本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】
激凹みしても二時間で立ち直る女

女芸人のNo. 1を決める大会について、先月に引き続き書かせていただこうと思う。
年も明けたし、M1もあったし、もういいよと思いながらでいいのでお付き合いいただけると幸いである。なんとて、その後の動きが新鮮だったので共有させていただきたい。
と言っても肝心の結果はまたしても準優勝だったわけで(前回綴った仕込んだお稲荷さんは大活躍でした!)ああ、なんてこった、だった。
この大会が始まって9年間休まずに出ていたのに…、できることは全てやったのに、みんなからあんなに期待されていたのに——というので終わった瞬間は申し訳なさで泣いてしまった。
会社の人やスタッフさんたちに「すいません」と謝ると、ある一人に「全然…」と言われ一気に我に返ってしまった。「全然ってなんだ?」と。本人は無意識で言った言葉なのだろうが、「なんだそれ?」と。確かに期待には応えたいという気持ちでやっていたが、エントリーフィーを二千円払い、ライブでネタを仕上げ、子育ての合間を縫って調整しながら辿り着いた決勝である。普段のお仕事は純度100の「皆様のおかげです」という気持ちだが、こと賞レースに関しては芸人の功績である。そこで優勝できなくて「全然…」ってなんだ? 私も何を謝っているんだ?と一気に涙は引き「大会の反省会」なる配信に向かって、いつものように下ネタを言って笑っていた。
家に帰ると夫が「ワクワクさせてくれてありがとうね」と言って待っていてくれた。芸人になってからできた心の友からも「面白いネタを見せてくれて本当にありがとう」と連絡がきていて「出てよかったな」と心から思えた。
今後誰かの何かがダメだったとき、これからはその過程にワクワクさせてもらったことへの感謝を伝えようと決めた。
持って返ってきたケータリングで、一番高いであろうローストビーフ丼を食べてビールを半分だけ飲んだ。
「はあ…まあこういうこともあるわ…あるわ…あーるわ…あーるわん…? R1!!!!」
その瞬間スクッと立ち上がり、二本目のネタで使ったスケッチブックから紙を数枚切りはがした。ガムテープで壁に貼ると床に転がっていた子供のクレヨンでネタを一気に書いた。頭のなかではもちろんドラマ「ガリレオ」で福山雅治さんがたぎっているときの曲が流れている。
出来上がったネタを見て「実に面白い!!!!」と自画自賛してそのままショート動画に少しアップした。今見返すと下ネタすぎてとてもR1ではできないが、この時間には大変癒やされた。
いつもマッサージや美容、友人とのお酒、映画などで乗り越えてきたが、今回創作でできた傷を創作で癒やすことで二時間で立ち直ることに成功した。我ながら勇ましい。ようやく「9年間やってた甲斐」を感じることができた夜だったのだ。
最後に
本当は泣きたいときとかけまして
指輪を自慢したい人と解きます。
その心はどちらも
人前ではカラッと(カラット)見せたいでしょう。
紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』などがある。
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