今秋、トランスジェンダーであることを告白したマジカルアーティストの魔法使いアキットさん。名前の由来や現在の心境について聞いた。
マジックの不思議さ、華やかさの先にあるものを見てほしい
トランプやイリュージョンにスプーン曲げ、魔法のようなマジックを数々用いながら、ストーリー性のある舞台を展開していくマジカルアーティスト、魔法使いアキットさん。そのステージには常に多くのファンが足を運ぶ。4歳でマジックに出合い、「魔法」を手に入れる道に邁進してきたそう。
「マジックは不可能を可能にするもの。探検家やシェフになったりと、子供のころ夢見たことがステージでだったら実現できるんです。マジックという表現を使いながら、なりたいものになる物語を紡いでいって、僕は夢を叶えているんですよ」
そのアキットさんはこの秋、初めて自身がトランスジェンダーであることを告白。
「心は女性で、体は男性で生まれてきました。幼いころから自分は異常なのだと、関わったら友達にも迷惑がかかると思い込んで、学校では教室にも入れず、廊下でひとりずっとトランプを触って、芸に思いをぶつけていたんです。つらい思いが募ったとき、こっそり女性のメイクをして、心を解放していました。けれどその姿では外には出られない。ならばもうひとり、人間を作ってしまおうと。そうして生まれたのがアキットなんです」
赤いチークに当時流行していた垂れ目のメイク。女性らしくありたいという気持ちが、アキットさんの顔の原型。
「飲みこんできた思いを舞台にぶつけて表現していた。女性の自分を告白することで、アキットという表現の種明かしをしてしまうことになるかもしれない。怖いですよ。でもアキットを謎のままにせず、門を思いっきり開いてみようと決めました。僕と同じでなくたって、人は誰でも悩みを抱えているもの。マジックの不思議さ、華やかさ、その先にある心に残るものを、より多くの人に見ていただきたいんです」
魔法使いアキットを知るQ&A
Q. アキットの名前の由来は?
A. 愛樹(あき)。それが本当の名前
僕が生まれる際、母は女の子が生まれると聞いていて、愛樹(あき)という名前を考えていたんです。だから、アキ。「ット」は「ポケット」の「ット」。ポケットからいろんなものが飛び出すみたいに、いろんな表情を持っていたいから。
Q. 表現のために、意識していることは?
A. 人の表情を見る
街行く人の会話や表情を普段からよく見て演技に取り入れています。特に子供の動きや表情はとても参考になりますね。アキットは、見ていただく客層に合わせて、声も歩き方も変えています。お客さんに近い存在になるために、日々、人の表情から学んでいるんです。
STORY MAGIC LIVE『魔法使いの頭の中 〜雪の降る音〜』
12月24、25日 まつもと市民芸術館 小ホール
2023年1月7〜11日 シアター・アルファ東京
2023年1月28、29日 大阪・世界館
10月29日よりイープラスにてチケット発売
魔法使いアキット(まほうつかいあきっと)
長野県出身。全国のイベントやテーマパーク、テレビ・ラジオなどのメディアでも活動、2014年から物語のあるマジックショー「STORY MAGICLIVE」定期公演を開始。今年もクリスマスから、3都市を回る公演がスタートする。