女芸人 紺野ぶるまさんによる女観察エッセイ「奥歯に女が詰まってる」。GINGER世代のぶるまさんが、独自の視点で世の女たちの生き様を観察します。
第35回 テクニシャンの悩み
「中二で初めて付き合った人とそのまま結婚して今も続いている」
んなことあるんかいな、と言いたくなるが、奇跡みたいな恋愛をしている人がこの世には確実に存在している。
パチンコでいうところのビギナーズラックというやつだろうか。
純粋で欲がない故に大当たりの台がわかり、座ってから今もなお、玉が出続けている状態。
羨ましい限りである。もはやオカルトだ。稀すぎる。
大体の人は失敗し、損してを繰り返し、二度と傷つかないように、頭の中で経験を元にデータ化するようになる。
「向こうから誘ってくるまで待ったほうがいい」
「3回目のデートで何もないってことは、向こうは友人だと思っている、または彼女がいる」
「付き合う前に関係を持ってはならない」
誰と出会っても、誰とご飯を食べても、いかに傷つかずに済むかということに労力を費やし、気づくと恋愛に辿り着くまで遠回りをしていることになる。
ビギナーズラックの反対語、テクニシャンアンラッキーとでも言うべきだろうか。
朝からパチンコ屋の前に並び、数珠をつけ、攻略本を読み漁り、結果一日かけてマイナスで帰ってくる状態。
30代も半ばになり、いろんな恋愛を経て、酸いも甘いも噛み分けた女友達がいる。
彼女は今、男の口車にやられている。
男はいつも違うことを言う。
「あなたが好きです」
「最近気になっている人がいる」
「一生一人でいい」
連絡がきたと思ったら、すぐに返ってこなくなる。
中二のときの彼女ならば、確実にその台は避けるだろう。
しかし、攻略できない台こそ燃えるのだ。負ければ負けるほど取り返したくなるのだ。
いつも同じような台にやられているとは気づかずに、なんだかんだでその瞬間は楽しんでいるからいいのかもしれない。LINEがこないかと、スマホに熱視線を送る彼女を、最近は「ギャンブラー」と崇めることにしている。
最後に
“数珠”とかけまして
“オカルト要素のある人”と解きます
その心はどちらも“宗派(周波)を大事にする”でしょう。
今日も女たちに幸せが訪れますように。
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