性別や年齢にかかわらず、楽しく長く働ける環境を作るために。身近な課題からひとつずつ解決に挑む、企業経営者 鈴木美樹子さんにインタビュー。
何気ない会話から生まれた“次世代のトイレ”を販売
東京・虎ノ門で110年にわたり文具店を営み、“働くひとのミカタ”をコンセプトにオフィス専門商社として革新を続けるオカモトヤ。今年7月の就任と同時に鈴木社長が立ち上げた、新事業「フェルネ」が話題。きっかけは、社内で何気なく話していた生理の悩み。
「オフィスでの困りごとを考えているなかで、みんな生理のとき困っていることあるよね? トイレって実は大事な場所だよね、と話が広がっていったんですよね」
そうして生まれたのが「オールジェンダートイレ」。PMSや生理中など、体調がすぐれないときでも快適に働けるよう配慮された、性別に関係なく使える次世代のトイレを企画・販売している。
「着替えや搾乳、インシュリン注射など、狭いトイレだと窮屈なことが、快適にできる場所を目指しています。要望に合わせて、オフィスにセルフメンテナンス空間を作るといったことにも対応していきたいです」
まずは女性サポートのハードルを下げること
また、女性向けに生理用品や衛生アイテムをセットした防災キットを販売。企業向けのWEBサイトも立ち上げ、フェムテック商品を福利厚生の一環で購入できる仕組みもスタート。
「女性が活躍しやすい環境とは? 健康問題について触れるのはセクハラになるのでは? という声も多く聞こえてきますが、このサイトを導入することで、まずはハードルを下げることが目的です。ECサイトのほか、啓蒙的な研修や知識、共感を得るための情報をシェアしていきます」
そもそもフェルネ立ち上げの背景には、自身の出産・育児の経験が大きかったと語る鈴木さん。
「不妊治療を経てふたりの子供を出産していますが、経験しないとわからないことや知らないことが多くて愕然としました」。
“ライフステージによって体に変化があり、仕事の仕方を変えていかないと長く働けない”と伝えることが社会貢献になるはずだと、わずか1年ほどでビジネス化したのだとか。
「女性社員だけでなく、男性社員の妻たちが離職せずに働き続けられる環境にしたい」と、2015年から、くるみんマーク認定取得や在宅ワーク、時差出勤など働き方改革を率先して推進。2018年からはフリーアドレスを取り入れたり、コロナ禍前から社員の柔軟で新しい働き方の実践をサポート。 オカモトヤをモデルケースにする会社もあるほど。
「フェルネも社内でアップデートし続け、社会の意識が変わる一助になれたら」と歩みは続く。
鈴木美樹子(すずきみきこ)
オカモトヤ社長。2006年に入社後、専務取締役を経て2022年7月より現職。同時に女性の働く環境をサポートする新事業フェルネをスタート。