブや、界面活性剤、防腐剤などによる刺激に注意したい。
2. バランスのよい食事を。2ステップで考えて
肌は私たちが食べたものでできている。バランスのよい食事を摂ることも、肌の免疫力アップに不可欠だ。
「2つのステップで考えるとわかりやすいです。まずは、栄養を吸収しやすい状態をつくること。いくら栄養豊富なものを食べても、体内にうまく吸収できなければ意味がないですよね。毎日の食事にヨーグルトなどを取り入れ、腸内環境を整えましょう。そのうえで抗酸化作用のあるβ-カロテンやリコピン、ビタミンCやビタミンE、肌をつくるたんぱく質をしっかり摂れるといいですね」
とはいえ、忙しい毎日のなかで、常にバランスのよい食事をとるのは難しい。泉先生によると、コンビニで手に入るような食材でも必要な栄養を補うことはできる。
「たとえばビタミンが豊富に含まれるフルーツは、やはりフレッシュなものが望ましいですが、こまめに摂ることのほうがもっと大事。ジュースや冷凍フルーツ、ドライフルーツなど手軽なものでOKなので積極的に摂りましょう」
●コンビニでも手に入る!肌免疫力アップ食材の例
- ヨーグルト…腸内細菌を整え、栄養を吸収しやすい体に。ドリンクタイプならより手軽。免疫力を高める作用がある乳酸菌を選んで
- フルーツ…抗酸化作用のあるビタミンCやEが摂れる。ジュースなどの加工品は栄養表示を見比べ、よりビタミン豊富なものを選ぶと◎
- サラダチキンやゆで玉子…良質なたんぱく質がたっぷり
3. ストレスは溜め込まず、早めに発散!
見落としがちなのが、精神的なストレス。実はストレスが溜まると、全身の免疫機能が落ちると言われていて、それが慢性的に続くとさまざまな病気につながってしまう。肌免疫も同じこと。
「現代社会において、ストレスを溜めないのは難しいことですが、自分に合った解消方法を見つけられるといいですね。何をすればリラックスできるかは人それぞれですが、特に大事なのは睡眠。健やかな肌を保つために、どんなに忙しくても、睡眠時間をしっかり確保することをおすすめします」
泉さくら(いずみさくら)
皮膚科専門医。東京大学医学部附属病院皮膚科・都内美容皮膚科・形成外科勤務後、ココメディカルクリニックを開業。一般皮膚科、美容皮膚科、アレルギー外来、女性外来を行い、近代西洋医療と補完代替医療、伝統医学等を組み合わせて行う統合医療を積極的に取り入れている。
※ゼネラルリサーチが2022年5月に実施した『「肌トラブル×免疫」に関する調査』によると、「肌トラブルが増える時期はいつですか」という質問にたいし、回答者の43.9%が「夏」と回答した。