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TIMELESSPERSON

2022.01.08

劇作家 岸本鮎佳が語る最新作「この舞台で伝えたいのは、“人生で一番大切”な存在」

GINGERの連載コラムも大人気の劇作家・演出家の岸本鮎佳さんが手掛ける舞台が1月15日から上演されます。『あの子より、私。』というタイトルどおり、そこに描かれているのは女性誰もが抱える、コンプレックスと嫉妬。岸本さんに物語が生まれた背景と、上演にかける想いをお伺いしました。

なんてことないときに話せる、女友達より大切なものはない

岸本

――コロナ禍があり、今回は久しぶりの舞台となりますね。

「そうですね、もう2年ほど舞台をやれていなかったので。前回、2020年に予定していた舞台は、一番最初の緊急事態宣言が出た次の日が初日でした。できるのかできないのか...ぎりぎりまで待っていて、結果、上演中止になってしまったので、かなりしんどかったですね。それまで何ヵ月もかけてスタッフと役者とで積み上げてきたものが、発表の場を失ってしまった。みんなで泣きました。この不完全燃焼で終わった想いをいつか晴らしたいと思っていました。舞台ができるってもはや当たり前じゃない。今回は最後までやり切りたいですね」

――別荘の内見にやってきた3組の人々が繰り広げるバトルを通して、コンプレックスと嫉妬、そして友情が描かれた作品ですが、「あの子より、私。」というテーマはどこから生まれたのでしょうか?

「コロナ禍で連絡をとる友達が限られてきて、ふと思ったんです。『本当に連絡をとりたい人って誰だろう』って。もしかして誰もいないんじゃないか、そんなことを思っているときに、SNSで同年代の人たちの活躍する様子を見て『いいな』と焦りを感じたりして。『ああ、私、人と比べているわ』って改めて気がついたんです。人と比べないことが大事だって、誰だってわかっているんですけど、今のこのSNS時代、どうしても比べさせられてしまう。だからこそ、この感情をテーマにしてみようと思いました。

だけど、この作品を見て一番感じて欲しいのは『友達に代わる大事なものはない』ってことなんです。連絡をとりたい友達がいない、と言いましたけど(笑)、一方で普段なんてことないときに一緒にいられる女友達って本当に大切で。この作品を書いているときも、体調を崩したと伝えたら、食べ物とか必要そうなものを入れた袋をそっとドアノブにかけて届けてくれた友人がいたんですよね。頻繁に連絡を取り合っているわけではないけれど、欲しいものを何気なくわかってくれていて、頼ることができた。普段会っているかどうかは関係なくて、数年会っていなくてもすぐ前のノリに戻れる相手です。
kishimoto
例えば『離婚した』とか、わかりやすく辛いときって、『大丈夫?』と言いながら近づいてくる人は多いですよね。悪意を持った人もいます。男友達の場合は、久しぶりに連絡をとると『下心があるんじゃないか』なんて思われることもある。だから普段なんてことないときに話せて、連絡する頻度も気にしなくていい、そういう女友達は人生で一番大切ですよ」

――今回も登場人物のキャラクターが濃いですが、特にお気に入りのキャラはいらっしゃいますか?

「作り手として、エコ贔屓はしません。全員好きなので、逆に『この役、目立ってないからもっと出してあげよう』と気を使ってしまったりはしますね。物語としてそこまで丁寧に全員を描いてしまうと何が主軸なのかわかりづらくなってしまうので、逆にそうならないよう気をつけていますね」

――ご自身で脚本を書かれ、さらに演出もされています。実際に舞台上で役者さんが演じるところまでもっていくのは、緻密で難しい作業かと思いますが・・・。

「頭のなかで描いていたものが現実になっていく、という感動は毎回あります。私の場合は、演じていただく役者さんを想定し脚本を書く“アテ書き”をしているので、役者さんが役のイメージと乖離しているということはありません。ただ実際にお会いしてみて話し方のクセなんかをそのまま活かせるようにセリフを変えたりということはあります。
今回も黒谷友香さんをイメージして書きました。ドラマではビシッとした役が多いですけど、今回は可愛いって思ってもらえるようなキャラにしようと主人公をつくっていきました。
kishimoto

稽古は約1ヵ月。その間、スタッフやキャストの方たちとずーっと一緒です。毎日同じ時間に顔を合わせて何かをつくる、なんだか学校に通っている気分になります。私は演出ですから担任の先生かな(笑)。年上の方でもベテランの役者さんでも、毎回生徒に見えてくるから不思議です。私は『あの作品の稽古、すごく楽しかったよね』って役者さんたちに思ってもらえると、それがそのまま舞台にいいかたちで表れてくると思っています。まずはそんな雰囲気をつくって、みなさんに作品をお届けしたいと思っています」

岸本鮎佳
『あの子より、私。』
脚本・演出/岸本鮎佳
出演/黒谷友香、基俊介(IMPACTors/ジャニーズJr.)、遊井亮子ほか
1月15日(土)~27日(木)よみうり大手町ホールにて、2月5日(土)、6日(日)大阪サンケイホールブリーゼにて上演。
https://anokoyoriwatashi.com/

岸本鮎佳(きしもとあゆか)
劇作家・演出家・役者。演劇ユニット「艶∞ポリス」主宰。女性独特かつ綿密な人間観察を土台に作り上げる会話劇を得意とし、笑いを織り交ぜたスタイリッシュな作風で幅広いファンをつかむ。主宰する舞台では、脚本、演出、出演をこなし、近年は映像の脚本、監督も手掛けるなど、その多彩な才能を発揮。最近の主な作品は、テレビ大阪「ホメられたい僕の妄想ごはん」脚本、オーディオドラマ「白村颯太に好かれたいby Audio Movie」脚本など。

PHOTO=勝吉祐介(PEACE MONKEY)

TEXT=安井桃子

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