美容家・神崎恵さんの心の機微を綴る連載「Megumi’s Mirror」。今回のテーマは「数字」。
vol.12 たかが数字、されど数字、あくまで数字
ある朝、突然、私のTwitter画面に挙がってきた動画に、度肝を抜かれました。
金髪の美しい男性が、体重を聞かれ、「60kgくらいかな」と答える。「今ここで、実際に量ってみてください」と言われ、体重計に乗ったところ…、体重計の数値はなんと74.9kg! すると、彼はまったく動じることなく「体重が60kgで自信が15kgあります」と爽やかな笑顔で告げ、その場を立ち去りました。
…衝撃!
何が衝撃かって、15kgの誤差(いや、これはもう誤差というより勘違いというべきか、笑)を、さらりと“自信”と表現した点です。思っていた体重と違っても(それも15kgも違った)、卑下するわけでも、自虐に走るわけでもなく、とっさに、しかも優雅に、「15kgは自信です」なんて、普通、言えます?
あまりにも衝撃を受け、そう言い放った金髪の男性を検索してみたところ、ホストであり実業家でもあるROLANDさん、とのこと。
興奮冷めやらぬまま、その日打ち合わせをしていたライターさんに、この動画のことを話したら、偶然にも、なんと彼女はYouTubeでROLANDさんの動画をほとんどチェックしているほどのROLANDファンでした。
「神崎さん、彼にはほかにもたくさんの名言があります。たとえば、“足りないものは何ですか?”“それを探して29年目です(そのときの年齢が29歳)”とか、“世の中の男性に伝えたいことは?”“自信は男の化粧です”とか。ほかにも、“平熱は?”と聞かれて“ローラン℃”って答えるお茶目な側面も♡」
へええーー! 普段、テレビもYouTubeもまったく観ない、ある意味森のなかで暮らしているような私の日々の情報源は、新聞とラジオ(特にラジオは別所哲也さんで始まり、ピストン西沢さんで終わるのが定番です)。
TwitterとInstagramはもちろんやっていますが、Twitterは何か最近、アルゴリズムが変わったらしく、おすすめ動画として、ROLANDさんの動画が挙がってきたようでした。
ちょっと話がそれましたが、とにかく、ROLANDさんの「体重が60kgで自信が15kgあります」という言葉は、とても深い。
体重にしても年齢にしても、たとえば偏差値や値段など、私たちは普段、あまりにも“数字”というものに囚われすぎているような気がします。もちろん、数字は、何かを選ぶときなど、わかりやすい指標のひとつです。
でも、あくまで目安です。数字はときに、人に取り憑き、囚われすぎるとやっかいな存在。世の中には、数字だけじゃ見えない、わからない、測れないことがたくさんあります。
たとえば体重なら、数字だけを見るよりも、体全体の緩みやハリ感、シルエット、バランスなど、総合的にこだわることが大切だと思うし、年齢も、その数字自体よりもこれまでどう生きてきて、どう楽しんで、これからどうしていきたいかのほうがずっと大事です。
ROLANDさんの体重、15kg分の“自信”は、日々のトレーニングによる筋肉はもちろん、美や健康への努力、意識、積み重てきた人生経験の重みでしょう。
何より、彼は普段から「発する言葉」を大切にしているはずです。どんな球がきても、どんな状況でも、ポジティブに変換し、彼らしいユーモアと知性でもって美しく表現するために、脳や感覚を日々鍛えているんだと思います。
恐れ入りました。そして、心から素敵だと思いました。年齢を重ねるにつれ、数字の呪縛はどんどん強くなっていきます。だからこそ、数字をうまく使い、上手に距離を取って、心地よい関係を築きたい、と心新たにしたのでした。
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