ひとり旅は自分をリセットさせてくれるかけがえのない時間。これまでの旅の経験から、考えたことや感じたこと、学んできたことを綴る連載『ひとり旅×松本まりか=THINK CLEARLY』。
旅では見るものすべてが新鮮です。その風景をいつまた見られるかはわかりません。だから、多くの人は旅の思い出をカメラにおさめるのでしょう。ただ、私自身は旅行中にさほど写真を撮りません。あとから、撮っておけば良かったなと思うことはあっても、そのときは体験すること、味わうことに夢中になってしまいます。
普段もなるべく撮るようにしてはいますが、それでも枚数は少ない方だと思います。3年前、スマートフォンを初期化する際に誤って、それまでの写真をすべて消してしまいました。バックアップをとっていなかったんです。旅行や留学中の写真などもあったので、大変ショックでしたが消えてしまったものは仕方ありません。
私には幼少期の写真もあまり残っていません。実家の引っ越しの間に紛失したのか処分してしまったのか。とにかく思い出のない女なのです(笑)。
振り返ることよりも未来に向かって
ただ、10代からこの仕事をしているので、ありがたいことに、映像作品にはその時々の自分が残っています。とはいえ、過去の出演作も撮った写真も、見返すかというとなかなか……。私は過去を振り返ることよりも、『これから』にいつも意識が向かってしまいます。日々記憶が更新される、上書きタイプなんです。
そんな私が、6年前から約1年間、つけていたノートを見つけました。ちょうど30歳になったころに書いていたもの。当時の私は沼に足をとられているような、身動きがとれない状況でした。仕事をもっとしたいのに世間に求められていない。自分に存在価値がないように思えて、どこに行っても居心地が悪かった。そんなときに友達が、「どうなりたいの? なりたい自分を文章に書いてみなよ」と言ってくれたのです。そんなの恥ずかしい、と思ったのですが、なんとかやり始めました。自分はどうなりたいのか。何を望んでいるのか。本を読んで気になったフレーズなども書き留めました。それをいま読み返してみたら、書かれていたことのほとんどが叶っていたのです!
本当に驚きました。「連続ドラマに主演する」「たくさんの雑誌の表紙を飾る」など、当時の私からすれば、「宇宙旅行に行く」と同じくらい現実味のない大きな夢でした。当時は連続ドラマはおろか、テレビにもあまり呼ばれず、活動の場は小劇場でした。文章にすることで客観視でき、自分の望みの焦点が絞られていったのかもしれません。
私は去年から3年日記をつけています。1年目を読み返すと、まるで自分へのメッセージのようにすばらしいことが書いてありました(笑)。理想の自分が綴られており、そこに書いていた事柄も、去年と今年でいくつも現実となって、驚きの毎日です。最近はちょっと疲れて、自己批判でいっぱいになってしまいそうになる日もあるのですが、「今日ダメだったこと」は胸におさめて、「こうありたい」と、自分を奮起するようなことを書こうと心掛けています。来年の自分を失望させないためにも。写真の記録にはあまり積極的ではありませんでしたが、こうした言葉の記録は、未来の自分への力になるなあと感じています。これからは、写真の記録も残していきたいです。
Marika’s Memories/未来の自分へのメッセージ
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